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開発部門特別外部最高相談役




「どうもどうも、お初にお目にかかります。ワシはラン商会前会長のアランと申します。これまで、度々お知恵をお貸しいただいておりましたのに、ご挨拶が遅れた事を申し訳なく思います。今後とも商会、共々よろしくお願い申し上げます」


 やりにくい。ほんっとにやりにくいよ。

 年齢は外見を見た感じだと、多分80歳くらいだと思うんだよね。そんな人生の先達がこうやって(外見状は)孫や曾孫くらいの年齢の僕に、丁寧な口調と態度で接して来られるのは非常にやりにくいね。


 しかも、大商会の前会長さんに頭を下げられたら対応に困るでしょ。

 まぁ、無難に行こ。


「いやいや、僕と致しましても、色々と御融通いただいて大変有り難い限りにございます。支払いは王家の方々に担っていただいてるとは言え、与えられてばかりと言うのも何分なにぶん気が引ける思いですので、少しでもお返しできればと思って献策した次第です」


 献策と言うほどの事でもないと思うけど、スプリングはかなり優秀な集金装置だと思うんだ。

 スプリングが組み込まれた馬車に乗った人なら分かると思うけど、揺れが無い馬車移動がどれだけ楽か。特に、長時間乗るような行商人や乗り合い馬車なんかは、より強く求めると思うね。


 だけど、スプリングも消耗品であることは違いないから、長く、そして使用頻度が高いと、部品交換することが必要になってくる時が必ずある。

 まあ、整備だね。

 そこでそう言った意味でも、長い商品になりそうだよね。


「これまでは、王家の方々と(正確に言えば、王家専属の仕入れ係と)の商談を執り行っておりましたカランがお話をさせていただいておりましたが、一度は上のものが話をしに行くのが筋だと思ったので参りました」


 うん?それなら、前会長さんじゃなくて現会長さんが来るのが道理じゃないのかな?

 別にそうして欲しいとか言うわけじゃないけどさ、なんとなくそう思ったんだ。


「身内の恥を晒すようで恥ずかしい限りですが、現在の商会長は食べ物に当たって伏せっている状態でして…隠居した老耄が、物置の戸を開けられて埃を払われて、光の元に晒された訳でございます」

「ははは…。僕は色々とやらかしてしまった末に目に留まり、お灸を据えられてこの歳でご隠居となりました。歳は相当違いますが、同じご隠居の誼で話が通じ合うところもございましょう」

「そう言っていただけて何よりですな。現会長の具合が良くなれば、改めてご挨拶に伺わせます故に」


 ふーん。食べ物に当たったって事は、要するに食中毒って事だよね?毒に当たった訳じゃないと思う。

 それに、多分このじいちゃんもまだまだ相当な権力を持ってるはず。発言力と影響力。


 さて、問題となるのは、このじいちゃんが何の目的でここにきたのかって事だね。

 まさか本当にお目見えだけに来た訳じゃないだろうし。


「そろそろ本題に入らせて頂きたいのですが、よろしいですかな?」

「僕としても気になっていたところですので、是非ともお聞かせください」

「ほほほ、なに、簡単な事です。我が(・・)商会の開発部相談役として、外部からのご意見や商品開発の新案を頂きたいのです」


 簡単な事?どこがなんだか…。はぁ。


 要するに、このじいちゃんは僕に開発のアイデアを出してくれ、新商品の感想を聞かせてくれ、相談に乗ってくれって言ってるんだよね。

 でもそれって、僕のスキルを……ああ、別にスキルを使ってくれとは言われてないや。


 開発部の相談役だから、別に僕が作るわけではないんだもんね。


 まあそれなら良いけど、一つだけ条件を付けておこうかな。


「それはなんとも、大変身に余る光栄でございます。お引き受けしても良いと思っておりますが、ニ点確認と承諾をお願いしたいです」

「ほほぅ。それは?」

「まず一点、国王陛下ならびにお国の重鎮の方々のご許可。これはまあ言わずもがなでございましょうね」

「勿論ですとも。既にそこは話が通っておりまして、色良いお返事を貰っております」


 仕事早すぎでしょ。

 見た目に似合わず、腰も足も軽くて早いんですね…。もう良いお年だろうに…。

 まあ予想はできてたけどさ、これで『量産を商売に使う事を禁ず』と言う部分に抵触しなければ咎められる事はないと思う。


「そして二点目に、僕が提供した案が、僕の意図しない使われ方をして悪果を招いた場合、又、その動きが見られる場合などは口を挟ませて頂きたいと言う事です」


 色々と濁して遠回りに言ってるけど、早い話しが著作権の所有はシヴィ・ダンシャクに有るって事を承諾しろ…って事。

 普通ならそれは飲めないと思うけど、僕もこれだけは譲れない。

 なぜなら、その提供する技術ってのは異界の先進的な技術だから。


 その技術が生まれるまでの過程で、失敗などから新たな発見を得る機会を奪うって事は、その技術を提供して発展・進歩したように見えると同時に、停滞・滞留を起こすんだ。

 僕は忍者で色々知ってるし出来るけど、過去の失敗から生まれた成功や、失敗から生まれた新たな技術を全部網羅してるわけじゃないんだ。


 だから、僕にはその責任がある。それを背負う責任が。


「……その目を見る限り、ワシが折れる以外に引き受けて頂ける方法はありませんな。わかりました、その二点を確約致しましょう。しかと誓紙も書かせて頂きましょう。ワシと、現会長、次期会長、一族の名を全て連ねて」

「…そこまでして頂く事に感謝を申し上げます。そのご期待に添えるかどうか分かりませんが、この国をより良くする様に考案していきます」




 ふぅ。食えないじいちゃんだったなぁ。

 最後の言葉、あれって要は、『ワシがポックリ逝ってもこの誓紙に載ってる一族に、今後も手を貸してくれましょう?だって誓紙に書いてありますし』って事だろうね。


 まあ、それを確認する段階で知るんじゃなくて、本人が目の前で言ってくれた事はありがたいけど。

 それに、現役を引退して隠居してるっていう話なんだけど、あの誓紙に自分の名前と一族の名を書くのはまあわかる。

 ただ、現会長と次期会長の名前を書くのは流石におかしいよね。って事はだよ?会長の座は譲り渡したけど、いまだに実権を握っているのはあの爺様だって事だね。


 元から落とし所としての着地点を定めていたならあり得るけど、流石のじいちゃんでも11歳の子供に著作権を要求されるとは思ってなかったはず。そもそもあるのか分からないけどさ。著作権と言う概念や、その保護制度が。


「ふぁーあ。疲れた疲れた…」

「お疲れ様でございます。濃い目の紅茶をお入れしました」

「うん、ありがと」


 おや、ストレートティーかと思ったんだけどミルクティーだったみたい。良い香り…。


 滑らかな舌触りと紅茶の香りで癒されるぅ。


「ラン商会開発部門特別外部最高相談役…随分とまぁ長い肩書きを貰っちゃったなぁ」

「良いでは無いですか。やる事は今までと変わりないと思いますが?」

「ま、そうなんだけどさ、肩書きがあるのと無いとじゃ結構違うんだよね」


 ウィーに分かりやすく言うなら、メイド長と言う立場は同じだとしても、僕付きのメイド長か国王陛下付きのメイド長かって事かな。


 極端すぎるけど、分かりやすく大袈裟に言うならこんな感じ。


「私が国王陛下のお付きに?…全く想像がつかないです…」

「ははっ。それはそうだよね。普通のメイドさんと近衛メイドさんじゃ役割が違うもんね」

「その通りです」


 ルミルさんを見る限りだとあまり変わらない気もするけど、ウィーの場合は戦闘は出来ないんだよね。訓練してるわけじゃないからさ。


 まぁ、ルミルさんも戦闘訓練はしてるけど、ルーみたいに隠密が出来るって訳じゃないから苦労してるようだね。

 おかしいのはルーだけどさ。




 お読みいただきありがとうございます!


 何故か、急にPVが跳ね上がったりしてて腰をぬかしてます…。

 ブクマをしてくださった方々、本当にありがとうございます!



 次回は16日の23時です!


 

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