やっぱり刀は持ちたいじゃん?男子の夢じゃない?
「武器を持つ…とは?」
「はっ!誤解させてしまう様な物言いで大変恐縮ですが、武器を持ち歩くと言うわけでは無く、観賞用としての所持・製造のご許可を頂きたく思います」
はい、武器欲しいでーす。
実際にこの間襲撃があったわけじゃないですかぁ。だから、刀があった方がいいと思いました。
やっぱり得物があるのと無いのとじゃ全然違いますからねぇ。
でも、刀を作るには玉鋼がいるわけで、玉鋼を作るにはタタラ製鉄が必要なんだよ。
だから、所持だけじゃ無くて製造も許可して貰おうって魂胆。
「武器というのは…その…なんだ?」
「なんだ…と申されますと、種類という事でございましょうか?」
「その認識で合っている」
「刀という剣の部類に位置する武器でございますが、ご存じでしょうか?」
今のはちょっと挑発的に受け取られちゃうかもなぁ。
『刀って知ってる?剣の一種何だけどさぁー。え?知らないの?』みたいに受け取れちゃうし。
「生憎と初めて聞くな。誰か知っておるか?」
「初めて聞いた名前ですなぁ」
「私もです」
「私も初耳ですぞ」
「おお、軍務大臣に総司令殿まで。となると、新しい発明かもしれませんなぁ」
「なるほど。馬車の揺れを抑える部品や、将棋というチェスにも似た盤戯、冬の寒い中でも暖かく執務をこなせる炬燵などを発明した者とあらば、新たな発明品でもおかしく無いですな」
うん、なんか僕、持ち上げられてるね。
多分、僕を良い気にさせてペラペラ喋らせようって事なんだと思う。
喋るけどさ。
「発言してもよろしいでしょうか?」
「うむ、許す」
「はい。刀と言うのは、剣と違って片刃の武器となります。紙と筆をお貸しいただければ、考案図を書き記すことも可能ですが」
「直ぐに用意してまいれ」
「ありがとうございます。その間に進めます」
片刃っていうのは説明が難しいんだよね。和包丁の鎬が片方しかない刃のことも片刃っていうしさ。
あと、何で曲がってるのか、何で真っ直ぐなのか、何で細いのかとかも。
「まず、私が作ろうとしている刀の使用方法ですが、従来の剣と違って斬る事に特化しております。なので、剣と同じ様に押し切る様な使い方をすると壊れます。刃と刃を合わせますと、刃こぼれして斬れなくなります。滑らかに斬れるのは精々が5人でしょう」
「うぅむ。全く想像がつかないな。そちはどうだ?」
「はっ。少しは理解できましたが、脆そうという印象を持ちます」
おお、さすがは軍の指揮官様だ。
「そこで重要になってくるのが、鉄の種類です」
「鉄の種類?」
「はい。玉鋼と呼ばれる鉄を用いて鍛えます」
日本刀は『折れず、曲がらず、よく斬れる』と言うのだそうだ。
これを為すにはタタラ製鉄にて作られた玉鋼が必要で、炭素を多く含む硬くて割れやすい鉄と、炭素が少ない分柔らかくて粘り気のある割れにくい鉄を作るんだ。
で、刀の内側に使うのは柔らかくて折れにくい方、外側は硬くて折れやすい方。
この2種類を併用する事と合わせて、焼き入れを行う事で日本刀になるんだ。
まあ、その炭素の調整を行うのが折り返し鍛錬ってやつで…んー…何回も何回も繰り返し叩いて延ばしては折って、赤くなるまで熱してまた叩くと言う作業をしているんだ。
「それで、その玉鋼とやらはどうやって見つけるのだ?」
「玉鋼は作成します。良質な砂鉄を使って精錬します」
「ほう。それはそちがやるのか?」
「ご許可いただければ」
「ふむ……良かろう」
よっし!話の流れから玉鋼の話になっちゃったけど、玉鋼を作って良いとなればこっちのものだね!
「紙と筆をお持ちしました」
「ありがとうございます」
紙と筆を受け取った僕は、気を利かせて一緒に持ってきてくれた小机の上でサラサラと書き上げていく。
忍者舐めんなし、余裕よ!
「出来ました」
「うむ」
紙と筆を持ってきてくれた文官さんに渡して、それを宰相が受け取って国王陛下に回る。
「ご説明させて頂いて宜しいでしょうか?」
「うむ。許す」
「それでは……。まず前提として、私は商人の息子でしたので剣を間近でみた事はございません。なので憶測での物言いとなります」
地球に居たときは見たり振ったりした事があるんだけど、それは言えない。
それに、この世界での剣を見たことがないのは本当だから、もしかしたら違う可能性もあるし。
「剣と言って皆様が思い浮かばれるのは、真っ直ぐの刀身に両刃で先端が尖っているものだと思います」
「その通りだ」
「ありがとうございます。剣の使い方は主に突き刺す、叩く、押し斬る、だと思っておりますが、間違ってますか?」
「いや、概ねその解釈で合っている」
うん。と言う事は、やっぱり西洋の剣と同じ感じだね。
ならば、日本刀の美しさを知ったら乗り換える事間違いないです!断!言!します!
「それに対して刀は、片刃で細長いものとなっております」
「レイピアの様なものか?」
「そこまで細くはありません。包丁と同じ程度と思っていただければ。もちろん、それ以上も以下もございますが」
いまいちわからない様子を見せる大臣たちやお貴族様に、国王陛下から刀の絵が回り始めた。
「うむ。確かに細い」
「こんなの直ぐに折れてしまわないですかな?」
「刃が片側にしか付いていないと、不便に思うのは私だけですかな?」
「何故湾曲しているんだ?」
「この波の様な模様はなんだ?装飾品なのか?」
「長さはまちまちと書いてあるが、これは一体どう言う…」
口々に疑問をするのはよくわかるよ。
多分、初めて種子島を見た日本人も似た様な反応を占めたと思うね。
あ、そう思うと面白くなってきた…。
「まず、刀と言うのは3種類ほどございます。今回そちらに書かせて頂いた絵は、打刀と呼ばれるもので、徒歩の時の戦闘に向く刀です。太刀と言うのは馬上において使うのに向く刀です。最後に直刀というのがあり、こちらは剣と似た使用をされます」
時代順で言えば、直刀、太刀、打刀の順に発展してきたんだけど、日本刀というと主に打刀をイメージする人が多いね。
刀を佩く時に、刃が地面の方を向く様にするのが太刀。
刃が天を向く様にするのが打刀と言うんだ。
博物館とかに行った時に気にして見てみると、飾り方が違うんだよね。それで太刀が打刀かわかるんだけど、まあ僕はもう行けないから関係ない話だね。
「刃を上にして腰に差す打刀ですと、乗馬した際に湾曲した先が馬のお尻に当たり、馬が落ち着かなくなると言うために騎乗の際は太刀を使います」
「ならば、刃を下向きにして持てば良いのではないか?」
「まさに、正鵠を射る様なお言葉ではございますが、刀には茎と呼ばれる部分があります。鋒から茎尻までを全て含んで一本の刀となりますが、普段茎は柄の中に収まっております」
さぁーて!ここからが面白いところだ!
「実はこの茎の部分には、この刀身を作った者の名を刻む事があります。なので、この名が入った面が表となる仕掛けでして、そこで太刀か打刀かが分かれる次第です」
実はそれ以外にもあって、刃を上にして腰に差す打刀の方は、歩兵戦が主戦になってくる室町中期以降からの流行りなんだけど、刃が上になってれば抜いて直ぐに斬れるって言う特徴があるんだ。
極端に言えば、鞘から抜きながら袈裟斬りができるって事。…いや違うなぁ。
居相斬りがこれに近いかもしれないけど、居相斬りはまず恋口を切るんだ。
刀の……まあ良いか。
「次に、細い、折れそう、湾曲、片刃と言うところについてご説明します。先ほども申しました通り、刀の使い方は突く、叩く、押し斬るではなく、引き斬るです。その為、細くても折れる事はあまりなく、湾曲しているために引き斬りがしやすく、湾曲しているために片刃となっております」
細いからこそ、刃が鋭くなって切れ味があがるんだけど、刃が鋭くなるとその分刃毀れも起こしやすくなるのは難点だね。
だから、鍔迫り合いなんてのは滅多に起きないし。
そもそも、基本は遠距離の弓合戦から始まって槍合戦、そこに騎馬が横っ腹を叩いて乱戦になっていき、やっと刀の出番なんだよ。
自陣まで乱入されたらひとたまりもないわけだから、武将同士が打ち合う事はあまりないんじゃないのかな?
それよりも雑兵の統率や自身の撤退が優先だと思うし。
「そして、波の様な紋については、これは刀を打っていると出てくる不可思議なものでして、一つとして同じものはなく、材料や製法によって出てくる紋も全く異なる仕組みになっております」
「ふむ、なるほど。そちの説明は分かりやすくて理解する事ができた。また、大臣たちが疑問に思った事にも直ぐに答えられたあたり、よほど深く練った案に違いないと我は思った。皆はどう思った?」
おおお!国王陛下が理解してくれたのはありがたい限りだね!
僕の拙い説明でもわかって良かったよ…。
「そうですな。褒美を取らせると言い、許可まで出したのにここで反故にすると言うのは少し。私は賛成いたします」
おお!宰相さんが許可してくれた!
まあ確かに、さっき『ok!いいよ!』って言ったのに、僕の説明を聞いて『やっぱりno!』とか言ってきたら『んーー』ってなるもんね。
天に唾吐くじゃないけどさ。
その後も、次々と賛成を表明してくれたからそこで終わりとなった。
うん、良かった良かった。
ところどころで、僕の案じゃないみたいな口調だった気もするけど、僕の説明を飲み込むのにリソースを割いてたから気がついてないみたい。
忍者の僕が言うんだから間違いない!
なんて。
やっぱり、刀を持つってのは男子の夢じゃない?
「ふはは!夢が広がりますなぁ!」
ついでに八方手裏剣と棒手裏剣も作ろう!
僕は棒手裏剣の達人で、棒手裏剣の腕だけならひいじいちゃんにも負けないんだ!
新しい打法も生み出したし!
元来、棒手裏剣の使い方っていうのは3種類だったんだ。
回転させないで対象に真っ直ぐ飛ばす『直打法』。
半回転させる『半回転打法』。
一回転させる『回転打法』。
この3つに加えて、僕が新しく考案して完成させたのが『雨打法』。
まあ簡単に言えば、上に投げて落下させ、頭に落として排除するって事なんだ。
雨が降ってくるみたいに。
これの難点は、極端に練度が必要な事と、対象が動かない事や落下地点を計算して投げる事。
だから、この技法は僕しか使えないんだけどね。
それに、昔の忍者は手裏剣よりも木を削って作ったマキビシを使用してたんだ。逃走目的でね。
まあ、この世界で手裏剣を使う様な事にはならないと思うし、なったとしても一本持ってればスキルでどうとでもなるんだよね。
お読み頂きありがとうございます!
やっぱり刀…特に打刀ってカッコいいですよね!
次回は6日の4時です!




