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オトコの姫とヒゲデブの騎士  作者: あしき わろし
5 夜更けの商談
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嘘つきたちの攻防

「どうだい。売りもんになるかい」



 スキピオが声をかけるまで、よろず商はミトラの寝顔から視線をはずせずにいた。



「なるもならないも……このような趣向を好まれる粋人も、ごまんとおられるでしょうに」


「とは聞くんだが、蛇の道はヘビってやつさ。あいにく、その方面にゃツテがねェんだ」



 よろず商は、ごほんと咳払いをして、



「一応、あらためさせて頂きますが、よろしいか」



 と言い、



「いや、興味本位ではございませんぞ。亜人種である可能性もありますのでな」


「そこは信用してくれていいぜ」


「もちろん信用しておりますとも。しかし有尾族などは尻尾を切ってしまえば、我々と変わるところはありませんのでな」


「変わらねェなら、どっちでもいいような気もするが」


「ところが有尾族ときたら、足枷をしたまま十パス(約十五メートル)も飛び跳ねるのですよ。昔、塀を越えて逃げられたときなど……」


「まあ、いいや。起こさねェように頼むぜ」



 スキピオとカトーは背を向けた。


 よろず商が“品質”をあらためる、衣擦れの音を聞きながら、カトーが小声で言った。



「我りゃー、あがぁなホンマっぽいウソが、よう次から次へと出よんのう。サマトノバッタ公国なんて、どこにあるんじゃ」


「しっ。サマバノトッタだよ。尻尾をだすんじゃねェぞ」



 よろず商は何度も感嘆の息をついていた。

 本人も意識はしていないのだろうが、心なしか呼吸まで荒い。



「ふうむ……確かに」



 チェックを終えたよろず商の顔を見れば、感想は一目瞭然だった。

 以降、彼の言葉と本音を併記する。



「ま、まあ、そこそこのお値打ちといえるでしょうな」


翻訳:見たことがないような上玉です。



「おそれながら初めてのお取引ですので、通常ならば日を改めてご商談を、と申し上げるところですが」


翻訳:ぜひともこの場で商談をまとめたいのです。



「今後とも懇意にさせて頂きとうございますから、今回はご期待に沿うよう努力させていただきますぞ」


翻訳:一刻もはやく、手に入れたいのです。一刻もはやく!

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