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オトコの姫とヒゲデブの騎士  作者: あしき わろし
3 ホルモンの戦い
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サラダボウルの街

「賑やかいなところばいねえ」



 ミトラは物珍しそうに、あたりを見回した。



 旧街道を一日半。


 歩きなれないミトラを、励ましたり背負ったりしながらこなすと、やがて大きな街に出た。

 王都サンマルノとともに、王国の二大都市とならび称される、商業都市エカサである。


 エカサの町並みは古い。


 膨張する市街が外壁を呑み込むたびに、その外側に新たな外壁が築かれたらしく、市街を幾重にも囲むその遺構が、街のところどころに残っていた。

 なかでも、もっとも古い旧市街に呑み込まれた外壁は、撤去を待たず突き崩されて、修繕と増築にリサイクルされ、迷路のような街並みにひと役買っている。


 その市街をつらぬく大通りに入って、



「うをっ!?」



 ミトラは息をのんだ。


 そこには大小、形、色とりどりの人類・亜人類が行き交って、見たこともない風景となっていた。


 角が二本あるもの。

 長い尾を振るもの。

 全身毛むくじゃら。

 水掻きをもつもの。

 背に翼を折るもの。

 額に眼がぱちくり。

 手を前に恨めしや。


 などなど……。



「調子にのったらいけんど」


「?」


「作者に言うたんじゃ」



 悪ふざけはさておき、それら様々な人々が牛馬や羊、山羊、駱駝、はては駝鳥や大蜥蜴といったものたちに荷を曳かせ、車輪をぶつけ合いながら闊歩している。

 まさに人種のサラダボウル。

 ミトラが感嘆の吐息をついた。



「すごか……」


「あまりジロジロ見よったらいけんで。気の短い奴もおるけえの」


「こん街は異人さんが多かとね」


「まー、言うても二割ぐらいじゃ。連中は用事があって出歩いとるけえ、多く見えるんよ」


「二割?そんなもん?」


「ここは商業の街なんじゃ。西は沿海州や平原の国々から、南は熱帯の密林、北は高原の遊牧地帯、東は山岳地方や、その向こうの砂海から行商人がきて、持ちよったもんを取引しよるけえ、まー、いろんな奴がおるんよ」


「それにしても、ばり混みよっとねえ」



 確かに、そこは人々であふれていた。


 おまけに側道には途切れることなく屋台が並び、辻々では旅籠の客引きやら口入れ屋の募集やら、気のはやい娼婦が袖を引くやら。あげく屋台の隙間にこっそり賭場まで開帳の始末で、初めて出てきたオノボリさんなど、まともに歩くのも容易なことではない。


 そこへいくとカトーは慣れたもので、



「はぐれんように、ついてきんさいや」



 と、お婆さんの巾着を引ったくった掏摸を蹴飛ばしながら、



「迷子になったら探すのにひと苦労じゃ……って、言うとるそばから……おーい」



 好奇心のおもむくまま、屋台のひとつに捕まったミトラは、まんまとヤマギンチャクの串焼きを握らされて、



「?」



 頭上に疑問符を点灯させていた。

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