第60話 揃っちゃった
女王様と一緒に赤い妖精がおにぎりを食べてたけどたぶん火属性だよなあれ。やったぜ、ついにうちの勢力にも高火力広範囲の魔法使いが!と思ってたけどエレノアと違って替えが効かないお立場の方なので前線には出せないかな⋯残念。
「いや、出るぞ?貴族が戦場に居ればそれだけで士気が上がるでな。それが王族、それも国の最高指導者なら言う他無いくらいじゃの。よって決戦の王都奪還戦があるとしたら間違いなく妾もそこにおる」
なるほどなぁ、カリスマ値が高ければ軍隊に補正がかかるようなものか。俺によって強化された強大な一撃でもって有効打が見込めれば士気も鰻登りって感じだな!
「それにしてもこのような方法で他人の魔力を底上げできるとは、さすがは神の御業じゃのう。アリスちゃんが居ればエンペラーも倒せるじゃろうし百人力じゃ!」
「それなんだけどね、あたしだけだとあんまり強くないんだ」
「そうなのかえ?」
俺はなぜか身体強化が使えず、周りの被害がひどいので高レベルの音魔法も気軽には使えない。一応強力な個に対してはクリスに憑依して制限時間付きだが俺の魔力をそっくり使えるようになるので、エンペラーを仕留める事自体は出来るであろうと話した。
「となると問題はそいつが居る所まで私とアリスの消耗を抑えながらの戦闘になる、ってことか」
ダンジョンコアに注ぎ込んだ感じからすると、俺の魔力は途方もないくらいあるっぽいけど、他の人と連携しないと難しいのは確かなのでここは黙っていよう。俺達二人で敵陣に斬り込んで大将首チェストしてこいとか言われても嫌だしね。
「そうね~。ソウルイーターの時みたいに援護があって邪魔も入らないくらいなら楽だろうけど、こっちが攻め手だと何が起きるか分からないわよね」
「ふーむ⋯⋯そこは飽く迄妖精という存在故仕方なしか。それでもこうして光明が差したのじゃ、祖国から民が避難完了するまでまだ時間もあろうし焦りは禁物じゃな」
「教会は待ってくれなさそうですがね」
「なんじゃと?教会には何も要請しておらぬぞ」
「だからですよ。冒険者ギルドや国といがみ合っているここの支部が、本部大聖堂があるそちらから救援要請が無かったことで遺憾の意を示しているんです。今日も信徒を連れて勝手に救済に行くだのなんだの机上の空論を一日中聞かされてまして⋯⋯」
ティナの方も面倒なことになってるな!次は教会がなんか問題行動しようとしてんのか?むしろ今まで貴族が問題起こしまくってたから目立たなかった感じはあるかもしれない。奴らも人攫いとまでは行かないけど子供を森送りにしてるって噂だし。
「ううむ、教会なんぞに助けを求めた所でのう。奴らはあれじゃ、頭でっかちのもやしが一袋ナンボで売られてるようなもんじゃ。そんなのを奴らに解き放ってみい、一瞬で餌と苗床の提供会場に早変わりじゃ。そもそも体力不足でこっちまで無事にたどり着けるかも知れぬからな、ここも人手が足りぬと聞いておるし、兵をそちらの護衛に回すのも憚られたので教会には何も言っておらぬ」
辛辣ゥ!
そうして会議?みたいな雑談は終わり、その日はエレノアが居なくなってから久々に四人で眠りについた。あいつも大変だろうな、これからエルフの難民が大量に来るだろうし、孤児院の院長なんてやってるから大勢子供が押し寄せて⋯⋯いや、むしろご褒美か。
次の日、あんまりウロウロするのも護衛がしづらいので女王とエレノアの顔合わせの意味もあって孤児院に行くことになった。お、俺が遊びたいわけじゃないんだからね!勘違いしないでよねっ!
「何言ってんだよ、もう着くぞ」
クリスに促されて背中から降りる。どうやら独り言が漏れていたようだ⋯⋯姉成分の補給を中断するのは名残惜しいが、同じくらいの子供におんぶされている所を見られるのはちょっと恥ずかしいので仕方がない。
「おお、今日は家族揃って来たのだな?三人が並んでいる所を見るのは久しいな。おや、そちらの御仁は⋯⋯」
「妾はアールランドじゃ。大きくなられたな、エレオノーラ姫よ」
「まさか⋯⋯女王陛下!?その格好は⋯いや、どうしてこのような所に!」
「ちと訳ありでな、しばらくこちらの冒険者殿に護衛をしてもらうことになったのじゃ。それにしても十年振りくらいかのう」
ん?十年ぶり?ああ、まだ女王様が小さい頃に会ったことでもあるのかな。
「二人は知り合いだったの?」
「そうだ。私がまだ七歳ほどだった頃にな、式典で顔を会わせる機会があったのだよ。あの頃はまだ成人したくらいの容姿だったから分からなかったのさ」
成人したくらいの⋯⋯どっちが?十年前ならエレノアが成人した見た目っていうのはありえんか、そもそも今がそれくらいだし。
「くっくっく、混乱しておるの。妾のようなハイエルフは老化の代わりに幼化していくんじゃ。今年で六十九になる」
「マジで?」
「マジじゃ」
合法ロリかよ。いや、合法のじゃロリかよ!てっきり王族の血筋を重視した教育の結果今みたいになった悲しき幼女かと思ってたのに。ん?っていうことはあれか、この場には中身が大人な幼女が二人もいるわけか⋯⋯だからどこに需要があるんだ。っていうかどういう生態してんだエルフ。これで六十九歳とかあっちに行ったら迂闊にその辺の子供を遊びに誘えないじゃないか!
「そうなんだぁ⋯⋯」
「ハイエルフなんぞそうおるものでもない、気にすることはないぞ」
エレノアに案内してもらって院長室に入って昨日あったことなど色々話した。
「隣国でそのようなことが⋯⋯ここも受け入れ体制を整えて子供らにも言い含めておかねばなりませんな。それよりも、女王陛下も彼女らに選ばれたのですね」
「うむ。妖精にして御使い様であるアリスちゃんに見初められたのは誉れであるな。お主もそうだと聞いておる、これで我らは同胞というわけじゃな!」
二人共揃って誇らしげに笑ってるけど違うからね?面倒事を避けるためにお手製米を食わせただけだからね!勘違いしないでよねっ!
「これだけの戦力が揃うと片手間に国落としくらいできそうだな、今のユグディシアの状況はそう簡単にも行かなさそうだが」
姉が物騒なことを言っているが確かに気軽にLv4魔法を撃てる人材が四人も居ると思うとヤバいな。恐らくここがこの世界で一番安全な場所なんだろう。この布陣で守ってもらえてる女王様は安心だろうな、自分も強くなったし。
「そうだな、だからこそ我らのことを知られるわけには⋯ん?今日は来客が多いな」
話し合いをしていると門のところにある鐘がガランガランと鳴った。俺達みたいなフリーパスは勝手口から自由に入っていいけど公式な訪問があるとあれが鳴るらしい。と言うことは俺達がここにいるのはマズイな?見られるだけでリスクなわけだし。
「すまないが皆は子供達の相手をしていてくれないか、私は客人の応対に行く」
皆で窓から門がある場所を見て、ティナは思いっきり顔をしかめた。
「うげっ、なんでアイツらここに来てんのよ⋯⋯」
「知り合いか?」
「教会の連中よ。昨日の会議でウンザリして休みを入れたってのにまた見るハメになるなんてね」
噂の机上の空論大会をぶちかましてる奴らか。身内でウダウダ言い合ってりゃいいのに何だってここに来たんだ?




