第49話 謁見しちゃった
一桁話に挿絵を追加しました。AI出力で恐縮ですがキャラのイメージが自分でもイマイチだったので⋯。
えーっとまず呼ばれるまで部屋に入っちゃダメで、中に入っても名前を呼ばれて許可が出るまで顔を上げちゃダメで⋯⋯あークソ、めんどくせえな!なんで転生してまで面接のマナー講座みたいなことやらなきゃいけねえんだよ!そもそも俺達呼ばれた立場だべ!?ならこっちのこと考えて雑でも許せや!
「―――で、――なのです。覚えましたか?」
「わかんない」
知らん。俺には関係ない。幼女に期待すんな、この歳の子供にそこまで強要する国とか滅べ。大体王侯貴族が姉達の村を蔑ろにしてるから大嫌いなのに、なんでそんな奴らのために合わせなきゃいけないんだ。むしろお前らが宿屋まで来い。盛大にむくれているとティナが会話に入ってくる。
「アリスちゃんは何も考えなくても私達がやってるのを真似すればいいわ」
やったぜ。だが一筋の希望をフローレンスが打ち砕いてくる。
「そういう訳には参りません。ここで上位貴族様からの覚えがめでたければ、養子の申し出や次男三男のお坊ちゃまから婚約の申し出があるかも知れませんので」
絶ッッッッ対に嫌だ!!この人何言ってんの!?知らん家の養子縁組なんて入りたくないし婚約なんて以ての外だっつーの!っつーか前提からして俺は男だ!将来の話だとしても野郎と結婚だなんて考えられるか!
「ヤだ!ヤダヤダヤダ!行きたくない!帰ろ!?」
「そう言ってもなぁ、もう城門くぐっちまったし」
「ヤダァーー!!」
馬車は無慈悲に奥の停留所に着いてしまい、馬車を降りた俺達は使用人が入れる勝手口に案内された。そこを抜けて通路をいくつか曲がり、一つの待機用と思われる部屋に通される。すると中にはエレノアがいた。
「来たか皆、まだ離れて数日だと言うのに随分懐かしい思いだ」
「ひさしぶりー!ギャッ!」
「お前も居たのか?てっきり謁見場で会うもんかと思ってたけどウ”ッ!」
気の良い仲間みたいな軽さで返答するが、その瞬間俺の頭に手刀、クリスの脇腹にティナの肘がめり込んだ。
「申し訳ありません殿下、後程言い聞かせておくので無礼の程は平にご容赦ください」
そういやお姫様だったな、人前だしいつも通りってわけにはいかないか。
「す、すんませんでした⋯⋯」
「ごめんなさい⋯⋯」
「私としてはいつも通りのほうが有難いのだがな⋯それより伝えることがある」
ほう、なんじゃろか?
「実はな、ボロゾフ卿のことだ。私達がダンジョンから脱出した時に居た貴族なんだが」
「あいつか⋯⋯なんかしたって、いや、何かなさったのでございますですか?」
みてみて、クリスが慣れない丁寧語に苦労してるよ、かわいいね。
「この場はフローレンスと私しか居ないから普段通りで構わないとも。人には聞かせられんことだしな⋯⋯。応援も避難勧告も無かった原因なのだがボロゾフの所で握り潰されていたみたいなんだ」
「なんですって?」
「しかも私が髪を託した冒険者達も、あれから行方がわかっていないという話だ。本来なら彼らも貢献したということでこの場に招待する予定だったのだが⋯⋯」
まーためんどくさい話になってきたぞ。これだから貴族はよぉ!
「一体何でそんな事したんだ?」
「分からん⋯本人に話を聞きたい所だがのらりくらりと躱されてしまう」
「そのボロゾフという男についてはなにかご存知なのですか?」
「奴は私の案に反対していた一派の一人ではあるのだが、それ以外にこの一帯の警備を任せられている伯爵の地位も持っている。あの日近衛騎士団を連れて来ていたのもそういうことだ」
「ふーん?つまりボロゾフが権力の誇示か何かが目的で、報告を握り潰した上で手柄を横取りしようとした。その可能性が高いということですね?」
「それに加えて奴は奴隷を集めているという噂もある。法を変えようとした私は目の敵なんだろうさ」
「思った以上に根が深そうですね⋯奴隷と言えばこちらも少々お願いがあるのですが」
「ほう、聞こうか」
ティナは知り合いのドワーフの娘が拐われて困っているという事を相談した。
「⋯⋯連行されたのならばボロゾフの仕業だろうな。分かった、それはこちらで対処しておく」
相変わらず難しい話は全然わからないけど頭がいい人達はすごいなぁ。全くついていけないや。俺ごとき幼女が政治絡みの話なんて聞いててもしょうがないし暇だなぁ。あ、フローレンスさんお茶菓子あざっす!チョコチップクッキーだ、うま。
ってあれ?フローレンスさんだよね?いつの間に着替えたの?っていうか髪の毛カツラだったんだ。金髪で黒目のメイドとかコスプレした日本人みたいだけど骨格が違うからか美人さんだね。
理解できない(する気がない)話を聞き飛ばしてもぐもぐしていると、時間が来たのか皆が身なりを整え始めたので俺も少し服のシワを伸ばして背筋を直す。行きたくねぇ~⋯ここでお菓子だけ食べて待って居てぇ~。
そんな事を考えていると、ノックが聞こえて迎えに来た侍従さんたちが外に待っていた。その人達に着いて後ろを歩いていき、やたら豪奢でおっきい両開きの扉の前で待機するよう言われた。ここからでも入れる保険ってありませんか⋯⋯?
「それではお入りください」
ついに呼ばれてしまった。扉から進んで大広間を歩いていく俺達四人を、貴族の方々がガン見しながらなんかヒソヒソ話してる。端々に「下賤」とか「低俗」とか「身の程」とか聞こえるけど俺達呼ばれた立場だからな?別に今から帰ってもいいんだぞ?っていうか帰らせて?
「私がグランディール王国国王、アインザッツ・ジョゼフ・グランディールである。面を上げよ」
俺達が顔を上げると玉座に座った少し疲れたような顔をした日本のサラリーマンみたいなおじさんが座っていた。あと、俺とクリスは失礼なこと言いそうなので話すのはティナに一任することにした。やはり持つべきものは以下略。
「名を聞こう」
「ハッ!クリスでございます。冒険者をしております」
「ティナでございますわ。同じく冒険者で、教会で司祭の身分でもあります」
「ア、アリスです!同じです!」
エレノアは身内だから省略した。いつの間にか少し離れて身内席みたいな場所にいるしね。
「此度の騒動、お主達の活躍により見事解決したと報告を聞いている。大儀であった。褒美を取らす、申してみよ」
「書庫の閲覧の許可をお願いしたいのですが」
俺達はここで歴史について調べないといけないことがあるので、それを報酬にすると事前に話し合って決めていた。
「そんなことでいいのか?構わんが、国の危機を救ったのだ。望み通りの仕官も叶うだぞ?」
「いえ、今回は私達が冒険者だからこそ解決できた事態でした。冒険者ならではの視点でもこの国にご助力出来ると思いますので、仕官は遠慮しておきます。書庫につきましては、私が歴史について興味があるのでお願い致したく」
「うむ、分かった。それではこの者達の栄誉に喝采を――」
「お待ちください陛下!」
なんか横槍が入った。あいつはボロゾフか。王様の話を遮って意見するなんて相当な不敬だけどどういう了見だこいつ?
「どうしたボロゾフ。今はこの者達が先だ、要件があるのなら後にせよ」
「其奴らには虚偽の報告、捏造の嫌疑がかかっております!」
「なんだと?」
いや、マジでなんだと?なんだが。一体何を言い出すんだ、俺達の死闘が嘘だっただと?
「控えよボロゾフ!陛下の前で許しもなく意見を述べるなど不敬であろうが!」
エレノアが食って掛かってくれる。
「おやおやこれは姫様。共犯者の擁護もほどほどにせぬと、いらぬ火の粉が降りかかりますぞ?」
「何を言っているのだ貴様⋯⋯共犯者だと?遅れて到着して事態の収拾もせずに手を拱いていた癖に恥知らずにも何を言うかと思えば」
なんか舌戦が始まった。はー、場をギスギスさせるだけの口喧嘩なんて他所でやってくれ。そもそもどういうつもりで割り込んできたんだこいつは⋯⋯。
「私が近衛騎士団を連れてダンジョンに突入した所内部に異常はなく、平時と同じでありました。報告に上がっているようなことも、それに関する証拠も目撃者もございません。姫様の勘違いかと思われますが」
「なっ⋯⋯貴様!私の狂言だとでも言うつもりか!そもそも、その報告を上に上げなかったのも貴様であろうが!!」
俺達を嘘つきにして全てを無かったことにしようってことか?ついでにエレノアの立場も悪くして追い落とす腹積もりかこいつ⋯⋯想像通りのクソ貴族だな。隣でおっきい方の姉がキレかかってるし、早めにどうにかしていただきたい。




