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TSした妖精幼女は異世界で家族が出来る  作者: えもぬえ


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第65話 死の歌(1) ※挿絵あり

()はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」


 突然妹が絶叫した。フラフラとどこかに歩いていって、一人では危ないからと後を追っていったその先には目に入れるのも憚られる惨状が広がっていたのだ。悲鳴くらいは上げるだろうが、急いで駆け寄って顔を手で覆って視界を塞いでやっているのに一向に収まる様子がない。


 叫び声はどんどん大きくなってきて耳が痛くなってくる。脳に直接叩き込まれるような叫びが目眩に似た症状を引き起こしているようだ。余りにも大きい叫びに頭痛がしてくるが、落ち着くまで妹をここに居させる訳にもいかない。抱き抱えてでも、どこか休める場所に移動しなければ。


「アリス、どうしたんだ!?落ち着け!正気に戻れよ!」



挿絵(By みてみん)



「あぁああアアアアアアァァァァァ!!!!」


 その瞬間、視界が目まぐるしく回転して浮遊感に襲われた後に体に鈍痛が走った。どうやら何者かによって吹き飛ばされたらしい。アリスとはかなり距離が開いてしまったが、這ってでも近づいて正気に戻さないと。あの大声では周りに敵が残っていた場合呼び寄せてしまう危険がある。


「クリス、一体何があったの!?」


「アリスの様子がおかしい!酷い死体があって、それを見たらこうなったみたいだ!」


 痛む体を抑えながら立ち上がり落ち着いて辺りを見ると、妹を中心に小屋や農具が吹き飛ばされて更地になっていた。私がさっきふっ飛ばされたのは衝撃波の様な物で、それが妹を中心に発生したらしい。周りの兵士達も異変を察知したのか集まってきている。


『今すぐあの子を止めなさい!』


 場に似つかわしくない美しい声が響いた。ふと、横を見るとティナの他に女性がもう一人直ぐ側に()()()()()。その女性は儚げなこの世のものとは思えない整った顔に、流れるような長い銀髪、慎ましいが美とはかくあるべしというのを体現したような体つきを一枚のベールで覆っている。


『あんた!アリスちゃんのお姉さんね!?ちゃんと見てないとダメでしょうが!!』


「えっ!?あ、ごめんなさい」


 なぜか怒られた。目を離したのは確かなので怒られるのも已む無しだが、この女性は誰なのだろうか?ここまで同行してきた一団にこんなに美しい人は居なかったと思うし、どこかで見た覚えがある。いや、見覚えがあるというより、そっくりなのだ。そう、アリスが育ったらこうなるだろうなというイメージと重なるくらいに。


「あの、アンタは?」


『私?ノールジュよ。あの子がお世話になってるようで』


 謎の美人は女神だった。


「あ、貴方様が女神ノールジュ様なのですか?」


 いつの間にか後ろまで来ていたアールランド様も狼狽えているがしょうがない。妹にさえ平伏するくらいの勢いだったのだから、急に女神がポンと出てきたら思考が止まることもあるだろう。


『ええそうよ。ってーかそんな自己紹介とかしてる場合じゃないのよ!あの子を早く止めないととんでも無い事になるんだから!!』


「とんでもないこと、というと?」


 ティナが問いただす。家族として放って置けないのだろう、私以上に心配そうな面持ちで居た堪れない。


『死の歌の発動準備に入ってるわ』


「「はっ?」」


 私とティナの二人ともが驚愕した。以前アリスに今使える一番強い魔法とはなにか、というのを聞いたことがある。曰く、敵味方関係なく範囲内の全てを確実に死に至らしめる凶悪な即死魔法だと。そんな物が使われようとしている事実に戦慄する。


「あ、あのう、その死の歌というのは?」


 まだ付き合いが浅いアールランド様が聞き返す。無理もない、そんな物騒な代物は私達だって気軽に話す気になれない。知らないでいたほうがマシな部類の物だ。


『耐性無視の広範囲絶対即死魔法よ。いざという時の切り札として使えるようにしておいたんだけど、今まで使う機会がなくてよかったわ』


「そ、そんなものがあるのですか!?ならその範囲外に退避して収まるのを待てばよろしいのでは?」


『それはダメ。通常ならその対処で問題ないんだけど今の暴走したアリスちゃんは普通では考えられない超高出力で放とうとしているわ。その被害は考えたくもないわね』


「もしも発動した場合は⋯⋯どうなるんだ?」


『そうね⋯⋯⋯最悪、真空崩壊に似たようなことが起きるわ』


 しん⋯⋯?聞き慣れない単語が出てきて全員混乱している。神話の現象なのだろうか、集まってきた兵士達も女神ノールジュ様の声に耳を傾けながらも困惑している。


「あの、それはどういった物なのですか?」


『んー、簡単に言うとね。宇宙が⋯あ、宇宙って分かる?あの上の星や太陽が浮いてる空の向こうのことなんだけど』


 それくらいは分かる。占星術だとかで使うと聞いたことがある。だが、それがなんの関係があるのだろうか。


()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


「―――え?」


 それは誰が発した言葉だろうか。いきなり叩きつけられたあまりにも大きい被害の予測結果に、誰もが言葉を失っている。何もしなければ世界が滅ぶと。それも自分達のだけ、ではなく、文字通り全てが。


『本来はただの即死魔法なんだけど神力を混ぜた上に辺りの魔素も限界までマナに変換して発動するみたい。恐らく記憶が蘇った影響だわ、自分も世界もどこまでも曖昧になって一緒に死のうとしている』


「記憶が⋯⋯蘇った?アレを見て、なのか?」


 あの妊婦が殺された凄惨な現場で甦る記憶なのだとしたら、それは。


『そうよ。あの子は以前、目の前であれよりよっぽど酷い物を見て、生きることに絶望した。だから記憶が蘇った今、もう生きたいとは思えずに一瞬で自死に傾いた。それこそ周りを巻き込んででも速やかに死にたいと思うくらいの絶望で、ね』


 その場に居た全員が絶句した。少し離れた所に剥き出しになっている無惨な死体。泣き叫んでいる妹が、あれよりも酷い物を見たのだと女神が言い放った。それは何より重く、事実だと認識させられたから。


 それでも止めなければならない。あの子が助けを求めるように泣いているのが我慢ならない。何より妹に世界を破滅させた、なんて恐ろしい業を背負わせる訳にはいかないね。

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緊迫した場面のはずなのにのんびり会話してて草
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