銘を刻みます。
だーれだ!え?分からない?もぉー!
有明春銀杏だよぉ!
・・・。はい、と言うわけで、刀ができました。
「これが……なんて美しい」
「綺麗…だけど少し怖い」
「姫様、気軽に近付いてはいけません。指どころか手首から落ちてしまいます」
いや、平気ですよ。刃に被せる様に細工してありますから。切れません。
「いいでしょー!かっこいいでしょ!」
ちなみに、地肌は杢目肌で、その中でも小杢目と言われる方かな。
刃文は我が家の一子相伝の狐刃走刃と言うものなのだ!
まあ読んで字の如くなんだけど、お狐さんが刃区から鋒にかけて走ってる様に見える事から因んだ刃文名なんだ。
現代風に言えば、ぱらぱら漫画見たいな?
んーちょっと違うなぁ…。橋とかにある細工みたいな?なんて言うのか分からないけど、そんな感じ。
で、私目が打ったからには、茎には私目の名を刻みました。
「この刀の名前は『異世渡陽陰切』と言います!」
「おおー」
「かっこいいです!」
「素敵な名前だと思います!」
パチパチと拍手しながら褒めてくれるルー、ウィー、ルミルさんの3人だけど、僕としては思い入れが深い一振りなんだよね。
込めた意味としては、『異世界に渡ってシヴィと名をつけられたから、前世の陽陰と言う名前を切る』と言う事なんだよね。要するに、僕に向けた供養刀って感じかな?
異国にしようか迷ったんだけど、国を渡ったわけじゃなくて世界を渡ったんだから、こっちの名前にしたんだ。
刃長(鋒から刃区まで)はだいたい2尺5寸…cmに直すと75.75cmになるね。
まあ、江戸時代の平均が2尺3寸〜4寸だった事を考えれば、妥当な範囲ではあると思う。
子供の僕が扱えるわけないって?刀を打ったのは僕だし、研いだのも僕。使えないものは作らない主義なんだよ?
「これは?」
「そっちは脇差って種類の刀で、名前は『来隠談若』って言うんだ。若いのにご隠居様になっちゃった冗談みたいな話しっていう意味」
「ほへー」
まあ、その前に『異世界から転生した』って言葉が入るけど、『転』の文字を使うのは少し合わないなぁと思って『来』にしたんだ。
部類上は大脇差って言う内に入って、この脇差は刃長1尺8寸3分(55.1cm)なんだ。
今更ながら、漢字が通じてるところに神様からのご都合プレゼントを感じるよね。
「これは?」
「ん?ああこれね!これはねぇ…はい!貴女にあげます!」
今までのニ振りは、みんなが観にくるから特別に鞘から抜いておいたんだけど、この一振りは拵えに装飾を施してある状態で収まってるんだ。
ドレスアーマーにも似合う様に、銀色の塗装を施しあって、鞘自体の強度も堅木を使ってるからかなり高く出来てるんだ。甲冑組み手の時に使える様にね。
ここまで来れば誰にあげるものか想像ついたかな?
「え?えぇ?えええええ!?!?わた、私にですかぁ!?」
「そう。普段ルーが姿を暗ますから振り回されて大変でしょ?そこ手法を一つ教えちゃった僕にも責任があるからさ、そのお詫びも兼ねてるんだよね」
実はずっと気になってたんだ。
お転婆姫がお転婆然としてるのは、以前人を撒く方法を教えちゃった僕にもあるわけで、そのせいで直接的な被害が出てるわけではないけど心労の元にはなってるから、ルミルさんに何かお詫びをしたかったんだ。
「この刀は『破魔の近衛御剣』って言って、要するに悪魔や魔物なんかの魔の物から主君を護るんだ!って意味を込めたんだ」
「うぅ……ひっく…うれじいでずぅ!!」
「うぇ!?!?な、泣かないでよぉ〜」
「シヴィが私のメイドを泣かせたー」
「ごれは…うっく…うれじなぎでずぅ!」
いや、だとしても泣き止んで下さい。僕の心臓に悪いので。
「まさか、この様な物を頂けるとは思いもしませんですた」
「うん。言葉尻が変になってるよ?」
「家宝にします!子々孫々に受け継いで、一生、いえ!永遠に飾っておきます!」
「使ってぇ!?いや、使う機会ない方が良いんだけどさぁ!?せめて持ち歩いてぇ!?」
「な、なるほど。第2の護衛対象として持ち歩かせていただきます!」
「ちがぁーう!!」
そうじゃないんだよぉ…。物って言うのは使ってこそ意味があるでしょ?
美術品は鑑賞されるものとしての使い方があるんだけど、その刀をそんなふうにしないで?
従来の使い方をして?
「じーーーー」
「じーーーー」
何やら視線が二つ。
言わずもがなで、ウィーとルーだね。
「じぃーーーー」
「じぃーーーー」
寄越せって言われてもさ、あなた方のために打ったものはないんですけど?
「がぁーーーーーーん」
「がぁーーーーーん!!!」
「すねすね、すねすね」
「はぁー…ふぅー…はぁー」
やめて頂けませんかねぇ!?作って欲しいならそう言えば良いのに、なぁんでこっちから歩みよらなきゃならんのですか!?
ぱ、パワハラで訴えますよ!?
……訴えるところがなぁい!!
「なんて。用意してありやすぜ?お嬢さん方ぁ」
「おぉ!!」
「おおおお」
お、珍しくおが多い。喜んでくれそうならよかったよ。
だけど、ルーに脇差を持たせるわけにはいかないし、それを使う様な場面になんて早々遭遇しないでしょ。
それに、その場面になっていきなり刀を振ろうとしたところで、重くて無理。
な・の・で!ルーへのプレゼントは仕込み刀と鉄扇にします。
「ルーにあげるのは、これとこれ」
「おおー……おお?」
お姫様が持ってても怪しまれないものといえば、日傘とか装飾品かなぁって思ったんだけど、日傘を常に持ち歩くのって邪魔になるし、多分日傘を差すならお付きの人なんだよね。
そうなると結局、自分で持ってないから意味がないと言うことになる。
以上を踏まえて出した結論は、簪でした!
まあ、仕込み刀というよりは棒手裏剣に近い感じかなぁ。
「名前は?」
「典医是不要って言う、名前にしたんだ。ちょっと可愛くないけど、意味としては『名医さんが必要無いくらいに元気でいる事を願う』って事を込めたね」
「嬉しい!ありがとう」
「あと、もう一つ」
「ん?」
「これは鉄扇ていう道具で、暑い時に…こうやって広げて扇いだり、口元を隠したりする道具なんだ」
他にも、陽を遮ったり自他との結界という意味を持つこともあるんだ。
まぁ、鉄扇じゃなくて普通の扇子の使い方なんだけど、そっちでも使えるからね。一応。
「さて、これの使われることのない機能になれば良いと思ってる、護身具としての使い方を説明します」
「うむ」
「主に閉じて使ってください。鉄でできるって言っても、こんなふうに薄くしてたら強度はそんなに期待できないからね」
「確かに」
「だけど、閉じて使えばその点は安心できるんだよ。開いて使う場合は、開いて相手に投げたり、相手の目に留めるように大袈裟に使う事かな」
まぁ、言ってしまえば簪も鉄扇も使い捨ての物なんだよね。
ただ、ルーの気配を消す技量は高いから、そこら辺の人相手にならクノイチめいたことができるはず。あなおそろしや。
「この子の名前は?」
「この子…えっと『鏡』だよ」
「今までと違う」
「まぁ武器に見えないようにする武器だからね。由来としては、色々な悪い物を跳ね返してくれるようにって意味だね。扇ぐって言う行為も吹き飛ばすって意味にもとれるし」
「ん、良い名前」
ルーが気に入ってくれたのなら良かった。
鉄扇だから少し無骨なんだけど、変に飾りとかを入れたら耐久性が落ちちゃうんだよね。
絵を描くとかなら良いかも。
「わくわく!」
「良い大人がワクワクとか口にしないでよ」
「私には何を頂けるのでしょうか!!」
はっきり言って、ウィーにあげるものは何にするか迷ったんだ。とてもとても迷った。
ルーみたいに簪とか扇子をあげても使い道がないだろうし、かと言ってルミルさんみたいに大脇差みたいに刀をあげたところで、それこそ使い道がないでしょ。
いや、僕に何振りも刀を持つ意味はあるのか?って聞かれたら閉口するしかないんだけどさ?
なんて言うの?んー…そう!名刀が好きなんだよ!信長公とか秀吉公、家康公も集めてたんだって話だね。まぁ、刀が褒美として下賜される事もあったようだから、そのためにもーって事もあるのかもね。
「ウィーにはこの小柄を差し上げます!」
「うわぁ!ありがとうございます!!」
「名前は『破邪の小太刀』。実際には小太刀では無いんだけど、その方が格好が付くから小太刀って名前をつけたんだ」
「どのような意味でしょうか?」
「うん。その小柄の主な使い方は手紙を開ける時に使うペーパーナイフと同じなんだ。手紙には恨みや呪い、毒が込められてる事もあるから、それを打ち破る、切り裂くって意味を込めました」
それに、小柄なら果物ナイフとしても使えるし、それこそ護身用にも使える便利なものなんだ。
本来は刀の鍔に専用の差し場所があって、携帯しておくのが一般的なんだ。
まあだけど、武士の世の中じゃ無いし、ましてやここは日本・地球でも無い。誰も咎める人なんて居ないから平気さ。
気にしない気にしない。
後日、この事を知ったお屋敷のみんなから、無言の圧力をかけられたのは言うまでも無いよね?
全員分作るのには骨が折れたよ…。
だから、鉄は申し訳ないけど『量産』を使って確保しました。
お読みいただきありがとうございます!
次回は8日の3時です!
まだ夜中ですね…。




