驚きでもなんでもない事実
無造作に積み上げられてるだろうから、取り敢えずは上から順に掃除をしていくことに決まったんだ。
ゴミ袋を買いに行くのは面倒だってフレカが言うから、山に埋まってる袋を使うことになった。
上等そうなものとかは、捨てる用じゃない場所にひとまとめにしてくれと言われたけど、J級のど素人冒険者にそんな目利きが出来るわけないよ?って思ったよ。
もちろん危険物の嗅ぎ分けも。
「それじゃあ投げるよー」
「おう!」
「よいしょ!」
「ほっ」
最初は、3人で上から順にって話だったんだけど…フレカさんはガタイが良いわけでして、そんな彼女が山を登ったら崩れると思ったんだ。
だから、1番小柄で軽い僕が、上から物を投げ落としてフレカが受け止める方針に変更したんだ。
「わお…いきなり上等な布地が出て来たんですけど」
「おぉーい!どうした!?」
「これ、フレカも確認してー!多分結構良い布だから捨てない方がいいと思う!」
「ほーい!」
こんなに早く金目のものが出て来たって事は、まだまだたくさん隠れてるよね…。
こりゃあ時間がかかるぞぉ。
「こんにちはー」
「勝手に入っていいのかよ?」
「外で待ってたけど誰も来なかったじゃない」
「そうだよ。開いてるんだしはいって……おぇ」
あれは…僕らと同じく依頼を受けて来た同業かな?
当たり前だけど、僕よりは年上だね。
4人組のパーティーかな?
「依頼を受けて来てくれたのか?」
「ああ…はい。うぷっ…この臭いは?」
「…さあ?俺も何か知らん」
「…ぼうぶり!オロロロロロッ!!」
あーあ…掃除箇所が増えたじゃんか。
…変わらないかな。
「おいおいガキンチョども、人ん家で吐くやつが居るかよ。吐くならテメェの鞄の中に出しやがれってんだ」
「うわぁ…辛辣だ」
「辛辣ぅ?コレは同業の先輩として、人生の先輩としての親切なアドバイスだぜ?大体、クロは吐いてねえじゃねえかよ。何でクソガキは吐いて無いのにマセガキが吐いてんだ?」
「…」
僕は少し特殊ですから。
子供って、いろんな感覚が敏感なんだよ。
鈍感になってないって言うのが正確なのかもしれないけど、嗅覚も大人に比べれば敏感だからキツいのかもね。
冒険者としてやって行くなら、これくらいの臭いで音を上げちゃダメな気がする。
「わ、悪かった…です」
「無理に敬語使わなくていいぞ。俺も敬語は苦手だからな」
「そうか?うん、なら。自分で綺麗にするから、依頼を受けてもいいか?」
「お前がリーダーなのか?」
「ああ、そうだ」
一応敬語を喋れるんだ。
どっかの村から出て来て、都会に来る前に村長に教わったのかな?
同郷でパーティーを組めるのが1番安心安全だし、連携も取りやすいだろうから無難だね。
「俺の後ろの山が見えるか?」
「まあ…見なくても見えるからな」
「そういう事だ」
「ん?」
「だぁーっ!くそ鈍い野郎がよ!こんなに仕事が溜まってんのに追い返すわけねぇっていってんだよ!」
「フレカさーん、そんなに怒らないの」
今ので何となくわかったけど、多分フレカって面倒見がいいタイプだね。
冒険者って、僕のイメージだと2種類の評価表があると思うんだ。
1つは、冒険者って括りの評価で、どこの国やどこの地域とか関係無い『冒険者』っていう全体での評価。
どこかの街の冒険者が不祥事を起こすと、『冒険者って野蛮でやーね!冒険者に依頼をするのは怖いわ!』って事になりかねない。
行商人や旅人などの、他所の街からやって来た人から噂が広まるんだ。
もう1つは個人やパーティーなどに対する評価だね。
あそこのパーティーは酒癖が悪い、女癖男癖が悪い、あの人は仕事が適当だ、なんていうふうにね?
討伐で生活していけるなら問題ないけど、それには実力が伴わないと無理だし、実力には装備品の質も含まれるんだ。
新人の頃は一回の依頼料は安いから、その段階で悪評が立てば…立て直す事は容易じゃない。
拠点を移すにも費用がかかるし。
評価っていうのは、そのままギルドの信用や個人への信用にも繋がるんだよ。
あのギルドにはあんな人がいるから、依頼を出すのは辞めておこう。ってなる事も。
そういうのを減らすために、フレカは怒ったんだと思う。怒ったというか注意かな?
まぁ、冒険者と深く関わることは今までなかったし、地球にいた時の創作物語から想像してるだけだけどね。
「やあ初めまして、僕はJ級のクロ」
山から降りて挨拶をしたんだけど、何やら4人とも不思議そうな顔をしてる。
「あ、ああ…俺は『不滅の絆』のリーダーをしているバグだ」
「スラッシュ」
「私はヨト」
「僕はマーチ」
見た感じ、前衛後衛後衛前衛…ってところかな。
バランスのいい4人パーティだね。
で、多分同じ出身地。安心安全!
パーティーの名前に表れてるね。
「同じ村出身で、少し前にここに来て冒険者登録をしたんだ。だからまだJ級だぜ」
「私はフレカ。クロとは今日さっき会ったばかりでな…。私はJじゃないぞ」
「そんなクソゴツい武器を背負っててJ級なわけねぇとは思ってたけど、何級なんだ?」
「Cだ」
『は?』
おー、面白いなぁ。
前世で散々、鳩が豆鉄砲を食ったような表情を見て来たけどさ、今回も同じだよ。
驚いた時や状況を飲み込めてない時の表情って、世界共通どころか異世界でも同じなんだね。
まぁ、スキルという超能力を除いたら、基本的には異世界も地球の人間も同じなんだろうね。
地球は肌の色で人種を分けて考えてたりしたけど、この世界じゃ獣人とか色々な種族が居る。
何人かとは会った事があるけど、その種族の特徴以外は僕らと変わりないし、スキルも有る。
このことから、異世界でも人間は人間という種類で変わりないんだなぁって思ったよ。
不思議なのは、公用語と言うのが適切な表現かわからないけど、この世界の『人』は全員同じ言葉を話すんだよね。
日本人なら日本語、アメリカ人なら英語、中国人なら中国語。イタリア語にフランス語やスペインポルトガルなど、地球では多くの言語が使われていて、母国や身近な人の使用言語によって取得言語が分かれるよね。
この世界では一つの言語だけ。
もしかしたら、種族によってエルフ語だったり獣人語だったりあるかもしれないけど、僕は今のところ知らない。
面白いよね!
「と言うか、なんで街中で武器背負ったまま片付けの依頼をしてるの?」
「……トレーニングだ」
「……そう」
「いや、流すなよ…」
いや、流すでしょ。
明らかに嘘なのはわかってたけど、ツッコミ入れたら逆ギレされそうだし。
お読みいただきありがとうございます!
次回は13日の23時です!




