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オトコの姫とヒゲデブの騎士  作者: あしき わろし
5 夜更けの商談
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あるく百貨店

 よろず商は笑顔をたやさず、



「ふむ。して、お売りになりたいモノはどちらに」


「そいつさ」



 燭台が眠っているミトラを照らした。

 こうしていると静かなもので、胎児のようにまるくなり、すうすう寝息をたてている。

 その横顔を見て、



「ふうむ……」



 思わず、よろず商が唸った。

 彼は読んで字のごとく、よろずを扱う商人である。


 王家のドレスから庶民のパンツまで。

 マダムの蜜蝋から娼婦の白粉まで。

 ツバメの巣からイモの茎まで。


 よろず商は百貨店といえた。

 より具体的に言うと、行商人から仕入れた商品を、都市に行き渡らせるのが彼らの業務である。

 そして都市人口の四割といわれる奴隷もまた、彼らの取扱い品目であった。


 つまり、ミトラを売り払おうとしているのである。



「……起こしても?」



 しばらくして、よろず商が言った。



「いや、このまま頼むわ」


「何か、いわくつきですかな」


「なに、ちょいと仕事をしくじっちまってよ」



 スキピオは頭を掻いて、



「オレたちゃ南洋諸国のひとつ、サマバノトッタ公国におわします、さる貴族様のお抱えでね。名前は明かせねェが、タダ同然で巻きあげた無人島から明礬が出て、染物市場を席巻しちまった好事家の旦那と言やァ、だいたい検討つくだろう」



 よろず商は考え込みながら、



「ふうむ……なかなかの羽振りのようですな」


「その旦那の側女に欠員ができてね。その前が豊満な南国美女だったから、今度は儚げで色白な北方の少女がいい、なんて言うわけさ。まあ、よくある話だよ」



 と、スキピオは苦笑して肩をすくめた。



「ってなわけで、はるばる高原地方くんだりまで買いつけに来たはいいんだが、やっぱり素人のつれェとこだね。ツラだけ拝んで早々と仕入れちまったが、性別を確かめんの忘れてた」


「なんと!で、では、この子は……」


「どうせバレちまうから、ヘタに誤魔化すのはやめとくぜ。れっきとした男の子だよ」


「ううむ……なんという……」



 よろず商は腕組みをして、言葉を失ってしまった。

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