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オトコの姫とヒゲデブの騎士  作者: あしき わろし
4 ノンベたちの政談
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男ツワモノ、女ヒメ

 アルカデウスとホノリス。

 王子ふたりの後継問題は、ヤゴナ王国を二分する対立となっていた。

 酔っ払いの馭者は言う。



「そんなこんなで、この国は次期国王の座をめぐって真っ二つ。その煽りをくって、王室出入りの御用達からの居酒屋のオヤジまで、どっちかの息がかかってる有り様でね」


「多数派工作ってわけか」


「どっちの味方をするかで誰にナシを通しておくかも違うし、取り引きできる相手も違ってわけさね」


「めんどくせェな。オレたちにゃ関係ない話なんだがね」


「どうしてもってわけじゃないよ。兄さん方は外国人だからな。まあ、これは助言さね」


「あんたはどっちなんだい」



 スキピオが訊くと、馭者はエヘンと咳払いをして、



「おあいにく、駅馬車の馭者は特別さね。なんたって駅馬車は、畏くもイフススメス陛下の直轄なもんでよ」


「おっと。そいつァ、お見それだったな」


「まあ最近は、うんと催促しないと給金だって貰えねえけども、それでもたまにゃあ、勅旨や勅令を運ぶことだってあんだからな。抱き込むだの何だのってのとは無縁の話よ」


「うめェことやってんなァ」



 スキピオはカトーを促して席を立った。

 カトーは眠り込んでいるミトラを抱え上げ、スキピオは銅貨を卓に置いた。



「まァ、ひと晩、考えてみるさ。いろいろと、ありがとうよ。少ないが、こいつで一杯やってくんな」



 馭者は顔をくしゃくしゃにして、



「これは、これは。こっちこそすまなんだな」


「ワシからも、ひとつだけええかの」



 ミトラを背負ったカトーが、



「なんでも訊いておくれ、でかい兄さん」


「そのホノリスたらいう殿下なんじゃが、姉か妹がおるんと違ったかの。噂ではそう聞いたんじゃが」



 馭者は少し考えて、



「ご令姉さまがいらしたな。たいそう美しいという評判だったが、つい先日、隣国オラスマに嫁がれてしもうた。でかい兄さん、興味あるのかね」


「いやなに、この娘がの」



 と、ミトラの寝顔を顎でさして、



「こがいな子供でも女じゃのう。噂にきく姫様をいっぺん見たいと、こん国に来る前からきつくての」


「ほう」


「見たからいうて自分が綺麗になるわけじゃないんでと、何べん説明してもわからんのじゃけ。姫様はもうおらんと知ったら、こりゃまた煩いのう」



 そうボヤくカトーに馭者は、



「でかい兄さんだって子供の時分、強い兵士に憧れただろう。それと同じでないかい。女の子なら綺麗な姫様に憧れるもんさ」



 そう言って片目をつぶった。



「女の子なら、ね」

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