初依頼
うぅーん…。何が良いんだろうか。
本当にいろんな依頼があるんだなぁ。
ペット探し、庭の草刈り、店の手伝い、探し物を見つけて、落とし物を見つけて、買い出しエトセトラ…。
ペット探しってさ、そもそもペットを飼えるのはそこそこの裕福な家庭じゃないと無理なんだよね。自分たちの生活費に加えて、ペットの世話費用も加算される訳だしさ。この依頼みたいにね?
探し物と落とし物って同じように聞こえるけど違うんだよね。
欲しいものを探すしたりする事も含まれてるのが探し物。
無くしたものを探して欲しい場合は落とし物を見つけて?って事。
探し物に落とし物も含まれるけど、落とし物って探し物の中でも少しタイプが違うと思ってるんだ。僕は。
「おい坊主、お前さん歳は幾つだ?」
「ん?13だよ」
「13!?なんでそんなガキが冒険者になってんだよ…」
僕がJ級の依頼ボードで依頼を吟味してると、背後から声をかけられた。
背、でかいなぁ。
2mは有りそう。
「色々と事情があってね。あなたの名前は?」
「最近のガキはマセてんのか?」
僕は子供で大人だからね。
ん?今気が付いたけど、どっかのアニメに似たような設定の小学生が居たっけ。
でも僕は小さくなったわけじゃなくて、文字通り新しく生まれ変わったんだから少し違うよね。
ん?
人間の脳って、子供の時は学習能力がとても高いって話しだけど、僕の場合はどうなるんだろうか?
知識や記憶は前世のものを持ってるけど、この記憶とかって脳に保存されているものなんじゃないのかな?
それとも、魂とやらが存在して、そこに知識や経験なんかの記憶が刻み込まれてるのかな?
もしそうなら、僕の脳はフレッシュって事になるから……物を覚えやすいって事だよね。
「マセてるの使い方が違う気がするけど…」
「ふん……私はフレカ。Cランクの『粉砕のフレカ』とは私の事だぜ」
「C級…」
なんでC級が最低ランクの依頼ボードの前に来たのかは置いておいて、異名が『粉砕』って所には納得する外見だね。
背中に背負ってるその大剣、厚さ30cmは有りそうだし、しかも刀身?だけで貴女の身長超えてますよ?
柄も含めれば…3.7〜3.8mは有りそう。
別にその長さの武器って珍しくなかったりするけど、長い武器の大半は槍とか薙刀とかの中距離武器なんだよなぁ…。
重くはあるし長くもあるけど、割と重心を捉えやすい武器なんだよなぁ…。
「ん?この武器か?私専用に作って貰った武器でな、研いだりする必要がないから楽なんだ」
「でしょうね…。その刃の形になってる場所で、相手を潰して割るんでしょう?」
「面で叩くこともできるぞ」
「どんな筋力してるんだろ…。おかしいって…」
そんなことされたら一瞬で、スライサーで薄切りにされた肉みたいにペシャンコになっちゃう。
カートゥーンアニメ顔負けのペラッペラに。
「で、坊主は?」
「僕はクロ」
「成り立てか?」
「いま初依頼を吟味してる所」
「ほぅ…」
この人が話しかけてきたせいで、めちゃくちゃ注目されてるんだよなぁ…。
ただでさえ子供っぽい見た目だから注目されてるって言うのに。しかも仮面を着けてるし。
ちなみに、仮面は自分で作ったよ。
木から彫り出して天狗の面を作ったんだ。
異世界でも異形だったみたいで、めちゃくちゃ注目されてる。
結局注目されてるのは変わってないじゃん!
「武器はその腰についてる細いやつか?」
「コレは仮物だよ」
「自分の武器じゃないのか?」
「借りた物じゃなくて、良いのが見つかるまでの代用としての武器さ」
「ああ、そっちか」
持ってきてるのが短刀でよかった。
脇差なら鍔が着いてるけど、短刀なら採取用や剥ぎ取り用のナイフって言えるし。
「フレカさんはなんで声掛けてきたの?C級ならもっと上階の依頼ボードじゃないの?」
「そうだぜ。だけどよ、坊主みたいな初めて見る異形な奴が居たら興味が湧くだろうが」
「そうだね…」
「周りの奴らからも注目集めてるじゃねえか」
「貴女も居るから余計にじゃない?」
「そうだな」
こうなってきたら、もうなんでもいい気がして来たなぁ。
コレでいいか。
僕が選んだのは、大人数募集の倉庫整理。
よくよく考えてみたらさ、天狗のお面ってだいぶ怖いんだよね。
だから、僕の存在が有名になるまでは大人数の依頼を受けようと思うんだ。外見での悪評が1番面倒だから…さ。
「…私も久々にJの依頼受けるか」
「やめて下さい。J級の人が受けれる依頼が減りますので」
「大人数募集ならいいだろ?同じ依頼を受ける」
「なんで?」
「坊主、自分がどんだけインパクトが強い格好してるか知ってるか?私はそこに惹かれたから仲を深めようとしてんだよ」
まあ、冒険者は自由尊重だから、僕が何かをとやかく言うのは間違ってると思うけど…。
僕に迷惑はかけないでね?
あと、インパクトが強いのはお互い様じゃないのかな?
目測で2mを少し超えてる身長と、関節部分の可動域を除いたごっつい防具、身長を優に超える武骨な化け物大剣、女性であるにも関わらず男みたいな口調、そしてスキンヘッド…。
光が反射してるよ?
依頼書を持ってカウンターへ2人で行く。
それに合わせて視線も追ってくる……。
「この依頼を受けます」
「私も」
「…こっちの子はわかるけど、なんでC級のアンタもJ級の依頼を受けるんだ?」
「話しがしたくてな」
「酒場で…いや無理か。2人ともカードだせ」
受付のお兄さんに促されてカードをカウンターに置く。
よく、アニメだと受け付けは美女が敬語対応でしてるけど…荒くれ者が多いから男性の方が多いんだよね、実際は。
女性の受け付けも居るけど、冒険者よりも引き締まってて強そうな筋肉のつき方してるよ。
ギルドに依頼する人の対応は、外向けだから美女の受け付けなんだろうけど。
「あいよ、受注完了。依頼先の倉庫は裏にルート書いてあるからそれ通りにいけば着くよ」
「おお!本当だ。ありがとう!」
「まあ危険なんて無いだろうし、あっても隣のC級様がなんとかしてくれるから気楽にいきな」
「はい!」
「私が崩れて来た荷物から守ってやんよ」
ええ、お願い致します。
僕のこの体じゃ、重いものを支えるのは無理だからね。出来る人に支えてもらわないと。
「此処みたいだな」
「大きな倉庫…」
「ギルドの半分くらいの大きさだな」
地図があったから迷う事もなく辿り着いたけど、少し舐めてたよ。
この中がどうなってるのか分からないけど、倉庫って言うくらいだから殆どが収容スペースだと思って良い気がする…。
コレは大量応募する訳だね。
「取り敢えず中に入るぞ」
「そうだね。突っ立ってても始まらないし」
僕がギルドに行ってから依頼を受けるまで、僕ら以外にこの依頼を受けた人は居なかった。
あまり人数は期待しない方が良いね、先着の。
扉を開けて中に入る。
嗚呼…うわぁ…ホントに?
「…なんじゃこりゃ。ゴミ山じゃねえかよ」
「なんか腐臭とか虫とか…とんでもないね」
「ハズレの依頼じゃねぇかよ…」
中に入って目についたのは、1番高いところで天井近くにまで盛り上がってるゴミ山。
それしか無いし…ね。
この腐臭とハエなんかを考えると、多分生ゴミも一緒にこの山に埋もれてると思うな。
死体が埋まってても驚かないよ…コレなら。
「ん?おお、さっき依頼出したばっかでもう受けた奴がいんのか。俺が依頼主のサバだ」
「どうも、クロです」
「フレカだ」
「数ヶ月前に親父が逝ってな、その親父が所有してたって倉庫を相続したんだけど仕事が忙しくて、やっとまとめて時間ができたから見に来てみたらコレだよ。1日で出来るなんざ思ってねぇからよ、ゆっくりやってくれ」
それはそうでしょうよ。出来るとしたら火魔法で倉庫ごと焼却だけど、そんなことしたら確実に付近の建物に飛び火するよ。
と言うか、近隣の人たちはなんで苦情みたいなの入れなかったんだろう?
……いや、この倉庫の防臭機能がすごかったから気が付いてないのか。
臭いを閉じ込める…と言うのかな?
何か獣の解体倉庫みたいな使用方法もあるんじゃないのかなぁ。
「あんたの親父は何をしてこんなになるまで放置してたんだよ」
「さあな。死んだ今となっちゃ何にもわからねぇよ」
「確かにな。ま、出来る範囲で片付けるとするか」
「所で、ゴミはどうするの?」
「ん?」
「え?」
「あん?」
ゴミ入れる用の袋もないし、燃やしちゃダメなものも中にはあると思うし。
この量のゴミをどこに捨てるの?
「それも含めてやってくれるんじゃ無いのか?」
「んなわきゃねぇだろ。大体、私らがゴミ袋とかを用意して来たとしても…コレは無理だろ。想像もつかねぇよ」
「そうなのかよ…」
コレは、この人とギルドの依頼受理担当者の双方が悪いね。
確認しなかった僕らにも、少しは落ち度があったかもしれないけど。
こんな時、アイテムボックスみたいなスキルや魔法が使えれば便利なんだけどね。
絶対に『量産』より目立つけど。
お読み頂きありがとうございます!
次回は11日の23時です!




