赦免
「この通りだ。許してくれ」
カトーとスキピオは深々と頭をさげた。
路地裏に聞こえてくる表通りの狂乱沙汰が、やけに遠くに感じられる。
ふたりは頭をさげたまま、
「今頃、謝っても遅かもん」
とミトラが言うまで、身じろぎもしなかった。
「もちろん、これで済むとは思ってねェが、ここにいたら、あんたの身が危ねェ。ひとまず安全なところまで案内させてくれねェだろうか」
「そこでワシらを好きなようにしんさいや。エンコ詰めても手打ちにされても、もう逃げも隠れもせん覚悟じゃ。それで手を打ってくれんかの」
そう言ってまた頭を下げるふたりに、まだしゃくりあげているミトラは、
「本当にもう、誰かにやらんと?」
「絶対にやらん」
「置いていかんと?」
「本気で誓うよ」
「絶対に、絶対に、約束ばい」
と何度も念を押してから、
「今度だけ許すばい」
ようやく、そう言ったのだった。
「よっしゃ。そうと決まりゃあ、とっととずらかろう。街から出ねェと、ここも危ねェ」
スキピオがそう言って、ようやく顔をあげた。
市街はまだ暴動の真っ只中にあった。
いったん火がついてしまえば、それは日頃の不満を巻き込んで燃え広がる。
エカサ商人とアルテノッペ商人。商人と労働者。はたまた人類と亜人類。あるいは同種、同族、家族さえもが積年の恨みをぶつけあっていた。
エカサの自警団も出ているようだが、
「ここまできたら、正規軍の到着待ちといったところかのう」
というところまで暴動は進行していた。
なにしろ暴徒が多すぎて、自警団では焼け石に水。正規軍が鎮圧するまでに、どれほどの被害がでるだろうか。
「とはいえエカサの自治会も手回しいいな。城門だけは手ェまわして、がっちり固めてやがる。これじゃ出るに出れねェぜ」
スキピオが舌打ちをした。




