第86話 泣かせちゃった
10kUAありがとうございます!最近週2投稿があんまり出来ておりませんが、なるべく齟齬が出ないよう書いておりますので温かい目で見守ってやってください。
起きてから少し話をして再び眠りについた。寒い季節にふかふかお布団は優しすぎる。姉二人もこの部屋に寝泊まりしてるみたいで、体が冷えないように毎日俺の布団に入り込んで一緒に寝てたらしい。だいたいいつもと同じだな。そして翌日、栄養補給が出来て不調が若干消えたので、早速あーちゃんの後を追ってユグディシアの王都を目指して出発することにした。
降雪中の行軍は部隊が雪に足を取られないよう、先頭を行く火魔法使いが光源ついでに火の玉を浮かせながら進む。それによって、もしも吹雪いても列の先頭を見失わずに済むし、足元も雪が溶けて進みやすくなるらしい。時間かかりすぎると凍るけど。それと、冬の間は旅をする人達の護衛で火魔法使いはかなり重宝されるらしく、こういう場面や暖を取ったり調理に使ったりと、薪拾いに時間を割かなくていいから便利なのだそうだ。うちにも一人欲しい。あーちゃんはね、国家元首だからたぶんこの一件が片付いたら離脱するからね⋯⋯。
そしてどうやらグランディールの叛乱は寝てる間に収まったようで、今は追加の人員が送り込まれてきてる。その人達に都市を任せれば後は大丈夫っぽいので、俺達はある程度の人数を連れて大名行列の如く街道を歩く。中央は勿論おんぶされた俺氏。周りの兵士の温かい眼差しに羞恥心を覚えながらしばらく進んでいると、道程の途中にあるという殆どの人が寄ることになる村が見えてきた。
「ここは⋯⋯まぁ制圧済みか。陣地確保のために兵士を残していってるみたいだし話を聞いてみっか。すいませーん」
「ハッ!御使様御一行ですね?女王様から御伝言を言付かっております。『もしも可能であれば、お願いする』とのことです。それと、こちらを」
村の入口に立っていた兵士はそう言うと一枚の紙を手渡してきた。
「これは村民の名簿?名前の横に印が付けてあるわね~⋯⋯⋯」
謎の紙を読んでいたティナの顔が真顔のまま固まってしまった。名簿に何が記されてあるのだろうか、背が違いすぎる俺には見ることも出来ない。姉達二人でボショボショ話し込んでるし後で教えてもらおう。
今の俺がすべきこと。それは⋯⋯特に無いな!いつもなら深く考えずに思ったことをするんだけど、前回ふらっと出ていって痛い目に遭ってるから大人しく案内された近くの民家の中でお休みしておこう。この道中、なんかお付の人みたいな立ち位置の女性兵士が数人傍に居る。この人達は俺が手持ち無沙汰だったりすると色々出してくれるんだよな。
どうやら長時間寝てる間に編成された新しい部隊みたいで、全員が俺が蘇生もしくは纏めて治療した人達だ。恩義があるから志願したらしく、救世主(笑)であり神の愛し子(爆)の俺に不自由させないように近くに侍るのが目的らしい。家の中に入ると、早速綺麗な椅子を収納から出して更にひざ掛けをファサッとかけてくれる。そして流れるように飴玉を差し出してくる。トドメに雪が降ってて寒いから暖炉も準備してくれた。うーむ、至れり尽くせりだ。まったり。
「姫様、御加減はいかがですか?」
「う、うん⋯⋯ありがとう、大丈夫だよ」
「姫様、お茶をお入れしましょう」
そして俺がお姫様扱いされている。やめてぇ⋯⋯妹になるのはかなり慣れてきたっつーかほぼ平常運転だからいいんだけどそっちは未経験だから!っていうか姫って何!?王族になった覚えはないよ!なるつもりもないけど、もしかしてこうやって甘やかしてるのはいざという時の予行演習的な⋯⋯?くっ、このまま行けば神扱いでいずれ近い立場になるだろうから、一部諦めてこの温かい部屋でぬくぬくしておくか。外から何かを確認してきた姉達が帰ってきたしな。
「おお温かい⋯⋯」
「あ、おかえり~」
「はいただいま。ざっと見てきた感じ、犠牲者の亡骸は一箇所に集められててすぐに蘇生出来るようになってたわよ。さっきの紙は遺体の損傷度合いとか、本人の確認が出来ない人、行方不明扱いになってる人達のことが書かれてたわ。たぶんアールランド様が気を利かせて、どれくらいなら効果適用内なのか調べる機会でもくれたんじゃないかしら~?これとか~⋯⋯」
色々説明をしながら手に持っていた紙を俺にも見せながら説明してくれる。けど、これマジ?注釈には割と蘇生魔法でも微妙なラインのが並んでるな。半ば実験のような⋯⋯それこそ『右手以外遺失して残っていない』とか『装飾品として剥がされた皮膚の一部』だとか。一番ヤバいのが『消化不良で肥溜めの中に残っていた溶けた人骨の欠片』だったり。
たしかにその状態でも蘇生ができるなら⋯⋯とは思ってしまうが、逆に生き返った人は「お前うんこだったんだぜ」なんて言われてどう受け止めるんだろうか。前世じゃある程度のコミュニティの中で脱糞をしてしまうと――それもトイレという定められた場所だとしても――うんこマンという不名誉な称号が手に入ることがある。しかしこれはそれをかなり上回る。なんせ自分がそのものだったんだし。
「この状態からでもイケるんだったらもうなんでもありだよな。今のところ死んでから一年以内が制限なんだっけか?」
「うん。こっちだと妖精さんと魂の結び付きが一年くらいするとほどけちゃうみたい」
崩壊前世界だと特に制限はなかった。その辺の人間は妖精を連れてなかったみたいだし、寿命だろうが病死だろうが死ぬ少し前に戻すから、治療や延命が出来れば若干の時間が稼げる。竜の血とか賢者の石みたいな不老になるアイテムがあればそのまま生き続けることだって出来ただろう。⋯⋯ただ、その地域一体の龍脈が枯れるので大多数の恨みを買うのは避けられなかっただろうが。
ここの場合は世界樹という特大な魔素を空気中に放出する機構が身近にある上に、それをかき集めれる俺だから特に深刻な影響無く出来るってだけの話だ。普通の人間にはオススメできない。それこそ聖女だとか勇者みたいな存在自体が規格外な連中なら、また話は違うんだろうけど。
そんなチートな魔法だから本当に神に許された人間しか使えなかったって訳だね。そう考えると今代の英雄枠なのかね、俺って。⋯⋯ガラじゃないな!のんびり姉達と旅しながら飯食うだけで精一杯だ。
ちなみに妖精との結び付きが解ける⋯というより大気に霧散してしまった妖精は、そんな状態でも契約により故人の魂と強い結び付きがあるが故にお互い引っ張り合いながらこの世に留まっている。それ以上の時間が経ってしまうと妖精は世界樹へと還り、また産まれ直して誰かの元へ向かう為に待機することになる。魂も一緒にそこへ回収されて漂白された後にまた輪廻に加わるって感じらしい。
あと、未練があったりすると時間がかかったりと次の生を受けるまでに個人差が出る。⋯⋯子供を遺して逝った親とかね。魔法の知識を引き出しただけでこんな世界のブラックボックスみたいな情報が頭にインストールされるなんて、世界樹への接続さんやべぇな。人間の頭なら発狂するだろう。
「ふむ、それならエルフの人達は全員救えそうだけど⋯⋯本当に良いのか?」
「今更良いもなにもないよ。ここに居る人たちだって、この村の出身がいるって話だし。他の人が生き返ったのにここだけダメだなんて、そんな事言えない。でしょ?」
そう俺のお世話をしてくれていた女性兵士達に話を振ってみる。さっき姉が帰ってくる前にボソボソ会話してたのが聞こえてたんだな。何人かはここから逃げた時に戦うため兵士になったって。
「わ、私はここに年老いた両親を残してまして、避難も出来ず犠牲になったと聞きました⋯⋯」
それを悲しそうに話す、まだ少女とも言える顔つきの兵士は他の人にも顔を向ける。
「あの娘は幼馴染で、両親と死別し我が家に引き取られた後、私と共に育てられました。二人共僅かながら魔法の才能があったので兵に志願し、今回の戦に参加させていただきました。力が足りず姫様に救われましたが、国を守るため戦えた私達のことはどうでもいいのです。しかし、何の抵抗もできず、足腰が弱って死ぬしか無かった両親を思うと不憫でならず⋯⋯」
話をしていくうちに彼女の頬を伝い、涙がぽつりぽつりと床に染みを作っていく。⋯⋯どこかで聞いた話だな。やっぱドコも変わらないもんなんだねぇ、狭い村社会という特異性なのか子供は皆で育てる物って教えでもあるのか?そんな顔されたら、救わないわけにはいかないじゃんかよ⋯⋯。
「だいじょうぶだよ、大丈夫。ちゃんと、みんな生き返らせてあげるから」
そう言って、安心させるように兵士の手を握ってやる。すると感情が伝播したのか姉達以外の全員が啜り泣き始めた。⋯⋯いずれあの人達の故郷にも行って全員蘇生させる必要があるな。蘇生の結果云々では過去を遡って間違いなく今回の一件で死んだ人達の遺体を、一部であろうと全て集めて個別にも蘇生してあげないと。あのクソ野郎のせいで泣く人なんか見たくないからな。
「お、お前また後光が⋯⋯」
「ふぁっ!?また!?」
「うーんどういう原理でソレが出てるのか気になるわねぇ」
ふむ、何やら神オーラが出てるらしいが今回は逆に利用してやろう。後光を背負ったまま奇跡を成し遂げれば俺の名声も鰻登りだろ、それはそのままこの後の動きやすさにも直結する。具体的には話を知って引き込もうとするあんぽんたん共を躱しやすくなる。って周りの人達が号泣し始めた!?いかん、なんか空気変わってきたな!さっさとやることやろう!
そうして我々は遺体が集めてある一室に移動したのであった。途中見かけた人達が俺を拝んでた気がするけど気にしない。しないったらしない。人を掻き分けて辿り着いた少しボロっちいけど納屋よりは立派な集会所には、身元不明者含め三十一名分の亡骸が横たわったり一部が布に巻かれて安置されていた。
この村の規模的には犠牲が少ない方だとは思うけど、やっぱ間に合わなかったり土地を捨てれない人がこんだけいたんだな。天災ならまだしも元凶が元凶だ。こんなくだらない理由で死んで良いはずがない。
さて、エネルギー体に⋯⋯この呼称も言い辛いな。今後はトランス状態とでも名付けるか?では、トランス!オーン!⋯⋯うわ。うわぁ。後光が出た状態でトランスしたら更に光り輝いて頭の上にヘイローまで出現した。直ぐ側に鏡があるから分かる。
まぁ自分が神の類型だと示す後光が出た状態で意識を切り替えればそうもなるな。純白の翼と光を背負って頭上に天使の輪とかどう見ても神の使いです。本当にありがとうございました。
この集会所なら半径数m位で済むな。それでは中央に移動して。
「世界樹への接続、彼方より来たる以下省略、死者蘇生」
前回と同じように周囲の魔素を吸い上げ魔力に変換、更に魔法陣の上で白いスパークが発生して亡骸を包み込む。見る限り全ての人が形を取り戻しつつあるな。例のうんこだった人も骨片を起点に体が作り直されてる。本当にヤバいなこの魔法は⋯⋯細切れになった死体に使った場合でも一部があれば蘇生が可能ってことか。
そして即トランスオフ!この間僅か十数秒である。事前にぶっ倒れる可能性があると伝えておいた姉が体を支えてくれてるのが嬉しい。俺の読みが当たってれば倒れる時間は十五分くらいなものだろう。ではおやすみなさい⋯⋯。




