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あれ?ここって仮面舞踏会の会場ですか?




「ルージェイヤー・アルシェ・ブリード第3王女殿下のご入場!!」


 儀仗兵さんが、喉が張り裂けんばかりの大音声でフルネームを言う。

 これ名前長い人だと大変そう…。

 しかも、息継ぎして良いのは一回だけと決まってるみたいだから尚更…。


 ギギギ…と扉と床が擦れる音を出しながら開けられていく。

 僕のアイデア、これ。


 煌びやかな照明、その光を反射する様々な材質の食器やテーブル、装飾品など。

 かと言って、目が痛くなるなんて事は無い。


 そして、好奇と嫌悪の視線。権謀術数(けんぼうじゅっすう)渦巻く魔境の世界が現れた。


 ふむ。基本的にみんな、意識だけを向けてる感じだね。視線はルーに行ってるけど。


「ルージェイヤー王女殿下、お変わりない様で」

「そちらこそ、お元気そうです何よりですわ、ブルーノ公爵閣下」


 え?誰これ?

 僕の友達にこんなお姫様居ないんですけど?


「ははは!いやはや、最近は歳のせいかお腹が出やすくなってしまいましてな、娘からはだらし無いと怒られる始末。妻たちにもお酒量を減らされて、間接的に痩せろと言われてます」

「とてもその様な体型には感じませんが、健康に気を使うのは良い事です」


 お酒ね…多分、清酒のせいかな?

 開発して売りに出したら、これまでに無い水の様な見た目がお酒好きで話題になって、飛ぶ様に売れたって言ってたなぁ。


 で、人間の心理的に話題になってたり爆発的に人気が出てるものとかって、気になっちゃうものじゃない?

 特に、お貴族様とか大商人とかになってくると、流行りのものを知らないと付き合いの席で話が弾まないよね?

 だからお金持ちほど良いお客さんになってくれるんだよ。


 清酒…又は澄み酒とも言ったりするんだけど、その名の通りに透き通ってるんだ。さっき言った水みたいにね?

 そうなってくると飲む時に使うコップが物足りなく感じると思うんだよね。


 ワイングラスに日本酒入れても、なんかあんまり美味しくなさそうじゃない?

 ショットグラスに入れてもそう。


 日本では、日本酒に合うグラスが多種作られてるけど、この世界にはそんなのない。

 もちろん綺麗な柄の盃とかもない。


 だからそれを作れば売れるんだよね。


「所でそちらは?」

(わたくし)のパートナーですわ。シヴィ・ダンシャク様です」

「どうぞお見知りおきを…」

「おお!貴殿があの!」

「どの様な噂を聞いておられるかは存じませんが、それが良いものであると願うばかりです」


 はははと笑って流す。

 きっと変人って伝わってるさ。


 その後、少し当たり障りのない話をしてブルーノ伯とは別れた…んだけど、後から後からみんなが挨拶に来るんだよね。

 目当てはルー。

 息子と一緒に来て『良い(結婚の)お相手は居ますかな?』とか、若い当主が『漸く領地が安定して回り始め、父がホッとしていたのですが、次は早く結婚しなさい、後継を…などと』なんて言う人もいた。


 まあ息子を紹介って言うのは分かるけどさ、自分はどうか?なんて言うのはシンプルにすごいと思ったね。

 だいたい、王様に許可を取るのが先じゃない?


『娘さんと付き合っております、〇〇です!娘さんを僕にください!』


 これは一般市民だからできる事であって、お貴族様くらいになるとそうはいかない。


『え?普通に無理。ウチとお宅じゃ家格が釣り合わない事わかるよね?と言うか何?ウチの娘傷ものにしてくれちゃったりしたの?どうすんの?』


 こうなるよね。政略結婚が普通の価値観だから、早いと妊娠が発覚した時から候補を決める家もあると思う。


 王族なら尚更、他国との結び付きを強めるためとか、家臣との関係強化とか、色々と…言い方悪いけど使い道があるんだ。

 忍者はそう言った事は無いよ?

 外から内に入れる事はあっても、外に婿養子とか嫁入りなんかはさせない。

 相手が婿入り嫁入りをしなければ破談になるんだ。



「そろそろお腹が空いた」

「そうだね。僕もだよ」

「ん。座って食べよう」


 軽く摘めそうな物を取って、会場の端に設置されてるテーブルに着いて2人で食す。

 美味しい!


 ただ挨拶をしてただけなのに、もう結構疲れたよ。

 みんな、『え?ここって仮面舞踏会の会場でしたっけ?』ってくらいに笑顔の仮面を張っつけてて、腹の探り合いをしてるんだもん。

 これで結構砕けたパーティーなんでしょ?

 ああやだやだ。


 忍者ってさ、探られたら痛い腹しか持ってないからこう言う所は嫌なんだよね。 


「姫様、陛下が参られました」

「ん。シヴィ、挨拶に行くよ」

「うん」


 これまで一言も喋ってなかったルミルさんが、国王陛下が来たとだけ言ってまた口を閉ざした。


「お父様、お母様。新春、おめでとう御座います。今年も一年よろしくお願いします」

「うむ。ルージェイヤーも他の子も、国も元気だ。今年も良い年となろう」

「母も同意します。所で、お隣は?」

「シヴィ・ダンシャクと申します。恐れ多くもルージェイヤー王女殿下とは友人と言う立場に居させていただいております」


 全然恐れ多く無いけど、そこは形式的にね?

 多分王妃様も分かってると思うけど。


「食事の時によく話題に上るお名前でしたが、ようやっとお顔を拝見出来ました。立ち居振る舞いや顔付き、雰囲気なども庶民とは思えませんね」


 はあ、そうですか?

 しまったなぁ……。エスコートしてくれてるルーの顔に泥を塗らない様にと振る舞ってたんだけど、言われてみれば庶民の子供が出来るわけないよね…。


 逆に目立っちゃうのか…。

 地球で教育を受けてたから出来るわけなんだけどさ、まさかのまさかだよ。


「ふふふ…これ以上は危険な香りがしますので、ここらでやめておきましょう」


 うん。さすが王妃様。引き際が綺麗だよ。


「…後が控えてますので私たちはこの辺で失礼します」

「うむ」

「ええ」

「それでは、失礼します」




 いやぁ疲れた。本当に疲れたよ。

 この後にダンスもあるんでしょ?パーティーって怖いんだね…。

 ひいじいちゃんは良くこんなのに何回も出席してたなぁ。


 精神修行にもってこいだろうけどさ?


「そろそろ」

「うん、わかった」


 もう直ぐにダンスが始まるからか、皆んなが男女のペアになって中央に寄り始めた。

 爵位順で配列されてるみたいで、ルーの相手をする僕は無爵位だけどど真ん中辺りに来た。


 国王陛下とお妃様も中心に居る。その周りは、王子様や王女様がいて、陛下の親族もいる。


 その外側に爵位順で並んでるわけだから、上から見れば何個も円が重なってるように見えるかもね。


「では、一曲お相手お願いします。プリンセス」

「喜んで」


 この国にはこんな言葉があるんだ。


『国王陛下を見下ろすことが出来るのは、王妃様と姫様、それと神』


 面白い言葉だなぁと思ってるんだけど、なんとかかんとか教って言う唯一神崇拝の人たちからはバッシングを受けてるみたい。

 確かに、王妃様と姫様たちが神と同列に居ると取ることも出来るから、まあ分からなくはない。


 あと、お貴族様たちからの不満もあるらしく、『これでは国王陛下よりも、神を奉る唯一神教の方が上と取ることも出来る』との事。

 確かに。


 人、物、立場…色々な要因によって見方が変わってくる事って往々にしてあるけど、この言葉もまさしくソレだよね。


 ん、始まった。集中集中。


「国王様と王妃様のダンス、凄い綺麗」

「お父様とお母様は、我が国で1番ダンスが上手なペアなのですわ。私が小さい頃は、政務の合間にダンスを教わっておりましたの」


 自分の父親だからって、国王陛下が直接教えてくれるだなんて贅沢だなぁ。

 今もまだ小さいとか言わないよ?藪蛇だから。


「そうなんですね。私はダンスには疎くて…」

「何を仰ってますの?僅か1週間でここまで上達する人など居ませんわ。少なくとも私は見た事がありません。目の前の人物を除いて」


 いやいや、貴女こそ何を仰ってますの?

 貴女のお歳は?11歳でございますよね?


 その歳で、少なくとも私は見た事が無い…なんて言えるのは凄いよね。流石王族だよ。


 ん?何処からかブーメランが飛んできた…。


 右、左、右、右、一歩前、二歩下がって半回転、左、前、前、一回転、右………。


 だんだんと音楽が音を小さくしていき、やがて止まる。


「ありがとうございました」

「こちらこそ、お相手ありがとうございます」


 互いに三歩離れた状態でお辞儀をする。




「うまうま…あむあむ…これもうまうま」

「はぁ…姫様モードと同一人物とは思えないよ」

「ん?努力の賜」

「ははっ、そうだね。で、頑張った姫様はご褒美のデザートを食べてご機嫌と」

「シヴィと踊ったの楽しかった。来年もよろしくね」


 来年ね。その時にはもっとダンスが上手になってると思うから、僕も気持ちよく踊れると思う。

 あと、真っ白なタキシードは疲れるよ。


 目立ち過ぎて視線を集めるし忍者的にはアウトです。来年は殆ど黒に近い紫とかで参加しよ。





 お読み頂きありがとうございます!


 次回は24日の23時です!

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