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オトコの姫とヒゲデブの騎士  作者: あしき わろし
3 ホルモンの戦い
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ホルモンの戦い(4)

「乳焼酎を味見してみたかと」



 とミトラが言いだして、カトーとスキピオは顔を見合わせた。

 山中でブドー酒を飲ませたところどうなったか、まだ記憶に新しい。


 カトーが諭すように、



「そりゃ、やめときんさい。酔うてしまうからの。ブドー酒であれじゃけん」


「そうだぜ。その馬乳酒あたりがちょうどいいんじゃねェか?」



 ミトラは、ぷっと膨れて、



「子供扱いせんでくれんね」



 と睨みつけたが、ふたりが気にする素振りもみせないので、やおら火鋏を掴みとり、



「このハチノスはもう食べ頃ばい。このギアラも、よう焼けとっと。これも、これも……」



 意趣返しのつもりだろうか、網上のホルモンを、片っ端から取りはじめた。



「あっ。それはオレのだろうが!」


「ほほう。ミトラさんや、それは宣戦布告ととってええんじゃろうの」


「大人のホルモンは戦争って言うたばい」



 とミトラは鼻息も荒く、



「それとも、ふたりは子供やったと?」


「おもしれェ。受けてたつぜ」


「ぷぷぷ……火挟みがウチの手にあるのを忘れとっと?」


「大人を舐めんなよ。こいつで取りにいきゃいいんだよ」



 スキピオは岩塩を削るナイフをひっ掴むと、ホルモンを次々とぶっ刺して、自分の小皿に放り込んだ。



「あっ!ルール違反ばい」


「お前がそれを言うか」


「不都合がありゃあ適当に解釈を変えるのが大人のルールじゃ。ほれ、このセンマイもええ焼け具合じゃのう」



 カトーはなんと、肉の端をつまんで小皿に投げ入れていた。

 熱さを感じる前に手を引っ込める荒技だ。



「こなくそ、負けんばい!」



 ミトラが立ちあがって火鋏を振りかざし、スキピオがムキになって対抗する。

 乱暴に網をつつきあうので、ギアラが跳ねる、ミノが飛ぶ。

 カトーがそれを口でダイレクトキャッチすると、真似ようとしたミトラが、



「あひっ、あちち」



 涙目で馬乳酒を流し込む隙に、スキピオがそのラウンドを制した。

 次のラウンドが始まるや、見境のなくなったミトラが生焼けをすべて確保して、



「まだじゃ」



ひょいと手を伸ばしたカトーがそれを網に投げ返す。

 ギャアギャア罵り合いながら延々と繰り返すうちに、大皿は二枚、三枚と重ねられていった。



「もう、食べれんばい……」



 酒場の隅で繰り広げられた『ホルモンの戦い』は、馬乳酒に目を回したミトラがひっくり返って、ようやくその終焉をみたのであった。

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