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オトコの姫とヒゲデブの騎士  作者: あしき わろし
4 ノンベたちの政談
27/69

予想③-②、①落馬

 宦官長ヤゴチエヌス。

 そう聞いてスキピオは、



「宦官がからんでるってなァ、ちっとばかし厄介だな」



 と、いやな顔をした。


 宦官は男性器を切除した男性で、国王が私生活をいとなむ後宮において、あらゆる雑務をこなす官職だった。

 男女が“間違い”を起こさないよう、後宮に男性は国王ひとりなのだが、女手だけでは何かと不便なので、男であって男でない人間をつくったのだ。

 人権蹂躙の極みだが、その歴史は古く、宦官が巻き起こす政争の前例も、また多い。


 馭者は頷いて、



「そんで、そのヤゴチエヌス様が、毎日のようにホノリス殿下の素ん晴らしいお人柄を、イフススメス陛下ご注進してるんだな。陛下もその気になりかかってる……なんて噂もある」


「なんだかんだ言って、国王の私生活をおさえてんのは強味だもんな。下々の処理から毎夜の伽まで世話してもらってるんじゃ、金ン玉を握られてるようなもんだ」


「そして結局のところ、閣僚の任命権や軍隊の統帥権は陛下ひとりがお持ちなわけでね。元老院といったって、所詮は王権を補佐する機関でしかないんだもの。だからナセルス様も気が気でないんだな」


「きな臭ェことになってんなァ、この国も」



 スキピオは馭者の杯にまた酒を満たし、ついでに自分とカトーにも注ぎ足した。



「何だか、ややこしくなってきたな。ちっと図にしてくんねェか?」


「いいとも」



国王イフススメス

│││

││├─①王太子(死没)

││第一王妃

││

│├──②アルカデウス

│第二王妃 ・貴族ナセルス

│     ・元老院

├───③ホノリス

第三王妃  ・宦官ヤゴチエヌス



「ありがとうよ。こうしてみると、①王太子の亡き後は②アルカデウスが来んのが、自然っちゃ自然なんだな」


「そういうこと。ところが①から③ホノリス殿下の支持にまわったヤゴチエヌス様が、猛烈にプッシュして順位を逆転させつつあるんだ」


「さあ、そうなると黙っちゃいられねェのが元老院。つまり、この国の貴族たちだな」


「その通り。とくに出世頭のナセルス様にしてみりゃあ、宦官たちに宮廷を牛耳られたんじゃあ、堪ったもんじゃないもの」


「なるほどねェ。つまるところ、この国も貴族と宦官がお決まりの内紛ってわけだ。きなくせェ話だな」



 馭者は乳焼酎をちびりとやって、



「まったくさね」



 と、ほろ苦く笑った。

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