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オトコの姫とヒゲデブの騎士  作者: あしき わろし
4 ノンベたちの政談
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ボヤキ酒

「ちぇ。いい気なもんだぜ」



 そう言ってスキピオは、また乳焼酎の杯を傾けた。


 七輪が片づけられた卓にミトラが突っ伏して、すやすやと穏やかな寝息をたてている。

 時折ムニャムニャと何やらつぶやいて、顔の向きを変えたりしているが、それでいて目を覚ますことはなかった。


 店の客はおおかた捌けて、今は同じような呑んだくれを残すのみだった。

 換気の悪い店内に立ち込める煙が、騒動の名残をとどめている。

 長逗留を決めこむ酔客は椅子に根を張り、もう、おいそれとは動かない。

 これからまだ夜の長い、どこの酒場でも見られる夜半の風景だった。



「呑気に寝やがって」


「それにしても、かわいい顔をしとるのに、勝ち気なとこあるのう。ははは」



 そう笑うカトーも乳焼酎を嘗めていた。


 先ほどから、かなりの量を消費しているが、従軍経験のある二人にとって、このくらいは酔ったうちに入らない。

 乳焼酎のアルコール度数は七~八パーセントといったところだが、その五倍ほどもある酒の樽に、逆さにした授勲者を突っ込んで祝福するのが、所属していた部隊の伝統だった。


 鍛え方が違うのだ。



「勝ち気なのはいいがよ。程度問題だぜ」



 かつて三度も『酒樽落とし』の栄誉に輝いたスキピオは、浮かない顔をしていた。



「オレはなれ合わねえ、つったろ?」


「ああ、言うとった」


「あとで辛くなるからよ。それをお前、あんな馬鹿騒ぎなんか、おっ始めやがって」


「ノリノリじゃったように見えたがのう」



 カトーはにやつきながら、



「それに別に一緒になって馬鹿騒ぎせえ、とは言うとらんで」


「そりゃ、お前……あんな風にされたら、つい乗っちまうだろうがよ」



 スキピオはますます渋い顔をした。



「とにかくだ。お遊びはここまでにして、あとは予定通りやるぜ。これは、お前も同意したことなんだからな」



 カトーは答えず、黙って杯を仰いだ。



「もう決めたことなんだ。四の五の言ったって、結局はそれしかねェんだよ。俺たちといるってことは、大手を振ってお天道様の下を歩けねェってことなんだからな」


「ほーじゃのう……」



 カトーが思案顔になって、続けて何か言おうとしたとき、



「兄さん方、なかなかいい呑みっぷりでないの」



 と、相席の許可もとらずに、割り込んでくる男がいた。

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