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TSした妖精幼女は異世界で家族が出来る  作者: えもぬえ


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第43話 とられちゃった

 この先に待ち受けるであろう何かに備えて小休止中の俺達。さっき見送った冒険者に渡したのが、意外!それは髪の毛!だったからちょっと気になって聞いてみた。


「そういえばさっきはどうして髪の毛なんて渡したのー?」


「貴族の髪ってのは長く伸ばしてナンボみたいな所があるから、分かるやつ奴には分かるんじゃないのか?」


 クリスもあんまり分かってないみたいだ。確かに貴族の毛髪のイメージって言ったら、ヤケに長く伸びた髪をあの手この手でセットしてくるくる巻いたり結い上げたりして重そうだよな。あの長さに意味があるのか分からんけど、身分証明に使える何かなんだろうか。


「あれはな、私の魔力を多少含ませてあるのだ。髪は体の一部であるから身体強化の応用で魔力を纏わせられる。私の身内なら見れば分かるだろう」


「そんなことできたんだ」


 俺は身体強化使えないからサッパリ分からんがな⋯⋯。いつの日か姉達と肩を並べて戦える日が来るのだろうか。いくら俺が妖精だからって、いつまでもお荷物なのは自分でもちょっとどうかと思う。せめて何かしらで手助けはしたいんだけど、何しても『何もしないほうがマシ』くらいなんだよね。前に出ると危ないから基本は見てるだけの姫プだから困る。


「身体強化と言えば、姉君達は相当な魔力を持っておられるみたいだが⋯⋯それもアリス嬢が妖精なのが関係しているのか?」


 む、そこに突っ込んでくるか。


「当たらずとも遠からずって所ね。クリスは契約してるから直に魔力を扱えるからだけど、私は違うわ」


 ティナは米の副産物で強くなっただけなんだよな。それにしても俺が米食わせるだけで無双状態になれるのって冷静に考えたらヤバくね?既に数人被害者が居るガレラ村の現状なんかちょっと怖くて見られないレベルだなこりゃ。


「ティナはちょっと違うんだよ。ほら、これがアリスのステータスボードだ」


 姉がピッと投げて俺の個人情報を渡す。いや、見せるのは別に構わないんだけど一言断りというか⋯⋯まぁいいか。たぶんこう思っているのもお見通しなんだろう。俺が考えてる事とかたまに先回りして聞いてくれたりするし。


「ほうほう⋯⋯本当に神の子なのだな。それに魔力Sとはとんでもないな。技能欄は独自の物が多くてあまり分からないが」


「Sってすごいの?他の人知らないからよくわかんない」


「例えば私は魔力Cだな。市井に生きる者達ならFかGと言った辺りだろうか。冒険者の中堅でDあれば良い方だ。魔法が専門であるティナ嬢のような者ならCが普通くらいだろう」


 それ聞いたら俺の魔力Sがホントに残念な感じじゃん⋯。スペックだけすごいのに何も出来ないとか宝の持ち腐れ感パねぇ。せめて普通の四属性で生まれ変わらせてくれればよかったのにあの女神様。覚醒イベントとか、実は強かった!みたいな展開まだっすかね?


「そんでな、魔力水にこいつが手を浸すとその魔力が染み出るみたいなんだよ。それで調理した米を食った結果ティナは私と同じくらい強くなったってワケさ」


「で、そのお米で作ったおにぎりがこれよ」


 そう言いながらティナは収納から、俺が食べるために自分で作っておいた肉入りおにぎりを取り出した。これが美味しいんだ。コンビニやスーパーで売ってるおにぎりとは違って海苔がないけど、自分で好きな大きさに出来るし魔力水入りだから満足感がたっぷりある。あと流石にお米食べて泣くのは我慢出来るようになった。


「そ、それはぁ!」


「まぁ待ってアリスちゃん」


「エレノア⋯⋯お前、これ食わないか?」


 えっ!?それあげちゃうの!?俺のなのに!


「それを食すと⋯⋯君達のように強くなれるのか?」


「ああ、そうだ。食うなら話すが既に何人かは同じような奴も居る」


「そうなのか、既に実証済みということか。私には守るものがある。民であり、国であり、王でもある。その点において私は他の追随を許さぬ女だ。使えるものは何でも使ってきたと言ってもいい。今直面しているこのダンジョンで使()()()ならば、それを食べることに何の問題もない。だが、なぁ⋯⋯」


 お願い、やめてください⋯⋯俺に肉入りおにぎり⋯⋯⋯。細かく刻んで、口当たりを良くした謎肉をタレに絡めて焼いておにぎりに包んだのに、自分で食べれないだなんてひどすぎるよぉ⋯⋯。


「どうした?」


「アリス嬢にそんなに未練がましく見られているとなぁ⋯」


「こいつは気にすんな!後で肉食わせて一緒に寝てやれば明日にはケロッとしてるから」


「そ、そうか。では、食べる前にこちらから一つだけ質問させてもらおう。何故そのような極めて重要な秘事を話したのだ?私はこれでも王家の女だ。事が済んだら君達を縛り付けるようなことをするかも知れないんだぞ?」


「あー、まぁそうだよな。そうだな⋯⋯まずは私達の目的から話すか。こいつは妖精だろ?女神様に頼まれ事して神界からやってきたんだってよ。んでそれがダンジョン制覇だってことさ。詳しいことは分からないけど、今朝聞いた話では早めに何とかしないと、どうもマズイらしい。その最たるものがさっきのワイバーンみたいだな」


「アリス嬢は使徒様であらせられたのか!これは今までの非礼、誠に申し訳なかった。この事態が解決したならば、喜んでこの命を捧げさせていただく故、お許し願いたい」


 えぇ、そんなもんいらない⋯⋯そのおにぎりが欲しい⋯⋯⋯。


「そんなのもらってもなにもうれしくないから、いらない。それよりおにぎりが⋯⋯」


「で、だ。そんな事にアンタを巻き込んじまった。元はと言えば私達が気軽に引き受けた依頼中でのことだ。それはこっちの落ち度だし、何より今は手が足りない。さっきの魔物の数見ただろ?私とティナだけじゃ厳しかったからな。それに、貴族とは言え話が通じそうだしな」


 流されてしまった。俺のおにぎりがぁ。


「委細承知した。それでは、食べるとしよう」


 エレノアがティナの手からおにぎりを取り、口にする。それと同時に、横に飛んでいた緑色の女の子の姿をした妖精も一緒になって飛びつき、むしゃむしゃと美味しそうに頬張る。それ、俺のなんだけど?


「ふむ、ほう⋯⋯こうなるのか。魔力で言えばA相当と言った所か?これを兵站に組み込めば即座に精鋭が揃うが、神罰が下りそうだな。それに、こんなに可愛いアリス嬢にそんな真似はさせたくはない」


「あぁ⋯あたしのおにぎり⋯⋯」


 今度はこっちが膝から崩れ落ちてしまった。悲しい⋯。


「そんな顔しないの。ほら、私のあげるから」


 やったー!この米を食い進めていくにつれて味が染みてくるワクワク感が堪らんのよな。その米自体も美味いし、本丸に攻め込んで一気にジュワッと広がる肉の旨味がまた食欲を唆る。うまっ!うまっ!


 エレノアに隠し事はなくなったし、これで後から俺達のことを秘密にしてもらうのも問題ないだろう。後はこの先の階層がどうなっているかなんだが、さっきみたいにボスみたいなの一体だけなら楽そうだったしソッチのほうがいいな⋯⋯。

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