デブが跳ぶ2
「オレぁ、世間じゃ有尾人て呼ばれる、いわゆる亜人種でね。もっとも軍属になるときに、尾っぽは切っちまったんだが」
「℃%�⊆@◇◇�?」
スキピオは出自を語るが、背中にしがみつくミトラは、言語にならない悲鳴をあげながら、ろくに相づちもうてなくなっていた。
無理もない。さっきから何度となく地上と上空一〇パス(約十五メートル)のアップダウンを繰り返して、今は小走りに大跳躍の助走にはいっている。
どうやらウォームアップだったらしい。高さ一五パス(約二二・五メートル)の城壁がみるみる近づき、城門を攻める宦官兵の一部が気づいて、長槍を振りあげ何か言っていた。
スキピオは意にも介さず、
「若かったんだなァ。亜人種、亜人種って馬鹿にされてよ。しゃらくせェ、そんなら軍人になって見返してやると言ったら、族長の爺ィが反対してな」
「&#◎�△�≒!?」
「そっからはお決まりの大喧嘩さ。生まれた村を飛びだして、募集広告をみて亜人部隊に飛び込んだ。こっから腕一本でひと旗あげてやろうって、まあ、鼻息ばっかり荒かったもんだ」
そう語りながら歩幅をひろげて全力疾走。なるほど、これならウシケラトプスからも逃げ切るだろう瞬足で、景色が跳ぶように流れていく。
放たれた矢の雨をくぐり抜け、さらに城壁に走り寄ると、迎え撃つ宦官兵もまた目と鼻の先。繰り出される長槍を踏みつけてホップ、剃り上げた禿頭でステップ、次の瞬間、
「あらよっと」
ふわりと宙に浮いて、そびえたつ城壁を遥かに越える大ジャンプ。あんぐりとして見上げる宦官を尻目に、王都の空高く舞い上がった。
「℃◆�≧�∠@∵~?」
「まあ、現実は甘くねェやな。決闘沙汰やら乱痴気騒ぎやら、散々馬鹿やったあげくに、負け戦の責任を背負わされてよ。亜人部隊はあっさり取り潰しの沙汰がおりちまった」
「〓【∞�㈱$】≫!?」
「オレらは普段から人間たちに蔑まれてたんで、それを根に持ったんじゃねェかって、その国の王族に疑われてな。平たく言やァ、内通を疑われたのさ。滅亡秒読み段階の国によくある、内輪揉めってやつな」
「∩⊆%Å�→(T_T)!?」
長大な放物線を描いて、町家に着地したかと思えば、屋根瓦を粉々して穴を開け、すぐさま次の跳躍へ。
易々と王都に飛び込んだぽっちゃり系は、旧市街の平屋根、商家の寄棟屋根、寺院の尖塔、飾りの石像、礼拝堂のドーム屋根などを次々踏み台にしながら、中心にある王宮に向かって跳ねていく。
その背中のミトラは息も絶え絶え、目を白黒。風をはらんで広がる嫁入り装束だけが、青空にハタハタとはためいていた。
「もっともオレらの素行も最悪で、あちこちに恨みを買ってたから、半分は身から出た錆だがね。結局、四面楚歌の籠城中だってのに、亜人部隊を束ねてくれてた隊長の首を斬りやがったんで、ほとほと愛想がつきてよ。有無を言わさず開門して、そのままトンズラしたきたってわけさ」
「@&∬∀�⑦ΔΠ★!?」
宦官の城攻めに怯える王都の住民は、上空にあらわれた人影の怪異に驚愕した。いまにも城門が破られようという折も折、宦官が放ったあやしい妖術に見えても仕方ない。
叫ぶ者、指差す者、祈る者、女子供を隠す者。勇気ある男衆には小石や棒きれを投げつける者もあるが、まるで届かず地上に戻ってくる。
ここでもまた、恐慌状態が起きかけていた。




