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オトコの姫とヒゲデブの騎士  作者: あしき わろし
8 王都へ
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愛しき姫の真実

 ちっともわかってないが、ちっともへこたれないタケチウスは、



「で。ナセルス殿。我が愛しき姫は」



 と、あくまで一直線だった。

 ナセルスはやんわりとした口調で、



「ところで、なぜ、ここにいると分かったのでございますか」


「誰かが投げ文で教えてくれたのだ」


「その誰かとは、背の高いヒゲと、背の低いデブではございせんか」


「さあ?そこまでは」


「ふん」



 ナセルスは小皿を引き寄せて、葡萄の種を吐き出した。その横顔に、ふと凶暴な一面がうかんでいる。

 小賢しい真似を。やはり斬っておくべきだったか……柔和な表情にそう書いてあるようだ。



「まま、いいでしょう。これ、連れてこい」



 ナセルスが命じると、ほどなくして赤いマントにくるまったミトラが引っ張られてきた。

 あれから一昼夜たつというのに、まだ衣服もあたえられていない。



「く……」



 男たちの前に立たされて、ミトラはマントを掻きあわせながら、無言でナセルスを睨みつけた。



「姫!」



 駆け寄ろうとするタケチウスを、ナセルスは片手で制した。

 それは穏やかな動作だったが、さしものタケチウスが、思わず踏み出した足をとめた。



「?」



 疑問の眼差しを向けるタケチウスに、ナセルスは穏やかな微笑を返しながら、



「そろそろ殿下がお見えになる頃と思いましたので、直接、マントをお返ししようと、敢えてそのままにしておったのです」


「む。それは痛み入る」


「これ。そのマントを殿下にお返ししろ」



 ミトラが唯一まとっているものを、ナセルスは無造作に“そのマント”と言い、そのまま“返す”よう命じた。

 かわりに何か着るものを、とは言わない。



「し、しかし、それではナセルス殿!」



 むしろタケチウスが慌てた。



「それでは姫が、いえ姫の……その、見えてしまうのでは」


「見えたとして、いかに」


「それは、もちろん嬉し……いや、困ったことになるのでは、その、嫁入り前の……姫の……裸……」


「タケチウス殿下」



 ナセルスは姿勢をただし、あらたまって言った。



「我がヤゴナ王国は、貴国と殿下に深く謝罪せねばならぬやもしれません」


「は、はあ」


「もし、私の懸念があたっていたならば、貴国を欺こうとしていたことになる。そのときは関係者の首を差し出して、幾重にも、幾重にもお詫びいたします。これからすることは、その懸念を確かめるためとご承知おきください」



 そう言われては、タケチウスも黙って見守るしかなかった。

 ナセルスはあらためて、



「マントを殿下にお返ししろ」



 その半刻後……。


 へこたれないタケチウスもさすがに蕭然として、というより茫然自失の態で、静かに天幕を後にした。


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