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皆様ごきげんよう、開発のお時間ですわ。




「……ん…ぐぐぐ……ふぅー…」


 目が覚めて、両手をグーの形にして上に上げて伸びをし、肺に溜まってた二酸化炭素を絞り吐く。


 これが気持ちいいんだよね。

 もう最っ高!


「シヴィ様、お目覚めでしょうか?」

「うん。今起きたよ」

「入室してもよろしいですか?」

「どうぞー」

「おはようございます」

「おはよう、メイさん」

「皆様私のことお忘れではないですかね?」


 え?なに急に…。いつもお屋敷で顔合わせてるじゃないですかー。やだなー。


「朝食はいかがしますか?」

「うん、顔を洗ってから食べるよ」

「では、料理長にお伝えして参ります」

「お願いします」


 今日は朝食を取ったら開発に勤しもうかな。

 開発って言うか、工作?個人的な趣味?


 なんて言うのかな、ニンジャバッグ?

 前世では、僕が作ったバッグのことを『四次元バッグ』って呼んでたね。


 見た目はウエストポーチサイズなんだけど、収納量は大きめのショルダーバッグと同じくらいのあるんだ。

 とは言っても、機械作業ありきのバッグだったから作れないけど。



 バシャバシャと水で顔を洗い、保湿の薬をピトピトとつける。

 何故保湿をするかって?

 十何時間も…或いは何十時間もの間、ずっと動かずに潜入・監視・待ち伏せなどをする事があるんだよ?


 擬態して逃げる機会を伺ったり、標的が来るのを待ったり、余りないけど暗殺の機会を伺ったりするときに、肌が乾燥して余計に水分が失われることを防ぐ目的があるんだ。

 本当に効果があるのか分からないけど、雲隠衆の初代様たちから脈々と受け継がれてきた、身体管理の一つなんだ。


「おはよう、サックス」

「おはようございます。本日の朝食は、ご飯と大根の味噌汁、だし巻き玉子と生姜焼きです」

「ありがとう!いただきます!」


 本当は、焼き鮭が欲しいところだけど流石に無理なんだよね。

 本当にたまに、1ヶ月に1回あるかないかくらいで出てくるけど、もっと新鮮な海鮮類を内陸に届ける技術が発達して欲しいよ。

 誰か転移とか使えないの?


 …無理か。




 さてと…朝食を食べてエネルギー補給をした事だし、僕の使いやすいポーチのようなものを作ろうかな。


 素材は、柔軟性があって防水もあればいいね。

 もっと欲を言えば、刺したり斬ったりしても耐えられる素材で、火にも強くて劣化が遅い、軽くて薄い素材が良いな。


 鞄は前に抱えるから、柔軟で軽くて薄いのが良いんだ。

 後ろ腰に配置しても良いんだけど、背中を丸めた時とかに相手に存在がバレるし、前の方が圧倒的に物を取り出しやすいよね。

 ベルトの部分には手裏剣をストックして置けるような物も付けよう。


 防水にするのは、単に中のものを水から守るって事でもあるんだけど、防水性の面をひっくり返して内側にすれば、それはバケツの代わりにもなるんだ。

 火を消したり何かを掬ったり、或いは飲み水などの確保だったり出来る。


 防刃に関しては言わずもがな…だよね?

 防刃ベスト…鎖帷子みたいな役割を果たしてくれれば御の字。

 腹や胸を守る為の、緊急の盾みたいな扱い。

 衝撃は通すから、打撃には意味ないけどさ。


「そんな素材、聞いた事ないですね…」

「だよねー」

「ドラゴンなら…」

「姫様、恐らくドラゴンの中でも高位のものでないと無理かと思います」


 でも、ルーの言った通りにドラゴンなら可能性がある訳だよね?

 むむむ…。


 防水なら水のドラゴンかな?

 防火なら火のドラゴン?

 そう考えると、両方は無理そうかな。


 そもそも、ドラゴンの皮を革にして加工できるの?


「一流の冒険者の方だと、高位のドラゴンを討伐して加工する事があるそうです。加工するのは専門の職人が行うのですが、大抵は個人での契約となっているそうです」

「専属って事?」

「はい」

「王家にも居る。5人と契約をしてる」


 なるほどね。

 一流の…それも気が合う職人との専属契約も、上位冒険者の能力の一つって事なんだ。

 いくら実力があっても、良い物を持ってなければ実力は出し切れないからね。


 弘法筆を選ばず…なんて言葉があるけど、戦闘に関しては良い物を使わないと死ぬからね。

 剣が技に追いつかなくて折れたり、普通に打ち負けて折れたり、切れ味が悪いからダメージが通らなかったり…。


 今は剣で例えたけど、回復薬にしても短剣とか防具、靴や肌着とかも同じことが言えるね。


「ねぇ、シヴィは何を討伐するつもりなの?」

「ん?」

「ドラゴンの素材を使わなきゃ危ないモンスターなんて、そうそう居ない」

「おお…たしかに」


 言われてみれば、わざわざドラゴンの素材を使わなくても良いじゃん…って思うや。

 攻撃は避ければ良いし。


 忍者は正面からの戦闘は得意としないけど、生存のための戦闘や回避とかは得意なんだ。腕一本無くなろうが、両方無くなろうが、喋れる状態で帰還すれば良いんだから。


 戦闘面の技術よりは、回避や逃走、隠密の術が突き詰められてるのは当然だよね。

 僕ら忍びはこう言うんだ。

 『忍びもマジシャンも、対象に見てほしく無いものから視線を外す術に長けている。全く異なる存在だが、紙一重の所もある』

 ってね。


「おすすめの素材って何かある?」

「スライム」

「スライム?スライムって…ぷよぷよしてて半透明の?」

「そう」


 僕がまだご隠居様になる前、実家の家業を手伝っていた時に少しだけ、武器や防具系の仕入れもあったからなんとなく覚えてるけど、スライムを使った防具とか鞄なんて無かったと思うなぁ。


 人気だったのはウォーターベアっていう、水魔法を使う熊の素材を使った装備だったけど。

 武器は量産品で直剣型のオーソドックスなものがよく売れてたなぁ。

 壊れても、安く同じ性能の物が買えるから好まれるんだろうね。

 特に、新人に少し毛が生えた程度の冒険者とか農家さんが買っていくことが多かったね。


 農家さんは…畜産系のお仕事の人もそうだけど、田畑の作物を食べたり踏み荒らしたり、家畜が食べられたりする事があるから、それに対する自衛手段として買っていくんだ。

 現代で言う猟銃だね。

 猟師さん、農家さん、家畜を飼育してる人たちなんかが持ってたりするはず。


「打撃にも魔法にも斬撃にも強い」

「へぇ…スライムって強いんだね」

「最弱」

「だよねぇ…。魔物図鑑にめちゃくちゃ弱いって書かれてた気がしたもん」

「塩を振り掛ければ倒せますからね」


 何それ。ナメクジとかカタツムリなの?

 浸透圧が通じるモンスターって…なに?

 確かに若干似てなくも無いけど…。


「塩とか砂糖を振りかけると、水分が出て来てしぼんじゃう。後は皮だけになったスライムの核を破壊すれば良いだけ」

「水を与えれば復活するんだっけ?」

「そう」


 なにそれ?って思ったけど、なるほど確かに。

 その皮を使って装備を作るってことね?良いんじゃないかなぁ。


「スライムにもいろいろな種類が居ます。火に強いスライム、風を纏っているスライム、泥に汚れてるスライムなど、多種多様に居ます」

「うん」

「ただ、基本的に水に強い、攻撃を通しにくいと言うところは変わりません」


 それは良い。

 用途に合わせて属性を変えれば、初期費用が掛かるだけで長く使えそうな気がするや。

 初期費用も、素材を用意していけば安くなるかな?


 お城にお願いしたり、ラン商会にお願いしても良いんだけど、せっかく冒険者の端くれになったんだし、自分で調達したいなぁ。


 普通の攻撃が通りにくいなら、動く訓練用の的にする事も出来そう。

 手裏剣の的とか。


 アニメだと、スライムって何か物を溶かすような生物として描写されてるけど、この世界にいるスライムはそんな事は出来ないんだよね。

 居るのかわからないけど、酸性のスライムがいればその限りじゃ無いけど…。



 取り敢えず、鞄の素材はスライムの方向で考えよう!


「楽しい?」

「ん?」

「冒険者」

「まだなったばかりだよ?依頼は受けてないし」

「準備の段階でも楽しそうにしてる」

「そう?」

「ええ、すごく」

「ウキウキしてますね」


 忍者が感情を表に出すのは良く無いんだけど、まあ良いか!

 ずっと無表情無感情だとおかしいし。


 厳密に言えば、()忍者だし。





 お読み頂きありがとうございます!


 次回は7日の23時です!

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