第59話 ねじこんじゃった
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技能という名の呪いに苦しめられてから荷物を回収してきた女王様と合流して、服屋に寄って俺の新しいおべべとこの先必要になるであろう女王様の服を購入した。身を隠すために俺達と一緒にいるのにさっきみたいなヒラヒラキラキラな服だと偉い人が居ますって宣伝してるようなものだしね。
その結果、ちょい安めの町娘スタイルと帽子で耳を隠すコーデになった。王族にこんな扱いは若干失礼かもと思ったけど、本人も着たことがない意匠で選ぶのが楽しいって言ってたし構わないだろう。そしてご飯時。
「そう言えばダンジョンから出てきて国を襲ったっていう魔物はどんなのだい?」
姉が聞く。前みたいにスライムの親玉みたいなやつだと俺は無力だから他がいいなぁ。
「⋯⋯亜人系魔物の大群じゃ。オーガやサイクロプス、トロールにオークなど二本足なら何でも居たように思うの」
亜人系かぁ。人型なら音魔法の相性も良さそうだ。今まで虫やらスライムやら知能が低い敵ばっかりだったから効果が薄かったLv3の状態異常付与系の魔法もその性能を遺憾無く発揮出来るだろう。例えば恐慌の悲鳴とか。これは相手に天敵の叫び声が聞こえたと錯覚させて怯えさせる効果だ。俺と姉で協力して味方に消音の結界を張れば敵にのみ作用するし今回は使えるかも。
「亜人のデカブツが多いのか、腕が鳴るね。対人訓練の成果が見せれそうだ」
「じゃが主な戦力は雑兵扱いのゴブリンじゃ。奴らだけでも相当な数じゃろうが、恐らく首魁はゴブリンエンペラーのようじゃの」
「え"っ」
ゴブ⋯リン⋯⋯?あ、やべ。ナイフを突き立てた感触が蘇ってきてご飯中なのに吐き気が。
「まだトラウマが治ってなかったか⋯」
「どうしたのじゃ?アリスちゃんの顔色が悪いように見えるんじゃが」
「前にちょっとな。無茶させちゃってゴブリンは良い記憶がないんだよ」
「そ、そうか。何があったか知らぬがすまぬことをした⋯⋯許しておくれ」
別に何ということもありません、単なるPTSDです。
こんな幼女がPTSD発症するってなんだよ異世界こえーな!
「大丈夫だよ、気にしないで。でも、今日はちょっとお肉は食べれそうにないかな」
珍しく昼ご飯を残してしまって食堂を後にした。吐き気で胃がムカムカしているので、技能で出したのど飴を食べてリフレッシュしよう。ノンカロリーで色々なフレーバーがある中からミントを選んで舐める。子供の舌にはちょっと刺激が強いけど今はそれくらいがちょうどいい。それから商店街で女王様の滞在に必要なあれやこれやを買い足していき、暗くなってきたので宿屋に戻った。
「おっちゃん一人追加だ」
「お、またかわいい子引っ掛けてきたね」
「馬鹿言え、妹の友達だよ。田舎から出てきて泊まる所がないんだってさ」
「それならサービスしなきゃな!また新しいタレを試作したから食ってくれよ」
女王様はそんな感じの設定になった。子熊亭のおじさんも今ではタレ開発の第一人者みたいな扱いで結構名前が知られてる。俺が知らないこっちの香辛料とかフルーツ何かを混ぜ込んで、味わい深い高級仕様にしたタレを同じ宿屋経営の仲間に卸したりしてるとかなんとか。
弟子が独り立ちして幼女師匠としては感慨深い⋯いやそんなことないか。別にこの人に教えたことって全然ないし。アルバイトとして急遽雇われた時に見て覚えたんだろうな、さすが本職の料理人である。なおトラウマ復活により俺は今日食えないのが確定である。悲しい⋯⋯。
部屋に戻って荷を解いてからリラックスして姉とイチャイチャしたりしていると、扉が開いてティナが帰ってきた。
「たっだい⋯ま?誰その子?」
「この人はエルフの女王陛下だよ。斯々然々で⋯⋯」
お昼にあった顛末を伝えた。やはりというかなんというか俺の正体バレに関してはいい顔をしなかった。知る人が増えるだけリスクも増えるからしょうがない。
「それにしても私も鑑定されたんでしょう?エレオノーラ王女の言では魔力Aはあるらしいのですが驚かれないんですね」
「ふむ⋯?鑑定では魔力Cになっておるぞ。クリスさんも同じじゃったしの」
どういうことだろうか。何かしらの制限がかかってて鑑定が機能していない?それでも俺のステータスは普通に見られたしな。あれから教会に行って新しくボード貰ってないから二人の現在値も分からんし。二回目以降は日本円にして百万位かかるからなるべくやりたくないってのが本音だが。
「人では図り知れない何かがあるのかもしれないわね。アリスちゃんの能力値が見れる教会とギルドにある装置は神が作ったとも言われる古代の遺物なわけだし」
「そうなると鑑定であっても同じ領域にある者でないとそなたら二人の能力値は見れぬわけか⋯⋯妾の魔力はBじゃがこの歳で力量不足を突き付けられるとは思いもよらなんだ」
「それだとなんでアリスのことは一発で分かったんだ?」
たしかにその理論だと俺と同じ能力Sはこの世界に存在しないくらいらしいから引っかかるな。
「恐らく差がありすぎて隠す意味すら無いからじゃろう。人同士ならそれが物差しにはなろうが、神と人では全く意味を為さぬ。それが前もって知れただけでも有難いことじゃ、あの場で何も知らずに無礼を働いておったらと思うと寒気がするわい」
争いは同じレベルでしか発生しないってあれですかね?だとするとおにぎりを食わせて同レベルにすれば姉二人の能力値も見てもらえる可能性がある。
「ねぇ、いっそのことこっちに引っ張り込もうよ。おにぎり食べさせてあげればこっちも楽になるし」
「そりゃいい考えだ。今のところ護衛は問題ないだろうが、その後どこかの勢力にとっ捕まったら話が漏れてやべーワケだしな!」
「なるほど、私達と同じ存在なら鑑定も機能するようになるかもってことね。試してみる価値はありそうね~」
「んん?おにぎり?とやらを食べることと護衛がなんの関係があるんじゃ?」
「まーまー細かいこと考えずにこれをどうぞ!」
俺はティナからお手製おにぎりを受け取り、女王様の口にねじこんだ。この有無を言わさぬ姉妹の連携、我ながら惚れ惚れするね!
「うごぁ!?おふひはひをふふ!⋯⋯ごくん。な、何じゃこの力はー!?見える、見えるぞ!二人の魔力A+という情報が!!ふぉぉー!妾もAになっておるのじゃああ!?」
どうやら女王様の強化も出来たらしい。これで楽も出来るし、恩を売った(押し売り)ことでこの先力になってくれるだろう。まぁ先にエルフの国で起こってる問題を解決してからだろうけどね。でもゴブリン相手は嫌過ぎるのでそこに向かう時の主食は水分とお野菜を多めに食べるようにしよ。また吐きたくないしね。
ちょっと設定とか考えまくってて話が難航しそうだから更新頻度が落ちるかもしれません。
ぐぬぬ、コンスタントに面白い話を投稿出来る人が羨ましい!




