ホルモンの戦い(3)
ミトラは見よう見まねで、ホルモンをタレに浸し、葉にのせ口に運んだが、
「あ、熱っ!」
「フーフーを忘れとんで」
「あつ、あつ……」
「出すな出すな、そがなときはこれじゃ」
カトーは杯を引き寄せて、乳白色の液体を注ぎ手渡した。
ミトラは急いで含み口を冷やすと、どうにか一緒に飲みくだした。
ミトラは舌をだして冷やしながら、空になった杯の底を覗き込んで、
「こ、これは?」
「馬乳酒よ」
「甘くて酸っぱくて、うまかねえ」
「気に入って何よりじゃ。なんでも木桶に溜めた馬の乳に干し葡萄を放り込んで、ひたすら掻き混ぜると泡がたって酒になるらしいで。まるで魔法じゃの」
「ふうん……干し葡萄の糖分を触媒にして発酵するばいね」
「難しいことを知っとるのう」
カトーはモグモグやりながら、
「馬乳酒はのう、北にいる遊牧民が皮袋に詰めて、喉が渇いたら馬に跨ったままグビリ、グビリとやるんよ」
「ふうん」
「遊牧民は同時にこれで栄養不足を補っとるんよ。なんせ元は乳じゃけえ、これだけ飲んどっても、しばらくは生きていけるじゃろの」
「すごか。ビタミン入りばい」
スキピオもホルモンの菜っ葉巻きを食べながら自分の杯を煽っていた。
こちらは馬乳酒のように白濁しておらず透明である。
「ふたりが飲んどるのは、なんね?」
「馬乳酒を蒸留した焼酎だよ」
「へえ。どんな味しとっと?」
「ちょい乳臭ェ風味は残ってるが、味を説明しろって言われると困るな」
「味、せんと?」
カトーも髭を濡らして呑んでいた。
「味がないわけじゃないで。乳の風味にアルコールの刺激がくる感じとでもいうか」
「ちょっと違うみてェだが、それしか表現しようがねェな」
ミトラは聞きながらも、せっせとホルモンを巻いては、口いっぱいに頬張っていた。
いくぶん慣れてきたらしく、火鋏も器用に使っていたが、どうしても焼酎が気になるとみえて、視線はふたりの杯から離れない。
みっつめのホルモン巻きを口に押し込み、ゴクゴクと馬乳酒とともに平らげたところで、我慢しきれなくなってこう言いだした。
「それ、ウチも味見してみたかと」




