第51話 拐われちゃった ※挿絵あり
調子に乗って挿絵二枚入れちゃったし文字数も普段より千くらい多いしもうめちゃくちゃだよ!
「嬢ちゃん、気をしっかり持てよ!すぐに助けが来るからな!そこの兵士さんもだ!」
「俺は平気だ⋯」
「うぅ⋯⋯」
今俺は地下牢のような所で首輪と手錠で繋がれて、くっ!殺せ!みたいな体勢になっている。どうしてこんなことになった?隣の牢屋には行方不明になっていたマッ⋯⋯じゃねえやダンジョンの前で何回か見かけた顔のダニエルさんらしき人が居て、向かいには割と元気そうに励ましてくれるガンドルフも見えるし、他にも何人か捕まってるらしい。
どうやら気を失っていたみたいだ。ついに拐われたか⋯スライムに続いて今度は人間か?次はゴブリンかもしれないな。気絶している間に殴る蹴るの暴行を受けたようで頬とお腹が結構痛い。こんな可愛い幼女になんてことしやがる。痛みに耐えていると出入口が開いて首謀者と思しき輩達が姿を現した。
「クソッ、何が謹慎だ愚王め!あいつが上に居るから自由に動けん!やはり殺すべきだったか⋯⋯」
ボロゾフだ、こいつに拐われたのか。コツコツと足音を鳴らして俺の前に姿を現してツバを吐きかけてきた。きたなっ、ここから出たら金玉潰してやるから覚悟しとけよ?
「フン、それにしても王城の警備もザルよのう。入浴中に世話をするメイドがこちらの手の者とも知らずに」
あー思い出した。あの後なんやかんやあって城に泊まることになったんだった。それでせっかくだからって一人一人丁寧に洗ってくれるっつーから案内された所で意識がブッツリ切れたんだ。薬か何かかで眠らされたせいか、頭はそれなりに働くけど体が自由に動かない。
「なん、で、あたしを」
「喋るな汚らわしい。お前達の事を教会に問い合わせたら答えてくれたよ、恐ろしい魔力のガキがいるとな。最上の魔力Sとは恐れ入った」
教会も個人情報ガバガバじゃねえか。あの時家族を人質に取ったってのはどこ行ったんだよーティナお姉ちゃんよー!
「だがまぁいい。貴様、妖精なんだってな?」
「⋯⋯」
そこまで知られてしまったか。どうする、ここに居る奴ら全員に聞かれてしまったし、いっそ死の歌でまとめて殺すか?いや、やめておこう。この体調じゃ効果範囲が分からないし、自分の周りの状態も知らないでやるとどこまで被害が広がるかも予想がつかない。
「抵抗しようとしても無駄だぞ?その首輪は魔力を封じる魔道具でな、無理に外そうとすると死ぬ仕掛けだ」
「ぐ⋯すぐ、たすけが、くる、よ⋯⋯」
「ああそうだな!お前の仲間はどうやら相当やるようだが、伯爵家に単身乗り込むような力は持ち合わせておらんだろう!王国軍が動く前に私は他の国へ脱出する。お前を手土産にな!」
魔法も使えないようにされてたか⋯って俺を手土産にだと⋯⋯?一体何をするつもりだこいつ⋯⋯⋯。
「フン、考えが及ばんようだな。貴様には子を産んでもらう。鎖に繋いだまま飼い殺しにし、初潮が来たら直ぐ様孕ませてやろう。人外の力を持った子だ、幼い頃から洗脳してやれば良い戦力になるだろうなぁ」
「は、はら⋯⋯嫌だ、そんなこと、したくない⋯⋯!」
いやじゃいやじゃ、人の子など孕みとうない⋯⋯まさか本当の意味でこのミームを使う日が来るとは。いや、ふざけてる場合じゃねえ!自由を奪われたまま子供を生む機械になるってことだろ!?
普通の人間なら後数年も待てば生理が来るだろうけど、俺って人間じゃないし下手したら成長しないんだぞ!?しかもその間ダンジョン問題が放置されてしまったら次は俺が居ない状態だ。今度こそ王都は滅ぶかもしれない⋯⋯。いや、成長の兆し無しとして殺されるかおもちゃにされる方が早いかも!
「ボロゾフ貴様!それが人間のやることか!」
向かいのガンドルフが代わりに抗議してくれる。俺が人じゃないって聞いてただろうに、結構いい奴なんだな。無事に戻れたらハグの一つもしてやろう。
「黙れゴミめが。連れて行くのはこいつだけだ。貴様らはここを出ることすら叶わん」
「なっ⋯⋯てめぇ!自由になったら覚えてやがれ!」
こんな瀬戸際でチンピラムーブしなくてもいいんですよガンドルフさん!いのちだいじに!
「ほざけ。おい、この屋敷は処分する。こいつらは他の奴隷どもと共に焼け死んでもらおう」
「ハッ」
このクソ野郎は後ろに控えていた奴にそう命令した。それと同時に命じられた人物が地下牢全体に謎の液体を撒き散らし始める。若干粘度があるような音だ、あれは油か⋯?まずい、本気でやる気だ。最早無敵の人状態じゃねえか、何とかして時間を稼がないと証拠や被害者達が全て燃えて灰になってしまう。
そうだ、俺だけを連れて行くなら歩かせるために首輪以外を外すんじゃないか?その時に薬がまだ効いてるフリをして逃げ出そう。いや、フリっつーか実際にまだ効いてるんだけど。ここを出る前に体の機能を取り戻しとかないと。せめて足くらいは動かせるように⋯腰を捻じって、足を揺らして、足首まで⋯⋯よし、たぶんずっこけるだろうけど一瞬走るくらいは出来るだろう。
「おい、鎖を外せ」
来た。手枷が外されて首に繋がる鎖だけになった、今だ!
「やぁぁぁっ!」
こんな時のために鍛えててよかった。目の前の男を思いっきり突き飛ばして逃げ――おっと、衝撃で鍵束ごと落としやがったラッキー!拾って奥の人に渡そう。とりあえず入口は封鎖されてるから奥に行こう。
「何をしている!追え!どうせこの先は行き止まりだ、すぐに捕まえろ!」
走る。走る。躓いて、つんのめって、ジャラジャラ鎖を引き摺りながら奥へ走る。その途中でガンドルフと一緒に居た人を見かけたので鍵を投げ渡して、俺は囮になるべく更に奥へ逃げる。
「くっ⋯⋯」
終点だ。やはり地下室はそう広くはなかった。子供の足で十数秒走るだけで最奥に来てしまった。
「もう追いかけっこは終わりか?クソガキ」
俺が突き飛ばした奴もすぐに起き上がってきたようだな、と言うことはあっちに残っているのはあのゴミ貴族一人だけってことか。
「げぅっ」
体全体に鈍い衝撃が走って壁に叩きつけられた。蹴り飛ばされたのか⋯⋯遅れて体と背中に痛みが走る。
「この、手間かけさせやがって!早く逃げねえと俺らも危ねえんだよ!」
「あ”っ!ぐっ、ごふっ」
頭を殴られ、頬を張られ、再び蹴っ飛ばされて、俺にはもう抵抗する力も無いので体を丸めて致命傷だけは避けるように身を守る。痛い⋯どうして俺がこんな目に遭ってんだ。この王都を、国を、世界を守ろうとしてやってるだけなのに。もういい畜生、魔封じの首輪のせいでマトモに使えるか分からんけど、ここにいる奴らも纏めて――。
「てめえら動くんじゃねえ!」
その一言で痛いのがやってこなくなったのでそちらに目を向けてみると、ガンドルフがボロゾフを羽交い締めにして、その仲間が魔法を撃つ構えで人質にとっていた。どうやら稼いだ時間は有効に使ってくれたようだな⋯⋯。見張りも立てずに、俺一人捕まえるために連れてきた奴らを全員送り込むとは、間抜けな奴め。
「離せ下民めが。貴様が触れていい身分だとでも思っているのか?」
「知るかクソが!もう国から追われようがなんだろうが知ったことか!てめえは殺す!」
「ならば早くやったらどうだ?怖気づいたか?ん?」
「黙れ!その嬢ちゃんをこっちに渡せ!」
「ただの野良犬が、人外に情でも湧いたか」
「違う、そいつらのパーティには借りがあんだよ。そいつを帰す前に死なれちゃ困るんでな!」
借り⋯?あー、出口を確保してた件かな?ついでに掃除してやっただけだから気にしないでいいのに。
「お前達、その娘を人質にしろ」
その一言で俺は無理矢理立ち上がらされて、喉元にナイフを突きつけられた。痛みであんまり動きたくないから寝かせといてくれ⋯⋯。
「さあ、これで条件は同じだぞ?どうする?んん?」
「ぐ⋯⋯」
「リーダー喋りすぎ。さっさと武装解除させればよかったのにさー」
「アタイたちも何日か食って無くてフラフラなんだから戦闘は無理だよ?」
「うるせー黙ってろ!おい!武器を捨てさせろ!」
「断る。貴様らこそ私を解放したまえ。今なら命だけは助けてやろう」
「テメッ⋯⋯やっぱ今殺す!」
二つの陣営が廊下の左右でギャースカやっていると、天井がミシミシと嫌な音をさせ始めた。全員口論に夢中になって気付いていないようだがこの魔力の圧は⋯。
俺が察して身構えると、両者の間辺りの天井が「バゴン」と大きな音を立ててド派手に崩落した。立ち上る煙の中現れたのは、壊れかけのパイルバンカーを構えたクリスだった。
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