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外食って、良いよねぇ



 何やらいつもより長いようです。





 人間、いつも良い物を食べているとそれに慣れてしまう物ではあるが、ジャンキーな味を知っている人は時たまにそちらを賞味してみたくなる物である。

 特に、生まれた時から高級な物を食べていた人間ならそうは思わないが、普通の出である人間がジャンクフードから離れる事はなかなかに難しいだろう。

 現に、アメリカの元大統領さんも、ファーストフードを好んで食すと言う。



 はい、というわけで前置きはこの辺にしておいて、要するに僕は大衆料理が食べたくなったというわけなんだ。

 いや、大衆料理と言うと少し違う気もするんだけど、ファーストフードも含めて言ってると思ってくれれば良いかな。


 なので、今回は料理人さんたちには申し訳ないけど外食に出掛けようと思っています。

 事前に申請をしないといけないけど、そこはもう済んであるから平気。


「久しぶりに来たけど、まあそんなに変わってないよね」

「そうですね。半年くらいでしょうか?そのくらいなら変わる事は少ないですね」

「うん。特に、この大通りの店はほぼ固定だもんね」


 大通りに面していて、それも特一等地に当たるような場所のお店が早々畳むとも思えないし、そこで店を構えてると言う事は収入もかなり良いはずなんだよ。

 一等地から退くならそれなりの理由があると思うんだ。


「あまり下町の方に行かれますと、我々としては危険が増えることになるためにお勧めは出来ません。むしろ、控えていただきたい」

「ははは!でも、僕が食べたい料理ってそう言う所にあるんだよ?君も食べたいと思うでしょ?サックス君」

「えぇえぇ!たまにはこう言う体験もして見たいと思ってたんです!比較対象があるからこそ、ますますの研鑽が出来るんでね!」


 いや、貴方はお休みの日に食べにいけば良いでしょうが…。


「そう言うわけにも行かないんですよ。休みの日は師匠と大師匠の元に修行に出向くんですから」

「あー…うん、なるほどね」

「今回は両師匠にお許しを貰ってあるので同行します!」


 何か一つのことを極めるって事は、終生をそれに費やすって事なんだよね。

 料理と言うのも、毎年新しい料理や組み合わせ、調味料や材料なんかが発見されるわけで、それを勉強して物にして、更に開発して発展させることが一つの修行なんだ。


 雲隠衆という忍者集団の中においても言えることで、各地方や各国なんかに散らばっていると、その地でしか考えつかないような新しい技法や武器なんかが出てくるんだ。

 それを、年一回の新年会の時に隠し芸大会としてお披露目し、みんなで共有して研鑽を重ねていくんだ。


 終点というのは停滞を意味し、停滞と言うのは衰退を意味するんだ。

 停滞と維持はまた別物だよ?


「こんちゃー!」

「ん?おぉ!!お貴族坊主じゃねぇか!話は聞いてるけど元気にしてたかぁ!?」


 まず一軒目。ここは僕がご隠居様になる前にはよく行っていた、ダンシャク家常連のお店なんだ。お貴族坊主ってのは、家名がダンシャクだからっていうニックネームだね。


「勿論だよ!おやっさんも元気そうで良かった良かった!」

「がははは!俺様が早々倒れるわきゃねぇだろうがや!で!その連れてる人たちは?」

「あー、この女性は僕のメイドをしてくれてる人で、こっちのツルツルさんは僕の料理番をしてくれてる人なんだ。この人たちはお目付役かな」


 我が屋敷のお料理番の人たちは、みんなツルツルピカピカなんだ。

 異物混入を防ぐためにそうしてるんだって。


「ほぉーん……ま、なんでも良いや!取り敢えず空いてる席に座んなぁ!」

「はーい!」


 この世界の人たちは、朝食を食べる時間が明確に分かれてるんだよね。

 朝早い人たちは5時とか6時。普通の人は7時とか8時。遅い人は9時から11時くらいに取るんだ。


 今回は、1番人の少ない11時ごろを選んで来てるんだ。かなり遅い朝食で、下手したら昼食。

 むしろ、この時間に食べる人は1日に2食だけの人が多いね。


「それで、何を食べるんだ?」

「僕は久々にアレを」

「おう!アレな!」


 ここに来ると決まって食べるものがあるんだ。

 と言うか僕がメニューに付け足したんだけど。


「アレ…とはなんでしょうか?」

「俺も気になりますな」

「ふっふっふ。カツとじという料理だよ」

「「カツとじ?」」


 トンカツを溶き卵でとじただけの物なんだけど、みんな大好きだよね?

 そもそも、トンカツもここに教えた以外は言ってないから聞いたことがなくても当然だよ。


 豚ロースを薄力、卵液、パン粉の順でイジメて、油の海に沈めるんだ。

 最初のうちはあっぷあっぷと大きな泡を出しながら溺れてるけど、力が無くなってくるとぶくぶくとした小さな泡になるんだ。

 そしたら少し温度を上げて気付けをさせることによって、衣がこんがりサクサクに仕上がるって寸法なんだ。


 あとは鉄板か何かに、油で炒めただけの玉ねぎ布団を敷いてその上に寝かせる。そしたら、砂糖、醤油、酒、味醂を使って地を作り、タオルケットを掛けるように入れるんだ。ああ、あと出汁もね?

 地が沸々とし始めたら解いた卵を掛け布団のように全体に掛けて、半熟になってきたら完成!


 トンカツは先に切っておくのと、卵の具合はお好みで調節するべし。

 味醂がない時は、酒と砂糖を追加で平気。詳しい事は自分で調べてね?


 自分で調べた事なら忘れ難いけど、人から聞いた事って忘れやすいじゃん?


「んー…みんなカツとじでいいかな」

「はいよ。カツとじ13人分ね。出来たのから出していくから後の方の人は少し時間かかるぜ!」

「うん。それはわかってるよ」


 ふははは!皆も思い知るが良い!トンカツのおいしさを!そして!カツとじの優しさを!



「はいお待ち、先にできた分7人前ね」

「ありがとう女将さん」

「いいから早く食べな」

「これが…ごくり」

「こ、これは美味そうだ…」


 13人が一つのテーブルに座ることなんて出来ないから、7と6で分けてるんだけど…みんな釘付けだね。


「それじゃあまだの人には申し訳ないけど、出来立てを食べないのも冒涜に当たるから先に食べるね?」

「我々のことはお構いなくどうぞ」

「ありがとう。それじゃあ頂きます!」

『頂きます!』


 カツとじを食べるにあたって一つだけ残念なことがあるんだ。

 箸が無い!!!

 いや、スプーンとフォークで十分食べられるんだけどさ、別皿に乗せて出されてるわけじゃなくて、ご飯の上にのっけてもらってる丼物なわけなんですよ。

 となったら、やっぱり箸で食べたいよね?


「はふはふ…うん!美味しい!」

「へへっ!あったりめぇよ!」

「これはなんとも暖かい味です。はふはふ。このカツ?にツユが染みてて美味しいです」

「このくたくたになった玉ねぎが、ツユの甘塩っぱさに良く合う。この卵が濃い味を緩和してくれてるのも絶妙だ」


 うんうん、そうでしょうそうでしょう。基本的に丼ものにハズレはありませんからね!

 まあもはや、これはカツとじと言うよりもカツ丼っていうのが正しい気もしなくも無いけど。


 あ、何か聞いた?何も聞いてないよね?なら良かった。


「さあみなさん、ひとしきり味わいましたか?そしたらここで一工夫。おやっさん!白髪ネギが欲しいなぁ!」

「あいよ!…おまち!」

「いやいや、待ってない待ってない!ありがとう!」

「おうとも!」


 白髪ネギ。小口切りした万ネギ(万能ネギ)と同等の人気を誇ると言っても過言では無い薬味。

 長ネギの白い部分を、繊維に沿って切った後に水に晒すことで辛味を抜き、シャキッパリッとした食感が残る。


 という僕の大好きな薬味の一種なんだ!


「さあさお立ち会いの皆々様!こちらの細く切られた白いネギを、有たけ摘んでカツの上にふわふわと乗せ致す。あとはカカカッ!と口の中に掻き込むだけで、なななんと!ネギのシャキッ、パリッとした食感と、ほんの少しの辛味が見事にマッチして…もごもご(箸が)…進む進む!」


 危ない!勢いに乗って箸って言いそうになっちゃった!

 いや、別に言ってもいいんだけど、なんとなくね?なんとなく。


「お、おおお!この白さがまた合いますなぁ!」

「まるで雪が乗っているみたいです」

「で、では…はむ…美味い!」

「あむ…確かに合います!」

「でしょう!!さてさて、続きを食べましょう」


 何か勢いに乗って熱弁してしまったけど、布教できたなら結果オーライかな。


 ま、人によってはネギが好きじゃ無いって場合もあるから、そこは自分の好みで食べればいいさね。

 その気持ちも分からなくないから。



『ご馳走さまでした!』

「おうよ!お粗末さん!また来いよ!んで、新しい料理を教えてくれや!」

「また来るのはいいけど、新しい料理はおやっさんが自分で考えなよね。料理人でしょ〜?」

「がははは!そりゃそうだ!」


 さてと、ガッツリと食べてお腹が膨れたところで、どこかでゆっくりと休憩を挟みたいね。できれば座って、腹休めでもしたいよ。


 食後すぐの運動ってのは良く無いんだ。せめて30分は動かない方が体の負担になりにくいんだってさ。消化を助けるために、横になるのも良いらしい。寝ちゃうとアウトだけど。


「屋内に居るとそんなこと感じませんが、やはり外に出ると寒さを感じますね」

「うん。だってまだ3月だしさ」


 そう。現在は3月なのだ!あと少しで僕の誕生日が来るんだー。


 ん?元旦だろって?あー…まあシヴィ・ダンシャクとしてはそうなんだけど、雲隠陽陰としては4月1日のエイプリルフールなんじゃよ!

 ま、今まではコソッと1人で自分のお祝いをやってたんだけど、刀を作った時に切ったから。もう今年からはお祝いはしないんだ。


 切ったとは言っても、未練のようなものを斬っただけだから、知識とか経験は存分に使っていくよ?


「安いよぉ!まぁっかに熟したイチゴがあるよ!一口食べればほっぺも真っ赤に!二口食べればお鼻が真っ赤に!三口食べたらお目目も真っ赤に!あまりのおいしさに涙が止まらないよ!」


 おおぅ。すごい口上ですなぁ。

 いや本当に。


 これは少し興味を惹かれるなぁ。デザートとしても丁度いいかもしれないし、買って食べてみよっかな。


 ちなみに、イチゴにはVCが含まれているんだけど、イチゴって基本的に一粒しか食べないなんて事はないじゃん?食べるなら何個か食べるよね?

 だから、VCの摂取効率が良いんだって。


 良くVCを多く含んだ食べ物を食べるのが良いとかいうけど、なんでだかわかるかな?

 風邪の予防、疲労回復、肌荒れを抑えるなどの効果があるんだって。

 だから、VCを多く含んだのど飴があったりするけど、それにはこう言った理由もあるんだ。


 あ、VCってビタミンCね?VitaminのVよ?


 あと、イチゴの赤い色素成分のアントシアニンは、ポリフェノールの一種みたいで眼精疲労回復や視力回復にも良いと言われるんだ。


「イチゴ下さい!」

「お!にいちゃん買ってくれるのか!?嬉しいねぇ!どのくらい買うんだい?」

「んー……1人5粒くらいだとして、じゃあ、65粒下さい!」

「そ、そんなに!?ま、毎度!!」


 いやいや、貴方のお口が達者だったからです。

 商売上手ですねぇ。


「大量に買ってくれたお礼に、5粒おまけしておくよ!またご贔屓に!」

「ありがとう!」


 さあどれどれ。


「はむ……おいしい!甘い!」

「では私も…あむ…美味しいです!確かにほっぺが赤くなりそうです」

「はむり…美味い!」


 僕たちは別に桜ってわけじゃないんだけど、買ってすぐ食べたわけだから……周りで見てた人が挙って買い始めちゃった。あはは。


 よくテレビとかでも、『〇〇特集!今、〇〇が熱い!』とか言って『コレコレにはナニナニが豊富に含まれており、食べると体に良いんですよ。食べ方は〜〜。料理の例として〜〜』なんてのがやってるけど、アレは生産者さんとお店とかの策略だからね?


 1番良いのは、季節の物を、満遍なく食べるのが良いんだよ。それだけで体に必要な栄養は摂取できるんだからさ。

 まあ、季節のものが何かってのは曖昧になってきてて、どれがそうなのか分からない事もあるんだけどね?

 そこはネットで調べてもらって…。


 あと、ビタミン剤とかで栄養を賄うのもダメだよ!それに体が慣れてしまったら、食材から摂取できなくなっちゃうからね。

 あくまでも補助として飲むことをお勧めするね。

 詳しい事は自分で調べてね?


「か、かんばいだよぉ!今日はもう完売!イチゴは売り切れ!!みんなありがとうございましたぁ!」


 あら、群集心理が働いて飛ぶように売れちゃったのね…。

 然もありなん。



 お読みいただきありがとうございます!


 次回は10日の2時です!

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