J級冒険者シv…え?だめ?
まずは名前ね。
シヴィ・ダンシャク…っと。
「シヴィ様、本名の下にもう一つ名前を書くと、そちらでの登録となります」
「ん?シヴィじゃだめ?」
「シヴィ様の事ですので、恐らく色々と世間的な話題になる事間違い無いでしょう。なので、冒険者専用のお名前をお考え頂ければ…と宰相様よりお知らせいただきました」
ほほぅ。
柔らかく言ってるけど、僕が何かやらかすであろうって事は確信してるから、僕の存在をシヴィ・ダンシャクとして広めない様にして欲しいって事だよね?
冒険者シヴィはダメと…。
「うーん…じゃあどうしようかなぁ」
和名の偽名ならいくらでも出てくるんだけど、これが洋名の偽名ってなると結構難しいね。
目立たない事を目的とするなら、そもそも有名にならない様にすれば良いわけだし。
まあ家名は要らないかな。
名前だけでいいか。
文字数は…2文字かなぁ。
あ…い…う…え…お……クロにしよう。
黒好きだし。
ク…ロっと。
年齢は…13歳。鯖読んじゃえ。
スキル?これも書かなきゃいけないの?
んー…。
「『剣術』で宜しいかと思います」
「いいね!そうしよう!」
馬鹿正直に『量産』なんて書いた日には、『ふぁ!?』ってなるのが目に見えてるし、ウィーがこう言うって事は宰相さんもOK出してくれてるんだと思う。
魔力量?感覚的には把握してるけど、数字では把握してないんだよなぁ…。
あ、書いても書かなくても良いのね。はーい。
家族構成?なんで?
なんか、あんまり中身のない書類だなぁ。
あ、ここからは同意書ね、はい。
「書き終わったよ」
「はいよー。うんうん…仮面使うのね。書類に抜けはない様だから、ギルドカードを発行してくるよ。2時間くらい時間掛かるから…2時間後にまたここに来て」
「はーい」
ちょうどお腹すいてたし、ご飯食べにいって時間潰そう。
「行こっか」
「はい」
「すいませーん、ギルドカードを受け取りに来ましたー」
定食屋に入ろうかなぁと思ったけど、食事に2時間も掛かるわけないと思ってカフェで済ましたシヴィです。
特に高級なお店に入ったわけじゃないから、ウィーがソワソワしてたのは面白かったね。
目で『私ならもっと美味しく紅茶をお出しできます』って言ってたもん。
たまにはチープ…って言うのは失礼だけど、庶民的な味も良いものだよ?
それに、料理はちゃんと美味しかったじゃん。
あ、料理はとか言っちゃった。
「できてるよ。はい、これね」
「おぉー、ありがとう」
「依頼とかを受けるときは、受付からこっちに来る道とは反対ね。そっちにアンタの先輩に当たる冒険者の人たちがいっぱい居るから」
へぇー。確かに気配は感じてたけど、声とか音は聞こえてこなかったんだよね。てっきりギルドの職員さんかと思ってたけど、単に防音が凄いのかな?
早速行って、何か依頼を受けてみようかなぁ。
「私より若くして死ぬんじゃないよ?」
「うん。ありがとう!ほどほどに頑張るよ」
「どうだか…」
これで僕は、新人J級冒険者のクロになった訳だね!
あ、仮面を用意してないや。
ウィーも一緒にいる訳だし、依頼を見るのはまた今度にしようかな。
「取り敢えず今日はもう帰ろうと思うんだけど、何かあるかな?」
「防具やリュックなどはどうするのでしょうか?」
「防具はJ級の間はいらないと思ってるよ。頻繁に依頼を受けに行くわけでもないし、僕の歳だと成長期だからすぐにサイズが合わなくなるでしょ?」
実際、去年より身長が3cmくらい伸びたんだ。
普段着る服なら、それを見越して少し大きめのサイズを買うとかするけど、防具で同じことしたら大変なことになっちゃうよ。
いざと言う時に、少しブカブカだったからって身動きが取りづらくなったり、フィットしてないから隙間から差し込まれたり…。
僕はそんなミスしないと思うけど、どうなるかなんて僕にも分からないから。
潰せる不安要素は潰しておくに限るよ。
目安としては、僕が本当に13歳になるくらいにG級辺りに昇格してることかな。
で、成長が止まるくらいにはE級くらいになってるのが理想…かなぁ。
どのみち、成長を阻害しそうだから重い鎧とか防具は着ないし、局所的な革鎧くらいかな…纏うとしたら。
モンスターに対して、どんな鎧が良いのかなんて僕は分からないからこれから勉強するけど、対人ならそもそも逃げるよ。
まあ盗賊退治や護衛とかの任を受ければ、毒とか薬を使って排除したりもするけど。
「でしたら、リュックなど、荷を運ぶ物はいかがされますか?」
「最初の方は、街の外に行く依頼とか先輩冒険者の補佐とかする依頼は受けられないわけだから、少し考えようと思ってるんだ」
「考えると言うと、シヴィ様がお作りになられると言うことでしょうか?」
「場合によれば…そうするかもね」
1番良いのは着の身着のまま。
僕が日本で使ってた服は、外見は普通の洋服と変わらないんだよね。
夏でも、薄い長袖の羽織ものを羽織ってたし、冬ならそんなに厚着はしないとか、少し違和感もあると思うけど。
袖の中に暗器の類が仕込まれてて、リングには道具とか仕込み針をつけてたり。
服の布も、防刃・耐衝撃・瞬間硬質化なんかの特殊繊維を使ってたんだ。
防刃ベスト、防弾ベストの機能を併せ持った上に、衝撃もある程度は吸収緩和してくれる優れものだったんだよ。
すごいでしょ?
「買うとしても、まずは少量が入る程度でいいも思ってるんだ。ご飯なら現地で調達すれば良いしさ、寝る場所にこだわりはないし。魔力回復薬とか普通の回復薬は買うつもりだよ?」
流石の僕でも、この世界の薬草学分からないからね。
毒草とか毒性を抽出して毒薬を作るとかならできるだろうけど、良性の部分を引き出して回復薬にするのは…まあ無理だね。
僕の知らない理屈なんだもん。思考回路が流石に追いつかないや。
習わない限り無理無理。
「まあ、明日にも依頼を受けるってわけじゃ無いから、ゆっくりと準備はしていこうと思うよ」
「そうですか…。でも、1週間依頼を受けなかった場合は失効しますが…」
「え?そんな事言ってなかったけど?」
言われてみれば、確かに失効については何も聞いてないや。
それどころか、紛失した時の再発行料金とかの説明もなかった…。なんで?
とは思ったけど、ここは日本じゃ無いんだよなぁ。ましてや地球でも無いし。
聞いてない事は教えてくれないのかな?
「普通なら、登録したその日に何かしらの依頼を受けると思いますので」
「……たしかにそうだね」
流石に盲点だったなぁ。
1週間か…。まあ良いか。
「ランクが上がるにつれて、失効までの期間が長くなっていきます。F級からは失効制度がなくなります」
「へぇ…。ならそこを目標にしようかな」
早くランクを上げて、ノルマの期間が長くなる様にしたいな。
僕の状況と言うか立場と言うか、まあ僕が頻繁に屋敷から出るのは良く無いと思うし。
僕への規制…って言って良いか分からないけど、僕に関する事で少し緩くなったから、もしかしたら今後は街の方に住んでも良いってなるかも知れない。
商売にスキルを絡めたり、直接僕が何かするのは永遠に禁止だろうけど、開発とか意見を言ったりする程度なら実際に平気なわけだし。
スキルを使って商売したから市場を荒らしたわけだしね。
職人や生産者に対して、スキルで増やした分の商品対価は発生しない。納品もする必要がない。
一つだけ物があれば無限に増やせる。魔力の続く限りだけど。
改めて考えると、良く僕は死罪にならなかったって思うよ。
死罪になってたら、隣国のエリクサー問題も解決できてなかっただろうけどさ。
まあ良いや。
なんにせよ冒険者クロの誕生だよ。
目標はF級冒険者。当面はね。
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