舞踏会、クラブじゃなくて、社交会
「なるほどね、新春のお祝いのパーティーがあるんだね」
「そう。王家が開く数少ないパーティーの一つ」
「へぇ…」
僕は行った事ないけど、ひいじいちゃんは年に一回開催されるって言う特別なパーティーに行ってたなぁ。
確か、京都の由緒ある血筋の人が主催者で、結構なお偉いさん達や高貴な血筋の人達も来る様なパーティーって聞いた事がある。
テレビ見ながら『あのジジイとは知り合いじゃ。あのガキも偉くなったのぉ。昔は紅一点だったのが、今じゃとんだババアになりよったわい』とかよく言ってた。
その時はもちろん、転生する前の僕だったから精神年齢がどうたらこうたら…なんて事もない、ただの5歳児だったんだ。
そんな年齢の子供に言ったところで、その凄さはよくわかって無いんだけどさ。ははっ!
今になって思い返してみれば、ひいじいちゃんとんでもないこと言ってたって思うよ。
それに、ジジイがジジイにジジイって…ややこしいっていうかなんていうか。
「どんなパーティーなの?」
「舞踏会」
「って言うと…ダンスパーティー?」
「そう。来る?」
「えっ?」
いや、僕ダンスとか習った事ないんですけど?
舞なら出来るけど和服が無いし…。
「そう言えば、お父様がこう言ってた。『今度の舞踏会に出す料理は、シヴィ・ダンシャクに考案してもらうとしようかな』って」
「えっ?」
僕知らないけど!?正式なパーティーに出せる様な料理なんて、僕知りませんけど!?
「食事形式は…まあ立食だよね」
「うん。基本的には立食。ダンスの合間に食べるから、簡単に食べれるものが好まれる。あと、ダンスで顔が近付くから、匂いが強いものはダメ」
「なるほど…」
確かに、せっかく麗しい人とダンスをするってなっても、相手の口からニンニクとかの匂いがしてきたら『うわっ』ってなるよね。
お貴族様が出席するんだろうから、口臭対策のアイテムもいっぱい置いてあるんだろうけど、使うの忘れちゃったり直ぐに使える状況じゃ無いと無理だもんね。
そこまで配慮が回らないとは思わないけどさ。
うーん…にしても料理かぁ。
そもそも、どんな料理が出てるのか知らないからなんとも言えないんだよね。サックスに相談かなぁ?
目の前の姫様でも良いんだけど、せっかくなら食べて確認してみたいと言う欲望もあります。
てへへ。
「舞踏会の食事ですか…。まあ作れない事もないですけど、事前に仕入れが必要な特殊な食材を使うものが多いんです。作れるものしか作れませんが、それでも良いですか?」
「うん、全然良いよ!無理を言ってるのはわかってるからね!」
「なら作りますので、少し時間をください」
「わかった!」
まあそうか。特殊な食材を使った料理が多いなんて考えもしなかったな。
特殊な食材ってなんだろ?
フグとかタコとか?地球なら、『日本人はわざわざ毒のあるフグを食べる。悪魔の魚』とか言われたりもするんだよね。
タコは他の国の人も食べるし、フグだってみんな好きでしょ?
日本人は食べることが大好きな人種なんだよ。
ああそうだ!カルパッチョとか良いんじゃないかなあ?
新鮮なお魚が手に入れば…だけど。
あと、だし巻き玉子とか良いんじゃないかな?
これなら絶対にこの世界に無いって…断言はできないけど、少なくともこの国には無い料理だからね。
「お待たせしました」
「ありがとう!」
「おお、美味しそう」
出てきたのはハーブ入りソーセージ、ミニオムレツ、ローストビーフ、サラダももちろんある。
あ、パスタも出るんだ。
デザートは、カットされたフルーツ、タルト、ケーキや…わらび餅?
「シヴィ様に教えていただいたデザートなんですが、これなら食べやすくて簡単ですので、組み込むのもありだと思いまして…」
「なるほどね…。ジャガイモを薄切りにして揚げたりとか、スティック状にして揚げるのも良いと思うよ!味付けはシンプルに塩!」
ケチャップやオーロラソースでも可。
あ、マヨマヨ先輩を作らなきゃね。
問題は卵の鮮度なんだよなぁ。
日本は生卵を食しても問題ない程に、衛生管理がきちんとしてるんだけどさ、ヨーロッパとかだとそうじゃないみたいなんだよね。
それに、時代的には中世な感じだからさ、衛生観念とか低そう。
主食系なら、簡単な手毬寿司とかもウケがいいと思う。酢飯で握るんじゃなくて、シンプルに醤油ベースの炊き込みご飯がありだと思うな。
ゴマは、歯に引っかかっると恥をかいて悲惨なことになりそうだから無しだけどね。ははっ!
「それなら簡単そうですので直ぐにでも作れますね」
「パーティーの規模ってなると、かなりの数を仕込まなきゃいけないから大変だと思うけどね」
「スライサーがありますし、なくても王城の調理スタッフは多いので大丈夫です。多いとは言ってもかなりの量を作るので、毎年、大きな催しの際には外部の一流店から料理長達をお借りしてますが」
ヘルプさんを呼んでるのか!なるほど。
各店舗の料理長さんからしても、手伝いで入ることで王城の料理長から技術や味を盗む機会ってことになるよね。どちらにとっても良いことだと思う。
ん?って事は、もちろんサックスも助っ人に行くんだよね?
なら、今までまで通りにサックスに料理を教えて、サックスから王城料理長に伝われば良いのかな?
「料理も大事だけど、シヴィは踊れる?」
「舞なら」
「舞。ダンスとは少し違う」
うん、知ってた。
多分、簡単に…誤解覚悟で言っちゃえば、ディスコとかクラブのダンスだろうね。
……全然違うか…。社交ダンス的な?ワルツみたいな感じかなぁ。
ウチのお兄ならダンス習ってたんだけど、僕は家を継ぐわけじゃないから習ってなかったんだよねぇ。
そもそも、『量産』で魔力を使い切った後は寝てたし、起きたらご飯食べたり手伝いしたりで時間もなかったし。
でもまぁ、今はご隠居様だからさ、時間は十分過ぎるほどにあるから習ってみようかな。
多分全然違うものだろうけどさ、日本舞踏は出来るわけだし。
「それじゃあ習ってみようかな。誰か先生の紹介とかお願いできる?」
「一応手配はしてみますが、この時期ですと基本的に都合の付く講師は見つかりにくいです」
え?なんかそれ、めちゃくちゃ嫌な予感がするんですけど…そう言えば新春とか言ってたし。
「その舞踏会っていつなの?」
「1週間後」
「はいぃ!?」
なるほどね。もう直ぐそこまできてるから、他の参加するお貴族様達がダンス講師を呼んでるってわけね?
最後に仕上げをするために、王家のダンス講師を招ければ箔もつくだろうし。そりゃ忙しくて手が空いてないわけだ…。
って言うか、その1週間で僕に料理を考えさせようとしてたの?王様は…。
この姫様も姫様で、1週間で僕にダンスをできる様になれと?
ルーとダンスする分なら、僕が拙くても仲が良いから問題ないと思うけどさぁ、知らない人とペアを組んで踊ることになったら、相手に迷惑になっちゃうと思うんだけど?
流石に足を踏むとか、近くの人に肘打ちするとかの醜態は見せない自信はあるよ?
身長差の問題もあるしね…。
「問題ない。無礼講とまではいかないけど、割とカジュアルなパーティーだから。格式高いのは新年にやるからもう終わってる」
「へぇ…」
「その時に、シヴィの屋敷で食べた料理を作ってもらって食べた。そしたらおっとうが気に入ったみたい」
然もありなん。
だとしても無理ですよ?そんな短期間で。僕の知る知識にも限界ってものがありますから。
忍者、嘘つかな……くもなくもない…かもしれない…と思う。多分。…多分
「もちろん、料理に関しては来年以降だよ?」
「あ、よかった。うん、ほんとに」
でも、僕個人としては参加はしたくないんだよねぇ…。
忍者って要するにスパイなんだよね。アサシンと勘違いする人がいるけど、日本語で言うならそっちは暗殺者。
主任務は情報収集、破壊工作、窃盗、調略(寝返り、裏切り)、撹乱(更に助長)とか。
まあこれは、主に他国に忍んだ者の任務ね?
自国なら防諜の一言で事足りるんだけど、詳しく分けるなら、情報漏洩阻止、工作阻止、窃盗阻止、密輸入阻止、調略阻止、撹乱阻止。
あと、相手の工作員等を捕縛、拉致、拘束、監禁等をして情報を吐かせる。
警察の取り調べは尋問だけど、裏のは拷問になるのかな?
自白強要剤もそれに当たるよね?
要は僕は表に出て目立つ様な事はしたくないんだよ。ひいじいちゃんは目立ってたけどさ。
「ダンスだって、別に踊りたくなければ踊らなくても平気。最低1回は踊るのがマナーだから、私と踊れば何も言われない」
「あ、そうなんだ」
「ダンスをいくら習っても、どんな人に習っても、踊れない人は居るから」
ああ、運動音痴とかリズムを取れない人とかって何処にでも一定数は居るものだよね。そう言う人たちのための措置なのかな?
スタミナがない人とか、体調が悪い人とか、その時々によっても色々都合があるからね。
だいぶカジュアル…って言うと語弊を招きそうだけど、あんまり気負いしないでよさそう。
クラブみたいなダンスなら出来ると思うんだけどね。型がないからフリーにダンスが出来る。
アレは絶対に楽しいよね。そりゃハマるさ。
だけど、今回はルーと踊ったあとは気配を消して料理を堪能しよ。
雲隠忍術が一つ、『カメレオン』で。
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次回は20日の23時です!




