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オトコの姫とヒゲデブの騎士  作者: あしき わろし
9 陽だまりのおさらい
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青空の下

「なあ。ここいらで状況を整理しとこうぜ」


「ん」


「なんだよ、気のねェ返事だな」



 スキピオは目だけでカトーの横顔を睨み、また視線を空に戻した。

 高いところに雲が浮かんで、時折、午後の日差しを遮っていた。


 エカサの暴動はようやく下火になったが、まだ散発的な騒ぎがくすぶっていた。

 暴動が沈静化したというより、暴れすぎて疲れたというべきか。荒らしまくるうちに幾つかの集団をつくり、最後は互いに削りあって消えたともいえる。

 カトーとスキピオは城門を抜けるのに手間がかかった。ようやく今、ふたりの姿は、エカサ郊外の寒村から王都方面に向かって、干し草を運ぶ荷馬車の上にある。



「ま、いいや」



 スキピオは寝ころんだまま、咥えていた干し草をぺっと吐き出して、



「まず、この国の現状だ。もっぺん図にしてみるぜ。復習だ」



国王イフススメス

││├─①王太子(死没)

││第一王妃

││

│├──②アルカデウス

│第二王妃 ・貴族ナセルス

│          ↑

│          対立

├──┬③ホノリス  ↓

第三 └┐ ・宦官ヤゴチエヌス

 王妃 │

    └ミトラ(女児の扱い)

      ↑

     タケチウス(馬鹿)

     ※オラスマ首長国王子



「いっつも思うんじゃが」


「なんだよ」


「上の図、どこに書いとんじゃ」


「細けえこたァいいじゃねェか。おさらいだ。普通、①王太子が死んだら②アルカデウスの順番になりそうなもんだが、王太子の後ろ盾でもあった宦官のヤゴチエヌスが③ホノリスを親父のイフススメスに猛プッシュして、最近ちょい有利になってた。ここまでが、ナセルスのクソ貴族の話だったな」


「だったのう」


「ミトラは第三王妃の子……つまり、王太子候補ホノリスの兄貴にあたるわけだが、産まれた時分に女児と報告され、女の子として育てられた。そういう解釈でいいんだよな?」


「そうなるのう」


「そもそも、なんで、そんな面倒くせェことをしたんだろうな?」


「王太子が生きとったからじゃろ」


「あ、なるほど」



 スキピオは指を鳴らして、



「ナセルスのクソ野郎が言ってたな。たとえ子供であれ、後顧の憂いになる存在は殺しとくってよ。王太子が即位したら、予備の王子は殺されちまうかもしれねェ。だからミトラのおっかさんは、子供かわいさに女児と偽ったわけか」


「浅知恵と言えばそれまでじゃが。王族の倣いとはいえ、気の毒なものよのう」



 カトーが空を見あげたまま言った。


 手を頭の後ろに組んで、ひょろ長い身体を干し草の山に投げ出しているが、長い足がはみ出して、宙ぶらりんに揺れている。

 時折、馬車が小石を踏んで跳ねるが、干し草がいいクッションになって、乗り心地は悪くない。荷物はそこらに放り出し、大刀は鞘のまま干し草に突きさしていた。


 スキピオも同じ体勢のまま、



「んで十数年たってみたら、王太子がおっ死んだ。それと相前後して生まれた次男坊が、宦官の激推しで王位継承レースをリードしてる」


「そうなると、ミトラの立場は微妙……はっきり言えば、邪魔じゃのう」


「おまけに姫として育てたもんだから、縁談まで持ちこまれちまった。そのうちにっちもさっちもいかなくなるって、わかんねェもんかな」



 暗澹とした口調でそう言ってから、吐き捨てるように続けた。



「俺もすぐに気づくべきだったぜ。上の図で、こっそりミトラを消しちまいたい動機をもってる奴ァ誰か……畜生、言いたくねェ」

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