約1年ぶりの登城
「シヴィ様、お加減の方は如何ですか?」
「うん、苦しく無いよ」
はぁ。何で僕はこんな派手派手な格好してるんだろう。
いや、理由は知ってるけどさぁ?
「むぎゅっ」
「あ、申し訳ございません!」
「ぷはっ…いいよ、僕とウィーじゃ身長差があるからね」
僕はこの間の献策が上手くいって事によって、国王陛下から直々に感謝を述べられることとなってしまったんだ。
で、前回は一応一張羅を拵えたんだけど、そんなのは所詮平民から見た時の一張羅なんだけどね。
まあそれでも、僕らは国王陛下の客と言う名目だったから何も言われなかっただけで、そうじゃなかったら周りのお貴族様たちがなんて言うか…。
『何ですの?あの見窄らしい服は…。我が家のトイレットペーパーの方がまだマシですわ』なんて言われかねないね。
まあ聞くところによると、お貴族様のトイレットペーパーには金箔が練り込まれてるみたいだから、強ち間違いでも無いんだけど。
「よし、よし、よし!完璧です!」
「うん、ありがとう」
「それでは参りましょう」
「はい、お願いします」
今回謁見するのは僕だけ。
そりゃそうだよ。何でわざわざメイドさんたちも着いてきて謁見するのか分からないから。
王城の方から案内役の兵士さんが3人きてくれて、案内と警護を担ってくれる。
「今一度改めて説明させていただきますが、もし何者かに襲撃されたときは、我々のことを囮として使って逃げて下さい。一応お力の程は聞いておりますが、間違っても応戦されることのなき様お願いします」
「分かりました」
護りながら戦うのと、憂い無く戦うのじゃ全然違うもんね。
何かを守りながら戦うって事は、リソースの何割かをそっちを意識する事に割かれる。
だから、護られる側の実力がどうであれ、まずは逃げるのがベスト。忍者なら知ってるはず。
忍者が護衛をする時なんてのは、主人が寝る時くらいなんだけど。それも、裏からの襲撃を防ぐ程度。
あ、そうそう、忍者・忍びとか言うと、みんなはアニメとかによくあるシーンを思い浮かべるんじゃ無いかな?
『(服部)半蔵』『はっ!』シュタッ!みたいなの。
あれ、あり得ないからね?
何で常に主君のそばに居られると思うの?
多分、本人は居ないけど部下が応対して、それを棟梁に持っていくのが正解だと思う。
それがいつからか誤解されて、呼べばいつでも何処でも現れると勘違いされる様になったんだと思う。
忍者の特徴は特徴がない事だし、戦国の世の大名たちなんて忍者を矢と同じ程度にしか考えてないでしょ。
使えば減る、なら追加すればいい。手紙を持たせて走らせる、矢文と一緒じゃん。
まあ、だから歴史小説のタイムスリップものなんかでは、忍者を重用することで上手くことを進めて辻褄合わせしてるんだろうけど。
うん、なんか話が辺な方向にそれちゃった。
「着きました。ここからコチラの部屋で30分程お待ち頂き、呼びに来た儀仗兵の案内で謁見となります。時間まではお寛ぎ下さい」
「はい」
ドアが閉まってからため息をひとつ。
お寛ぎ下さいってさあ、これからこの国の1番偉い人に会うのに寛げるわけないよねぇ?
僕は転生前に神様に会ってるわけだし、転生した後に一回国王陛下と謁見してるわけだし、転生前の我が家は特殊な家系だったから慣れてると言えば慣れてるんですけれども…。
普通の一般人なら緊張しすぎて心臓止まっちゃうと思うなぁ。
あ、クッキー美味しそう。
「はむ……んむんむ…美味しい!さすが王城!」
バターと砂糖、それとハチミツも使ってるね。
お高いクッキーだなぁ。もう一個食べちゃお。
近年の兵糧食…と言うか、忍者の懐飯はあまぁい物が多いんだ。
バターとチョコとハチミツを高濃度で混ぜ合わせた超高カロリーバーとか、人によっては砂糖と塩を混ぜた物を小瓶に入れて持ち歩いてたり。
あとは、市販の栄養補助食品…なんとかバーとかなんとかメイトとかも人気だね。
進歩を受け入れない者は退歩を選ぶ者、なんて言う家訓もあるわけで、我が家は流行に機敏だったりしたのだ!
温故知新(古きを知り、新しきを得る)もひいじいちゃんの口癖だったなぁ。
コンコン
おや、考え事をしているうちに30分が経ったのかのぉ。
「はぁい」
「儀仗隊の者です。お迎えにあがりました」
「はい」
「それでは案内をさせていただきます。前回も一度国王陛下とお会いしていると言う事ではありますが、改めて謁見の時の注意をさせていただきます」
「はい」
前回のにプラスされてなければ、大した事は無いと思うけど…。
「まず、謁見の間に入ると中央まで歩みます。一応この時の歩数と言うのは決まってますが、大人との体の大きさが違われますので気にしなくて大丈夫です」
へぇ、それは知らなかった!ああ、だから歩数を意識してガクガクカクカクするのかな?緊張かもしれないけど。
「中央にたどり着いたら、右膝を地につけた立膝の姿勢で、左手を立てた左膝に置いて頭を下げて下さい。国王陛下からのご許可がない限り、直答と顔上げは禁止です。会話は宰相殿とされて下さい」
ふむふむ、新しい事は無いね。
「退出される際は、立ち上がって3歩後退し、一度頭を下げてから向きを変えて下さい。立ち上がって直ぐに背後を向くのは、思うところ有り、納得していないなどの意味に取られることがあります。また、陛下に臀部を向ける事を意味して侮辱の行為と捉えられます」
うん、めんどくさいね。
いや、日本でもさ、天皇陛下の御前に出る時とか退くときとかに色々と作法があるだろうけど、僕みたいな一般裏市民がお目見えになることなんて無いからね。
日本も昔は天皇陛下にお会いできるのは公家だけだったからね。途中から武家も官位を得て御所に上がることができる様になったけど、天皇は簾越しで顔は見えず直答も出来ないんだよね。
顔は見えるけど直答が出来ない謁見と似てる。
天皇や国王、皇帝などになってくると、何故偉いのか?じゃ無くて、偉いから偉いみたいになってくると思ってるんだ。
だって一般市民が『何故国王は偉いのか』なんて考えないでしょ?
国のトップだから偉い、なんてのは答えじゃ無いし。
僕が考えるには、『血筋』とか『家系』だとは思うけど。
日本の初代天皇は神武天皇とされ、その初代天皇の家系図を辿っていくと『神』が出てくる。
有名と言うか誰でも知ってる様な神様が。
『天照大神』と『須佐之男命』で、天照大神の方は伊勢神宮の祭神として有名だね。天岩戸に籠った神様としても。
須佐之男命で有名と言えば、『八岐大蛇』の討伐だね。その時に色々あって尻尾から出てきた剣が、かの有名な三種の神器が1つ『天叢雲剣』。
『 草那藝之大刀』とも。
うぅーん、なんの話をしてたんだっけ?
ああそうそう、日本の天皇陛下の神性の話だったね。
まあ、そう言う事だから現代まで続く天皇家と言うのは、その身に神の血が流れてると解釈できるんだよね。だから、現人神とも言われるんだ。
「もう直ぐ着きますので、ご準備を」
って事だから、詳しい事は自分で調べるが良い。
僕はもう地球に居ないから調べられないけど。
「よろしいですか?」
「いつでも」
「はい」
大きな扉が閉まってる前にたち、謁見の間大扉番の兵士さんたち(多分儀仗兵)に一礼してから大きく息を吸った。
「…ーーー」
漫画とかでは良く、『すぅーーー』って言う擬音が使われるけど、この場合は音がしない。
他国の国賓や貴族様たちの前で、大きく息を吸う時に『すぅーーー』何て音がしたらみっともないでしょ?
「王賓!!シヴィ・ダンシャク現御隠居様の御成にございます!!」
前来たときは『御成』とか使われなかったと思うけど、多分、今回の僕は『王賓』…要するに、王様のお客さんだからって事で使われたんだろうね。
『国王陛下より御通しの御通達!!大扉を開けられてご入室下さい!!』
扉の向こう側から、大きな声での許可が出た。
儀仗兵って大変だねぇ…。喉潰れちゃう事はないのかな?あるよね?
「では、私の仕事は終わりとなりますので、ここで失礼致します」
「あ、ありがとうございます」
「さて、本日参って貰ったのは、そちの献策にて隣国との戦闘が早く収束した件についてよ。何か褒美はいらぬか?直答を許す」
え?マジっすか?直答許しちゃうんすか?
周りの人は…納得してるの?ならいいや。
「はっ、大変名誉な機会を頂きありがたく存じます。この度は、私の様な矮小な者の稚策が功を奏したとあり、身に余る光栄に存じます。その功に見合った褒美を取らせていただけるとあらば、私に武器の所持をお願いしたい限りです」
武器の所持、そういった瞬間にざわざわとし始めた。
まあそうだよね。城壁の内側でご隠居してるお子様が、何で武器を持つ必要があるのかさっぱりわからないもんね。
後は喋り方かな?
貴族の英才教育を受けた子供じゃ無い限り、この場での丁寧な喋り方なんて出来ないだろうし、例えお貴族様の子息子女が喋れたとしても、この場ではっきりとした物言いは出来ないかも。
国王陛下とお話しするとは、恐れ多くて言葉が出てこないってなると思う。
でも僕は子供だし、庶民だし、元地球人で忍者だし。
国王陛下は神の子孫じゃ無いでしょ?なら平気さ。
お読みいただきありがとうございます!
次回は4日の5時です!




