魔女の矢
4月17日放課後
蹴斗との待ち合わせ場所の第1グランド横廃倉庫へ移動する。まだ時間があったからマヤの電源をいれる。
「創志、待った?」5分程して蹴斗がやって来た。
「いや、そんなに待ってないよ。メールで伝えてた通りあの宇宙船の充電が終わったから、蹴斗も行きたい時にいけるようになったよ。これが蹴斗のお世話してくれるマヤだよ。」起動していたマヤを蹴斗に渡した。
「んっ、ここはどこだ。おい、お前、このでかいやつがお前が言ってた会わせたいやつか?」
ソフトテニスのボール位の大きさの幾何学パズルが蹴斗の前で回転しながら話しかけた。
「すげえな、浮いてる。そうだ。この前は、助けてくれてありがとな。」
「それは、マヤじゃないぞ。そこのあいつのパートナーだ。それよりお前の名前はなんというのだ。」
「俺は、蹴斗だ。よろしく。」
「マヤはマヤだ。蹴斗はまっすぐで強くなりそうだな。そこのあいつと違って。」
「創志嫌われてるな。何かしたのか。」
「さあ、僕には分からないよ。多分相性が悪いんじゃないかな。それより蹴斗マヤを頼むよ。マヤ、蹴斗が部活終えるまでおとなしくしてなよ。」
そういって、苦笑しながら足早にそこから離れた。
同月18日 自宅
メールか…蹴斗からだ。『すげえシュートを打てるようになった』か、うまくいってるみたいだが、2日で物にしたのかよ。
「キー、明日から蹴斗と一緒に第2層に行って良いか。」
携帯を閉じて聞いてみる。
『私からも提案しようと思っていました。マヤとの協議の結果第2層へ打って出て、核を破壊または敵強化の遅延をしたいですね。第1層での活躍で敵の進化も遅いですから。それにしても、蹴斗さんも成長スピード早いですね。』
「目標が具体的だし、身体能力も高いからね。明日が、楽しみだな。敵はシンクの他に居るの?」
『シンクシリーズが進化したシフェルがいます。最初に戦った的付きがシフェルです。シンクが巨大化した物と思ってください。』
「何だ、それなら、そんなに強くないのか。つまんないの。」
期待外れだな。
『だから、油断しないで下さい。あの時のシフェルは進化したてで、力をうまく使えてなかったから簡単に倒せたのです。そうでなければ、第2層にもう入ってますよ。』
「それなら良いけど。」
強い敵と戦えばもっと強くなれる。蹴斗にも負けないように頑張らないとな。
同月19日 住宅街異界第2層
第1層よりすこし灰暗い感じがする。
「創志、遅れてすまん。午前練が長引いてな。」
パズルの形のマヤと一緒に蹴斗が姿を現した。
「いや、僕も今来たところだから。それより、どうする。二手に分かれて探すの。」
「いや、今日はタッグアビリティの練習をしてもらうぞ。」
「タッグ…協力して出す技か。マヤナイスだ。よし、創志やるぞ。」
蹴斗が目をキラキラさせながらこっちを見てくる。
協力技かちょっとだけ興味があるな。たぶん、自分がパス出して蹴斗が決める形になるんだろうなと思っていたら、案の定それだった。
「蹴斗のエネルギー弾をパスで繋ぐ時に、徐々にエネルギーを加えていき、最後に属性を付加して決めるのだ。分かったか。」
分かったと返して住宅街の広場で練習する。
練習してみると結構難しい。まず、ダイレクトで返さないといけない。サッカーボールより速く、蹴る時の抵抗が大きくなかなか思う方向にいかない。最初は返すことすらできなかったが、なんとか返せる程度にはなってきた。
「まだまだだな、お前。ふっふっふ、どうだ。蹴斗の成長は。このマヤの凄さ思い知ったか。」
何故お前が得意げなんだ。
「こらマヤそんな言い方したら駄目だぞ。創志、ちょっと休憩するか。」
「はぁはぁ…」
息が上がって言い返せない。こんな筈じゃなかった。
『スタイルをストライカーに変えてください。そうすれば、返すことができます。』
キーのアドバイスがありがたい。呼吸が整うのを待って、styleを変更する。
「styleを変えたか。最初からストライカーにしておけばいいものを…蹴斗、再開するぞ。エネルギーを加えるのは、蹴斗だけでやるのだ。」
「大丈夫か、創志。ブランクがあるから難しいんじゃないか。」
「大丈夫、大丈夫だ。続きをしよう。」
蹴斗の目から逃げるように距離を取った。
蹴斗はそんな眼で見てない。大丈夫、まだやれる。スタイルを変えたんだ。次はうまくいく。こんな事で躓けない。深呼吸して蹴斗を呼ぼうとした。
「的が来たようだ。1回勝負だ、1発で決められると格好良いな。」
マヤがそう言ったので、広場の入り口を見ると最初に戦った的の塊が居た。的は塊の足元に1つ。
「創志、準備は良いか。始めるぞ。」
蹴斗の足元に白い光が集まり始める。光が球体になり、蹴斗がこっちに蹴ってきた。
1回目を無難に返す。やれると思った。
2回目少し重かったが、正確に返せた。
「これで、最後だ創志。」蹴斗とアイコンタクトを取る。
3回目を……ミスった。
重心より下を蹴ったため力ない球がフラフラあがる。
蹴斗は2ステップ取って左、右の順に足を上げ、オーバーヘッドの体勢を取る。
「創志ナイスボール。いくぜ、ファイヤーーーシュート!!!!」
違う俺が送りたかったボールはそんなんじゃない。
炎をまとった弾丸が敵を穿つ。敵は上下に伸縮した後動かなくなった。自分の沈んでいく気持ちと反対に、技の成功に喜ぶ蹴斗とマヤ。自分はたぶん冷めた眼で見てる。
『まだ終わっていません。気を抜かないで下さい。』
「うっ」
キーの呼びかけで我に返って敵を見る。弓…かな頭から生えてる。
蹴斗を見ると肩に矢が刺さっていて、顔色も悪くなってきている。
『敵進化を確認シフェルから、W級オープです。』
弓の周りが崩れていく……そこからボロボロのローブを身に付け無表情な天使があらわれた。純白の羽を震わせ飛び立つ。天使は蹴斗をじっと見ている。
「状態毒…まずいな。お前、撤退するぞ。」
マヤが言った瞬間、天使が弓に矢を番える。
「Style change Gunner」
キーの正気ですかという声を聞きながら、銃で天使を撃つ。天使は初めてここに自分が居ることに気付いたようだ。無表情から怒った表情に変わり自分を睨みつけてくる。蹴斗は顔面蒼白で呻いている。
「マヤ…蹴斗を頼むよ。僕は…俺はアレを倒してから行くよ。キー、サポート頼むよ。」
『分かりました。蹴斗さんが離脱するまで時間を稼ぎましょう。』
俺は首を振って答えた。
「倒すっていっただろ。」
『何をむきになっているのですか。状態は憤怒ではないはずなのに』
天使は弓に矢を番え始め、自分はもう1丁召喚し両手に構える。
「マヤ早くしてくれ。」
「蹴斗はマヤに任せろ。お前、無理はするなよ。」
天使が矢を放つと同時に乱射する。何発か矢に当って撃ち落とすことに成功した。ふと隣を見ると蹴斗達はいなかった。エスケープに成功したようだ。銃をアサルトライフルに変更し連射しつつ路地に出る。
『危険とこちらが判断した場合強制転送を発動させます。拒否は許しません。』
路地に出た瞬間ダッシュで距離を取りつつ作戦を練る。
「分かった。キー敵をマップに表示することはできるか。」
『100m以内なら可能ですが、何をするんですか。』
「狙撃する。あの銃で建物越しに撃って落ちた所を狩る。条件に合う建物を探してくれ。」
『建物越しに撃つことに疑問を感じますが、了解しました。検索します。』
後ろを確認すると山なりに矢が飛んできていたが、かわす。気付いてなければ当っている。マップを確認しても表示されてない。敵の姿が確認できた。150から180mくらい離れている。敵が番え放つと角に隠れてよける。
敵との距離は縮まっていく。牽制できる距離に敵が来た。撃っては隠れるを繰り返す。
『可能なポイントをマップに表しました。実行は任せます。』
マップを確認する。2番目に近いところに牽制後入り込む。
「キー、敵の様子分かるか。」2階に上がりつつ質問する。
『角を曲がった後貴方を探しています。1軒1軒周りを回って確認しています。』
アンチマテリアルライフルを召喚し準備する。
「敵は頭悪いみたいだな。おかげで作戦道理いきそうだ。敵の映像はだせないの。」
『頭は冷えてきたようですね。表示しますが、まだこの効率が悪い作戦を実行するんですか。』
片膝をつく射撃体勢をとる。
「準備できたし良いかなと思って。」
マップに表示された外の映像を見ながら答える。後1軒ほどか。敵はイライラしている。もう少しだ。
『貴方は何故そこまでして戦おうとするのですか』急にキーに聞かれた。
「強くなると約束したから…奇跡を起こせる位に。誰との約束かは覚えてないが・・・もう敵に集中するから話すのは止めだ。」
敵がこの家の周りを回り始める。
グルグルと蝿のようにうっとうしい。速く射線上に来い。
もうちょっと……揃った。引き金を引くと肩に衝撃が走る。
弾は薄い壁を突き抜けて、敵の右手に当たりそのまま右羽根ごと消し飛ばす。羽根を失い飛べなくなった敵は、屋根をバウンドしながら落ちていく。
「Style change Samurai」スタイルを替え、ひびが入った壁を破壊して追いかける。屋根を蹴って降りて行くと、敵が落とした弓を拾おうと体を引き摺っていた。上から刀で上半身を地面に刺し止めても、体が裂けるにも関わらず弓に近付こうとする。もう1本の刀で左手を斬り飛ばす。
「お前の目的はなんだ」
敵の天使は己の体液で紫色に汚れつつ無表情な顔をこちらに向けず、ただ弓のほうを見ている。
「答えられないか」そういって首を刎ねた。
終わった思っていると、『まだ反応があります。気を付けてください。』
敵がまだ動いていた。両肩を交互に動かし弓へと確実に迫っていく。急いで弓を蹴飛ばし、さらに踏み折った。
『反応消失を確認。帰還しましょう。』
帰還すると蹴斗が戻ってこようとしていた。一安心だ。




