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オトコの姫とヒゲデブの騎士  作者: あしき わろし
6 奴隷市場
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修羅場のハッピーチャンス

 猛り狂った群衆は壇上に殺到して、煉瓦を投げつけるわ、丸太を振り下ろすわ、もみくちゃになりながら乱戦を繰りひろげていた。

 が、そこはタケチウスの侍従も訓練された軍卒。



「若をお守りしろ!」



 押されながらも陣を崩さず、頭数では圧倒的な群衆の猛攻を押し返していた。

 そればかりか喉元を狙ってひと突き、ふた突き、次々と血祭りにあげている。



「景気よく殺しやがるなァ。ここは連中にとって外国だろうによ」



「まー、普通に国際問題じゃの」



「ヘタすりゃ戦争だぜ。オラスマの奴らってなァ、揃いも揃って馬鹿ばっかりか」



 飛び散る血飛沫、転がる死体。

 そんな凄惨な光景のなか、ミトラはマントでくるんだ肩を抱え、美剣を血に染めるタケチウスの背後にうずくまっていた。

 戦いはここまで五分と五分。

 両陣営が得ようとする儚げな獲物を、とりあえず王子側が防衛中といった戦況である。



「タケなんとかさん、どうやらミトラを救い出す気のようじゃが、さて、まかせておいてええんかの」


「そいつは、まずいな」



 スキピオは眉を寄せて、



「護りきったところで、あいつはミトラの正体を知らねェだろ。あのまんま、あいつに保護されちまったら」


「正体がバレるのう」


「のこのこ国境まで迎えにきて、勢いあまって国境こえて、そこの住民をぶっ殺す馬鹿だからな。逆上した馬鹿はおっかねェぞ」


「護りきれんかったら?」


「血ィ見た群衆ってのは、もっとおっかねェ」



 カトーとスキピオの目があって、互いの意志を確認した。

 スキピオが素早くあたりを見まわして、



「一瞬、待ってろ!」



 と走りだす。


 カトーは長刀の鞘をひっ掴み、態勢を低くしてその時に備えた。

 ほどなくして広場に隣接する大浴場の三階窓に現れたスキピオが、



「野郎ども、耳の穴かっぽじって聞きやがれ!」



 と、あたり一面に響きわたる大音声で、喧噪渦巻く広場の注目を集めた。今度は何モンだ、誰があらわれた、という無数の顔が見あげるところへ、



「さあ、老いも若きもお立ちあい。朝から晩まで働く毎日、身につかねェのがあぶく銭、上前はねてく人でなし、銭はてめェの財布を素通り、見るに見かねた旅のモノ好き、昨夜たんまり巻き上げたぜ詐欺、さあ、さあ、ハッピーチャンスだ野郎ども、派手に小粋にデナル銀貨の大盤振る舞いだぜ!」



 一気にまくしたて、手一杯に掴みとった銀貨を、勢いよく投げ上げた。



「早いもの勝ち、もってけ泥棒!」

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