第64話 視ちゃった
後半少しグロ注意かも。具体的には呪怨のこれ、女の子ですねの辺りに似てるかも
「お待ちくだされ母上ェー!せめて共を!兵を随伴させて!」
エルフの国ユグディシアの女王が長子、ディーロン・エスムレント・シイル・ユグディシアは叫んでいた。怒りに身を任せ単身走り出した母親を止めるために。
「あァ!?そんなもんいらんわ!この御方達はここに居る兵が束になっても敵わん腕前じゃ!」
なんと。そのような超級の戦力を借り受けて来られたのか!流石は我が国を率いる母。しかし形式上だけであるが我らも協力体制を取れるようにしておかねば後々下からの圧がマズイことになる。ディーロンはそう思案し、なんとか口を回らせる。
「そっそれは重畳!ですが誰も付けないというのも問題がありすぎます、母上はお一人で着替えすらできんでしょう!?」
その一言でようやくアールランドは足を止めた。伊達に数十年王族をやっていないのだ、着替えから風呂の世話まで全て従者にやってもらっている彼女は、自分一人でやれることがあまりにも少ない。貴族なのでやる必要もないし、それによってメイド達が仕事を貰えているのだから納得はしているのだが。
ちなみに最近はティナが喜んでアリスと合わせて一緒にお世話している。幼児スキーは中身がなんであれ発揮されるらしい。建前としては『借りてきた護衛に自分の身の回りの世話までさせる』状況に幾らかの疑念があったのか、少し冷静になりその進言を受け入れることにした。
「チッ⋯⋯しょうがないのう。しばし時間をくれてやる、はよう共の選出をせい」
「女王様って割とぼーくんなの?」
「いや、そういうわけではないんじゃ。このナリをしておると舐められる事もよくあるからの、常に威圧して傲岸不遜な振る舞いを心掛けておるのじゃ」
実際体の成長が止まって逆に退行し始めてからは、侮られることが一度や二度ではなかった。子供が懐いてくるのは愛される女王ムーブが出来てまだ許せるのだが、どこの馬の骨とも知らない貴族の三男坊なんかが鼻につく物言いで口説こうとしてきたこともある。その時はぶん殴って追い返したが。
「ふぅん、ちいさいって大変だよねぇ。わかる、わかるよ⋯⋯」
アリスは感慨深そうに何度も頷く。推定元男性の彼女もホームであるグランディールをうろつくだけで庇護欲に駆られた王都民が食べ物を差し出してくるので身に沁みている。前世から貧乏舌だったのか、転生した新たな体で味蕾が育っていないのか、口にする物の大抵が美味しいと感じてしまう味覚もそれに一役買っている。ぶっちゃけ塩味か甘味があれば大体おいしい。
しかし悲しいかな二人の間には意識の行き違いがあった。方や幼女化を半ば受け入れ甘やかされる環境と与えられる供物を貪り、方や幼くなっていく体に悩みつつ身分から自分の在り方を変えるわけにはいかず威厳を保つため虚勢を張る。
つまりガチロリ(偽)とツンロリ(偽)であった。
いずれ現れるであろう、マトモなロリっ子の登場が待たれる所である。
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数多くの兵士や女王様のお世話や炊き出しを行うバトルメイドエルフさん達を二十人ほどゾロゾロ連れて、俺達は開拓村へと出発した。教会の連中はよほど急いでいるのか雑に戦闘しながら進んでいるようで、道中のそこらに亜人の死体と、被害者の食残しと思われる腕や足の一部が転がっている。グロい⋯⋯。来るんじゃなかった。
そう言えばこっちに転生してから人間の死体――現存しているのは体の一部だけではあるが本体は間違いなく絶命しているであろう損壊具合――を見たのは初めてかも知れない。今までどれだけ姉達に過保護に守っていて貰えたかよく分かる。目に入っていなかっただけで、この世界の本質はこっちなのだな、と認識を切り替えていく必要があるな。
「どうした?青い顔して」
姉が俺の事を気にかけてくれたのか、具合を聞いてくる。
「ちょっときもちわるいかも⋯⋯吐いたらごめんね、お姉ちゃん」
「気にすんなよ、私も初めて人が死んだのを見た時はそんなだったさ。そう言えば歳も同じくらいだったかな?ソウルイーターにやられた村人がいっぱい居てさ、弔う人手も足りなかったから私も手伝ったんだよ。そのままじゃ送れないってんで綺麗な服を着せたり、顔だけでも綺麗に見えるように直してあげたり、さ」
思ったより壮絶な過去だった。そういやかつてのガレラ村は常に死と隣り合わせだったな。だからクリスもティナも肝っ玉が据わってるのかもしれない、二人を見習って多少のグロ画像じゃ動揺しないようにしなければ⋯⋯。
「あの時は大変だったわよね~。私なんかその頃から魔法が使えたから怪我人の治療とか、遺体を清めるための水を出すのに毎日限界まで魔力を絞り出してたわよ。そのお陰で十歳になる頃には既に限界近くまで鍛え上げられてたんだけどさ~。それで飛び級で司祭になって、二人で村を飛び出してもそれなりの生活を送れたわけだし」
出るわ出るわ姉達の苦労話。普段は二人共飄々としているから気にしてないのかと思ってたけど、よく考えると故郷が壊滅の危機で逃げ出してきたわけだよな。今度ゆっくりとケアさせていただこう。
姉達のことを考えながら移動していると、日が落ちる前には村に着いた。
しかし自分達の移動する音以外には一切の音がなく、辺りは静寂に包まれている。ここに住んでいる村人はまだしも、それを救いに来た迷惑な教会の者達はどこに行ったのだろうか。
「これは⋯⋯遅かった、ってことなのかしらね」
「そうだな⋯⋯さっきから特定を飛ばし続けてるけど、動く反応はない」
「救えなんだか⋯⋯⋯総員警戒態勢を敷け。部隊を分け辺りの探索と生存者の捜索を行え。残った者達は埋葬と情報収集じゃ!」
どうやら、村人も、教会の人も、全滅してしまったか連れて行かれてしまったらしい。村の中央辺りは凄惨極まる状況みたいで俺は見ないほうがいいと顔を隠されてしまった。周りの兵士が言う言葉を魔法で拾って聞いてみる内に、遊びのように嬲り殺されたり生きたまま喰われた様な状況の死体が多く、それらが山と積まれているみたいだ。
たしかにそんな物は見たくない。完全に記憶がある状況ではないがそんなの前世でも見た覚えはない。少なくとも思い出せる状況にはないし、あったとしても思い出したくはない。姉達が走り回りながら索敵していたが、ひとまず周りに敵影は無く安全が確保されたので中央広場を避けて、小屋が乱立されている農具置き場の様な場所に来てみた。
足元に赤い液体が流れていて
ミルナ
その先に続いて居たので
ヤメロ
目で追って
ニゲロ
妊婦の腹が引き裂かれ
オレハ
胎児が引き摺り出されて
アタシハ
木に叩きつけられて死んでいた
「アリス!見ちゃ駄目だ!こっちにこい!」
オレハコレヲシッテイル
知らない!
オレハドコカデミタコトガアル
わからない!
オレハコレヲタシカニオボエテイル
おぼえてない!
オレハアノトキナニモデキナカッタ
なにを!?
オレハアノヒトガシンダノニナニモ
あの人って誰!?
オレハメノマエデワガコヲウバワレタノニ
あたしに子供なんて居ない!
オレハ
あたしは
オレハ
俺は
「俺はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!」




