服装良し、髪型良し、短刀良し、暗器良し!
月日は流れて…ってほどでもないけど、今日は例のディスコデイ(嘘)の日です。
僕はこの1週間の間に、2日間だけダンス講師から教わることが出来たんだ。2日間と言っても連日じゃない上に2〜3時間程度だったから、結局は先生から習ったのは5時間くらいかな。
でも、流石は王家のダンス講師も務める人って感じで分かりやすかったし覚えやすかった。
それに、僕は日本舞踊と言う下地があったおかげで姿勢とか呼吸法とかの指摘は少なかった。
『絶対に初心者じゃない。それか何か他の習い事をしてる。ではなければ変態』って、極々小さな声で独り言を言ってるのが聞こえてましたよ。
忍者はお耳がいいんです!えっへん!
「支度まだ?」
「あ、もう少し…」
なんて馬鹿なことを考えてると、一緒に行く手筈になってるルーに催促された。
当然ドレスコードがあるわけで、僕は髪をオールバックにして真っ白なタキシードに身を包んでる最中なんだ。
着付けは、サーモン執事長とルーク執事副長が張り切ってやってくれてる。
『どうやら私たちが本気を出す時が来た様ですな』
『勿論です、執事長。いえ…ボス』
なぁーんて言って、これ以上ないくらいに目に火がついてた。むしろ、太陽が見えたね。
ちなみに、礼服で行くならタキシードじゃなくて燕尾服なんだ。
だけど、真っ白な燕尾服って凄い目立ちそうに思ったから準礼服のタキシードでお願いしたんだ。
「完璧な仕事です。着付け、化粧共に仕上がりました」
「うん、ありがとう」
「真っ白なお姿を見ると、それが誰であれ初々しく思います」
日本でも、神社とかで結婚式を挙げる時なんかは白無垢を新婦さんが着るよね?
洋式でもウェディングドレスって白のイメージが強いと思うんだ。
どこの世界でも、基本的に『白』って色は無垢とか汚れがないとか何色にも染まっていないって意味を持つんだよね。
だから、僕も社交界デビューと言うわけで真っ白なタキシードを着用してるのです。目立つぅ。
「お待たせ」
「ん。似合ってる。いつもと違う」
「ありがとう。そっちこそ、若菜色のドレスが似合ってるよ。春って感じがして落ち着きのあるいい色のドレスだね!」
「ん」
とまあ、こんな風にデビューを終えた後の人が着るドレスや礼服なんかの色は特に縛りがないんだ。
みんな基本的に季節にあった色を着るみたいなんだけど、好きな色とかイメージカラーとかで固定の人もいるみたい。
ルーは前者の様だね。
にしても…いつもと違ってとても可愛いね。
ん?これだと、いつもは可愛くないみたいになっちゃう。
いつも可愛いんだけど、普段は髪ボサボサだったりお化粧してなかったりするから、まるで別人に見えるんだ。
ルビー色の髪がドレスに映えるね。
「さて、では案内をよろしくお願いします、マドモアゼル」
「まどもあぜる?」
「お嬢さんって意味の言葉だよ」
「ん。私に任せなさい」
普通なら男女逆なんだと思うけど、僕は初参加だからね。案内してもらわないと。
とは言っても、案内役のメイドさんとか儀礼服を着たウィーとルミルさんも一緒なんだけどさ。
僕は一度行った所なら道順とか覚えてるんだ。
二度も行けば絶対に忘れない。
そんな僕だとしても、目的地までの道を知らないの迷わずたどり着くなんて事は出来ないよ。
「料理楽しみ」
「あはは。サックスも作りに行ってるから、色々な料理が出てくると思うよ」
「全種類制覇が目標!」
ふんす!と意気込むのは良いけどさ、それって淑女マナー的にどうなんでしょうか?
まだお子様だから全種類制覇しても何も言われないと思うけど、そもそもそんなに食べれるの?
「美味しいものは別腹」
「それじゃあ全部同じ胃袋に収まるじゃん」
「むむ…。サラダとお肉とお魚とパンとデザートと…あとあと…全部一つ一つ別腹」
それ、何個胃があるの?もう怪物じゃんさ。
まぁ、僕は忍術で色々とゴニョゴニョできるから制覇しますけど?
美味しい料理ってさ、食べると幸せになるじゃん?だから僕は、このゴニョゴニョ忍法を愛用してます。
試した事ないからなんとも言えないけど、10kgくらいなら軽く…はないだろうけど入ると思う。
フードファイターさんと同じくらいかな?
あっ、そうそう。忍者って印を組んで火やら水やらを操る様なイメージがあるけど、実際に印で出来るのは身体機能の底上げとかなんだよ。心の結界や体の結界もあるけど、そっちは出来る人がかなり少ないんだ。
僕は出来るよ?
忍者ができる火を操る術は、簡単なもので言えば火吹きとか火剣っていう手裏剣術の一種なんかかなぁ。
火纏いと言う危険な術もあって、キンキンに冷えた冷たぁ〜い油を被って火を付けるんだ。相手は火達磨になった使用者を見て驚くよね?
隙を見て外装を脱ぎ捨てて脱出を図るんだけどさ、良くてⅢ度熱傷(全身の10%で重症)、悪くて死亡。
これを使う時は、逃げ場がない時とかに一か八かでやるかな。特に、なんとしてでも持ち帰りたい情報を手に入れた時とか。
「おや、あそこを歩いておられるのはルージェイヤー第3王女様では?」
「おお、然様ですな」
「そのお隣を歩いている少年は見ない顔だが…」
「ややや!ジョージャック侯爵は知らないのですか!?」
「む?何をだ?セッメイ伯爵」
会場に近付いてきたからなのか、チラホラと談笑をするお貴族様たちが増えてきた。
一年前、僕は数多のお貴族様たちが出席する謁見の場で隠居を命じられたわけだけど、その一年の間に代替わりとか爵位返上や叙爵されたお貴族様もいるだろうね。一年ってそう言う期間なんだよね。
前当主や領地近隣の領主貴族に僕の存在が教えられてたとしても、実際に会ってるわけじゃ無いから顔と名前が一致しない人が出てくるんだ。
だから多分その類の人たちだと思う。
「ん?どうかしたの?」
「え?ああ、なんでも無いよ。って事はないかなあ。あそこで話してるのが聞こえてさ」
「ああ。真ん中に居る人があのグループのまとめ役。その隣の背が低い人が情報収集が得意」
へえ。
安土桃山や鎌倉、三国時代(中国)から既に言われてた事だけどさ、情報収集が大事なんだよ。
孫子も『彼を知り己を知れば百戦危うからず』って言ってますので、情報は大切なんだよ。忍者の仕事も情報収集だからね。
何が言いたいかって言うと、あの人が軍師役なんだって事。
耳が早い、情報通…軍師にとっての褒め言葉だろうね。
「もう直ぐ着く」
「知ってるよ。だんだんと貴族様が増えてるからね。みんな気が付かれない様に見てるとは思うんだけどさぁ、凄いわかるよ」
「普通なら気が付かない」
そうかもね。
ウチの一族は変態の年季が違うんだよね。
年を重ねるごとに煮詰められ、新しい技術を取り入れ、角を研いで形を作って、雲隠衆と言う枠組みにはめ込むんだ。
で、はまった後の邪魔な角とか出っ張りを磨いて無駄を省き、目の細かいやすりで磨いで
艶を出すんだ。
視線っていうのは、何も本当に目で見てる線だけが視線とは言わないんだよ。
気配を察知して意識を向ける…これだけでも視てる事になるんだ。だから分かっちゃう。
逆を言えば、こっちが周りの人に気がつかれたくなかっなら、周りの人に意識しない事が大切なんだ。
携帯電話や新聞、本とか…何かしながら歩いていてぶつかった事がある人はわかると思う。いつの間にかぶつかってた…と思うんだけど、それって要するに周りに気配を配ってなかったからだよね?
「僕たち、だいぶ注目の的みたいだね」
「シヴィの真っ白なタキシードが目立つ」
「え?僕のせい?」
まあたしかに目立つけどさー…お姫様の方が目立ちますでしょ。
裏の人なら気がつくかも知れないけど、実は袖の中に短刀と棒手裏剣を隠し持ってます。
あと、装飾品として着けてる指輪には、鉄糸が一本巻かれてます。ありきたりな暗器だけど、ありきたりって事は使い易いって事でもあるんだよね。
どんな状況になるか分からないからね。
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次回は22日の23時です!




