表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
オトコの姫とヒゲデブの騎士  作者: あしき わろし
6 奴隷市場
37/69

砂海の美丈夫

「待て待て待てーい!」


 広場に殺到した一団、その数、ざっと十人余。

 揃いの甲冑、揃いの剣に、背格好から挙動まで、みごとに統一されている。

 ただし真紅のマントをはためかせ、颯爽と先頭を切る美丈夫だけは、ひときわ華美な甲冑に身を包んでいた。

 はやくも抜きはなたれた長剣も、まばゆく白銀に輝いて、ひと目でそれとわかる業物。

 おそらく彼がリーダーだろう。


 壇上はちょうど、よろず商がミトラの貫頭衣を剥ぎ取るところだったが、



「とうっ!」



 と、群衆の目を奪う美丈夫がひらりと躍りでて、脱いだマントでミトラをくるんでしまった。

 どうやら紳士のようではあるが、



「ちょ、ちょっと、あなたがた!」



 仕込みに仕込んだ競売ショーを邪魔されて、慌てふためくよろず商を、



「エイ」



 と、ひと突き。

 喉元をおさえたよろず商は、そのまま壇上から転げ落ちて動かなくなった。

 どうやら手のはやい御仁でもあるらしい。


 群衆は逆上した。


 身を怒らせ拳を振り上げ一触即発。なんだこいつ、いいところで邪魔しやがって(そこ?)そもそも誰だ?大仰な風体してやがる。誰でもいいから、そのマントを取っ払え。とにかく話はそれからだ!


 美丈夫はよく通る声で、



「ええい、黙れ平民ども!我を誰と心得る」



 群衆を睥睨しながら大喝した。



「寄らば目にみよ。遠くば音に聞け。我こそは砂海に勇名轟くオラスマ首長国の第八王位継承者、幼少より十数年に及ぶ大遠征で、天下にその名を馳せたタケチウス王子なるぞ!」



 知るか、そんな奴!帰れ、帰れ!だいたい、なんでオラスマのボンボンがこんなところにいるんだ。ここは市民の広場だぞ。引きずりおろせ!たたんじまえ!


 そう息巻く群衆に向かって、タケチウスと名乗った美丈夫は、



「貴賤を知らぬ者どもが、己の身分もわきまえず、我が此処にいる理由を訊ねおるか。さればよく聞け平民ども。麗しの我がミトラ姫を待ちきれず、みずから迎えに赴けば、国境も跨がぬ旧道にて野臥りどもに襲撃されたとの急報。すわ一大事と駆けつけたれば、そこには累々たる屍ばかり、そこに我が姫の姿はなく、哀れ下郎どもに捕らわれて、辱めを受けておるやもと馬を飛ばせば、よってたかってこの始末。おのれおのれ下賤の者共、我が妃となるべき麗しの姫に、よくも破廉恥な真似をしおったな!」



 などと、なおも長広舌をかましている。



「話を総合すると」



 人だかりを掻き分けながらカトーが、



「どうやらミトラの嫁ぎ先は、あの兄ちゃんだったらしいのう」


「かわいい新妻が待ちきれねェと、わざわざお出迎えかよ。素っ頓狂な野郎だな」


「オラスマ首長国いうたら砂海方面か」


「半農半牧のオアシス国家群だ。最近は交易で羽振りがいいと聞くな」



 言いながらスキピオが首をすくめると、後方から投擲された鉢植えが頭上をかすめて、運の悪い野次馬の後頭部で砕け散った。

 それをきっかけに、群衆が壇上に殺到する。



「やべェな。こいつは、血をみるぜ」



 それが始まりだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ