第50話 口論しちゃった
なんと主人公アリスちゃんの会話が一行だけ・・・というか普段から地の文で満足してあんまり喋らせれてない気がしますね!猛省!
「第二王女殿下がダンジョンの中に居られたという目撃報告、また証言もありません。かの状況下で中に潜って居られたのであれば、話の一つくらいは耳に入っても良さそうなものですが?」
「私達があの場に居たのを何人も見ているはずだ。私はこの宝剣を掲げ名乗りを上げ衆目に誓いまで立てたのだからな」
「ですからそれがおかしいのです。そもそもあの時間、あの場所に殿下が外出許可を出して受理されたという記録も残っておりません」
「そ、それはお忍びで視察に出ていた時だったから故⋯」
いかん、流れが悪い。元々身分を隠して動いていたのが仇になったか。まぁ隠しきれてなかったけど、こういう面倒事が起こってしまうとやはり正規の手順で動いていなかったのが悔やまれる。
「お忍び?と言うことは公務ではなく遊びの一環であの場に居たと、そう申すのですか」
「違う!中では尋常ではない程の魔物が発生して居た!すぐに抑え込まねばどうなるか考えも及ばなかったのだ。だから全てを無視して迅速にことに当たる必要があった。そうだ、中には冒険者のパーティが居たのだ、彼らから証言が得られれば」
「ガンドルフ、という青年が率いるCランクの連中の事でございますか?」
なぜ知っていやがる。
「そうだ!あの者達には私が手渡した物がある。それがあのダンジョンの異常性と、その場に私が居たという何よりの証拠になるはずだ!」
「殿下が殊更気にかけて探していたのでこちらでも足取りを追ってみたのですがね、彼らは少し前に急ぎで別の街へと旅立っていたようですよ」
はぁ?そんなわけあるか。あの場所に居たのは俺達四人がしっかり覚えている。⋯⋯あの野郎、この話題になった瞬間からずっとニチャニチャ笑ってやがる。もしや、攫いやがったな?他の目撃証言とかも全部抑え込んでるってことか。クソ野郎が⋯。
「そのような事あるわけがない。私も冒険者の端くれだ、移動先についても出発する前にギルドに報告する義務がある。勿論経由した街や国の入国審査にも記録があるだろうからな。足取りを追おうとすれば簡単なことだろう。貴公はそこまで調べたのか?」
そんな義務あったのか。そう言えば故郷に帰る前にティナとクリスもちゃんとギルドに行き先を伝えてから王都を出たような?
「ただの冒険者風情、不意に居なくなることなどよくあることでしょう。どうでもよいではありませんか」
「いいや、私は彼らと直に話したことがある。人柄はお世辞にも良いとは言えんがそれなりに腕が立つベテラン揃いだった。それにこの王都に腰を落ち着けてもう数年だとも言っていたよ。だからこそ急に他へ行くのが不自然だろう」
「平民如きに随分心を砕いて折られるご様子ですが、彼らはどこからとも無く湧いて出てきては消える者。そう深く考えることもありますまい」
人間を何だと思っていやがる、本当に嫌気が差してきた。この最低ヘド野郎に一泡吹かせる手段は無いものか。
(なぁアリス、お前の能力でダンジョン前に着いてからの一部始終を聞かせられないか?)
(いい考えねそれ!ちゃんと私達があそこに居たって証明になるわ)
(うーん⋯⋯あたしはいいけど目をつけられそう)
まぁ、いいか。ここに来てから既に好奇の目にさらされてるし、いざとなったら姉二人が守ってくれるだろ。たぶん本気になったらこの城を制圧するくらい楽勝だろうしな。
「じゃ、決まりね。ゴホン、失礼!今のままでは不毛な問答が続いて時間の無駄かと思います!幸い私共には音を記録する魔道具がありまして、あの日のことも当然記録されており、お聞かせすることができます」
「おぉ!ティナ嬢、それは助かる!」
「音だと⋯?フン、やってもらおうではないか」
なんかこっちを睨みつけてきてるけど、正直顔すら合わせたくない。こんな奴の前で俺の能力を使うなんて本当に嫌だけど、それでエレノアと俺達の潔白が証明されるならやるしかないか。えーと巻き戻して、俺の正体に関する所は抜き出して⋯⋯ほい、再生と。
《今日は騒がしいな。何かあったのか?》
《ああ、あんたらか。今は内部で異常が起こっていて封鎖中だ。どうも魔物が凶暴化して手に負えんらしい》
「これは行方不明になっているダニエルの声じゃないか?」
広間の警備をしている兵士の一人がそう呟いた。一時停止しとくか。おっと、エレノアが兵士に駆け寄って何か言い出したな。
「君!それはどういうことだ!?前に出て説明してくれ!」
「え、えぇ⋯⋯この声の主とは同期でして、日頃から親しくさせてもらってたんです。その日も仕事終わりに一杯やろうかって約束をしてたんですが、あの日以降誰も見ていないんですよ」
「つまりこのダニエルという兵士が当日ダンジョン前に居たのは間違いないということだな?」
「え、あ、はい。約束したのは朝に詰め所から出た時でしたから。異動でしたら飲んでる時に話も聞くはずですし、急に居なくなったもんで皆不思議がってたんですよ。他にも何人か居なくなってしまって、上に報告しても問題ないって帰ってくるだけで」
これはダニエルさんも連れて行かれてる可能性高いな。貴族の面々もざわついているが、中には頭の回転が早い人がちらほら居るみたいで怪訝な顔でこちらを見ながら様子を窺ってきている。
「⋯⋯続きを頼む」
エレノアも大分察してるような様子だな、そーれ再生っと。エレノアが剣を抜く音がして、名乗りを上げて周囲が湧く歓声が聞こえる。それから俺達が突入してからの戦闘音、そして内部の異常さ、ワイバーンの出現。
「王よ、その時に出てきた魔晶石がこちらに」
エレノアが収納から大きい石を取り出してゴトリと地面に置いた。
「おお、これが⋯」
「信じてはなりませんぞ!姫という立場を利用すれば魔晶石の一つや二つ持ち出すことなど容易いではありませぬか!」
こいつめちゃくちゃ無礼だな、俺達が犯罪者扱いされる以前に普通に打首じゃね?まぁここで黙らせても疑惑を払拭できないからやってもしょうがないんだろうけど。めんどくさいしガンドルフ達と出会った所を再生するか。
彼らと出会い逃げるように伝えて、髪を切って渡した所まで全て再生し終わった。貴族や兵士達は、エレノアがダンジョンで切った髪に合わせて前より短く切り揃えたのを目ざとく見つめている。
「今のが私達がダンジョンに居たという証拠だ。本来は当事者として警備をしていた兵士達をここに呼んで歓待を受けさせてやろうと思っていたのだが、誰一人として足取りが掴めない。不自然ではないか?身が軽い冒険者ならいざ知らず、正規兵まで居なくなるとは。ああ、お前が抱えている近衛騎士団だけが無事だったな?」
お、いい流れだ!今まで受け一辺倒だったのが、こっちが追求出来るターンが来た!
「何をおっしゃるか。あの場に居た兵士諸君は現場の事態を上手く抑えていたのでそれを労うために休暇を出しているだけのこと」
あ。
「認めたな?」
「何?」
「今、あの場で異常事態が起きていたと、確かに認めたな?貴様は言った、ダンジョンに入った時に異常はなく平時と同じであったと。だがお前は今、自分で認めた」
「それは言葉の綾というもので、何も起こってはいませんでしたが現場の異様な雰囲気が兵の負担になっていると思い⋯⋯」
「くどいぞ、そもそも普段通りならば話を聞くだけで済むだろうが。貴様、何が目的であの場に居た?」
騎士団なんて物騒な戦力を投入してダンジョンを制圧するなら分からんでもないけど、確かにこのヒョロガリおじさんがあの場に居た意味がわからない。
「もうよい」
突然王様が話に入ってきた。まぁ、入ってきたっていうか王様の目の前でギャーギャーやりあってたから場が静まるのを待ってただけなんだろうけど。
「我が娘が当時ダンジョンに居たというのは裏が取れておる。そうでなくてはこの謁見も開きようがないからな。問題はお前だ、ボロゾフ。貴公については様々な噂が飛び交っておるぞ、余が知らぬと思ったか?」
王様は大体の事は知っていたらしい。が、はて、噂とは?さてはこいつ他にもなんかやってんな?
「お、王よ、それは⋯⋯」
「お主には謹慎を命じる。沙汰が下るまで大人しくしておけ」
「⋯⋯はっ」
ボロゾフのあんちくしょうは顔を真っ赤にしながらドスドスと元の位置に戻っていった。これだけでも不敬だと思うけど、ここの王族は意外と懐が深いのかも知れん。それにしてもボロゾフの俺達を睨む目がめっちゃ鋭いんだけどこれ恨み買ってるよなぁ、何もされなきゃいいんだけど。




