ちょうはつ
閉じ込められた部屋。
特に仲の良くない人間との空気。
出られない焦りと、長引く場合の懸念。
解決の手段を探る一方、感情のマイナス部分だけが顔をのぞかせ、黙殺の努力をする。
自分の、事なかれ過ぎた結果からくる、陰キャの沁みついたネガティブさ。
さすがに、これだけずっとゃっていると苦笑いせずにはいられない。
『それで仮にここが〇ック〇しないと出られない部屋だった場合なんだけどさ(*'ω'*)』
「もうそこから離れて!!」
原因はもちろん、この獲物をこのタイミングで狙うような、生徒会の挙動と魂胆である。
疲れる。
かたや、こっちを眺めながら片手で文字を打ち続けてたまにニヤつくひと。
かたや、逐一全力リアクションしながら脱出の糸口を探り続ける人。
使うカロリーの差は圧倒的だ。
ストレスを感じる差も当然あり、この場でまず疲労で倒れてしまった方がいい気すらする。
そんな内出屋君も、それともう一つのものを認めざるを得ないタイミングに来ている。
そう、尿意である。
それが焦りを、今まで以上に加速させる。
この狭い部屋で一緒にいることまでは何とかなっても、閉じ込められたままの空気でその手の臭いをずっと嗅ぎ続けるのは洒落では済まない。
そもそも空気自体、ずっと持つかを考えないといけない事態のなかで、さらに難題は増やしたくない。
そのうえ下手に出てわざわざ生徒会に弱みを与えるのも、内出屋君的には一生のうちでしたくないこと上位に入るつらい選択肢だ。
「…そういえば、生徒会の中ではこの間のこと、ギスギスしてないんですか?」
『おやおや、お姉さんに急に積極的になるじゃないの(*'ω'*)』
どこにお姉さんがいるのか突っ込みたくて仕方ないが、さらにイラつくが…耐える。
尿意に耐えるためには、ちょっと気を逃がす必要があるという思いで話しかけたのに、悪化はまずい。
それに、純粋に気にもなっていたのだ。
「…純粋に部活間の話です…あれだけ配信騒ぎでひっかきまわされて、しかも主犯扱いで詰問か何かされたんでしょう?」
気を紛らわすついでで引き出す、ちょっとした疑問。
内出屋くんが大きく巻き込まれていた、校内の配信騒動からの、謎の手回しをされた救出騒ぎ。
結局は、関係者と関わりの深さを洗い出すと…。
探検部に関りはあったが、騒ぎ出したのも機材などで中心に居たのもすべて生徒会の中に居て、ともすれば内ゲバみたいな事態に落ち着くというお騒がせな結末。
その結果、当の生徒会ではどう決着させて着地点にしたのか…。
そりゃ、直接聞けるなら、聞かなくてはいけないところだ。
最終的に生徒会によって捕縛された主犯扱いの彼女の口から。
『いやいや、できるわけないじゃん(#^^#)』
「…………へ?」
おい。
あっさり何言ってんだ。
件の騒ぎの決着も、真相の解明もしてないとでもいうのか。
こっちとしては、主犯扱いは免れたがこの書記とは、そこそこ気まずい空気を感じていたというのに。
それもこれも、生徒会の……正確には会長副会長から詰められてかわいそうと思えばこそ。
ないのなら、あの内出屋君への圧のかかった追及も何だったのか、と言うことになる。
正直、その方向は内出屋君としては納得がいかない。
「……生徒会って、そんな身内に甘いんですか?」
少し不機嫌が先に立った言い方になる。
『いやいや、そりゃ少し違うな(^^♪ この私に手を出せるやつがいるはずねえよってハ・ナ・シ(*'ω'*)』
「ずいぶん含みのある物言いで……」
話しても気がまぎれない。
むしろ喉までもっと乾いてきた。
脱出の糸口を探す色々も止まって、ただ悶々とする結果になってしまった。
が。
そこを見逃さないやつがいた。
『なんだいモジモジした様子になってさあ(=^・・^=)』
ぎくり。
『狭い空間……二人っきり……脱出の当てもなく……(>_<)』
「トイレです!早く出てトイレに行きたいだけですからね!」
『……何も起きなしはずもなく……( *´艸`)』
「起きないよ!!! って……え」
スカートの内側をすっと摘まんでするりと下ろす。
明るめの、緑の布きれがばさりと落ちた気がする。
…直視したら終わる気がした。
直感的に。
それを確認すると、彼女は今度は…。
服の首周りを緩めて、着崩したような、脱がしやすくしたような、そんな見た目を作り出す。
肩口まで着くずしたように開けて、ちらりと、下着を意図的にのぞかせるような、狙いを感じるその態度。
生徒会側から、そんな行動をするとは。
それはまさか……。
「……さ、さ…………!?」
誘っているのだろうか!?
近寄るその姿に逃げることもできず、少し乗り気になりつつある内出屋君。
散々警戒していた割に、不思議なくらいすんなり流されるのはどういった心情なのか。
『この中身は、どうなっているのかなあ~(=^・・^=)』
片手で入力しつつ、顔を近づけながら上着の首周りをさらに広げていく。
遊びのような挑発的なそぶりはあったが、どういったつもりでそんなに、一線超えさせたがる動きをしだすのか。
まあ、そんなことに気が回る余裕が今の内出屋君にはないのだが。
気になることと言えば…ちょっと薄めということが真っ先に出るくらい。
しかしまぁ、相手が嫌がっていないだろうという感覚と、据え膳食わぬは……の状況に酔わされる空気は、万人に通じるというコトなのかもしれない。
…どうする?
言葉も出ないまま、前屈みになった書記の服の間から見えるもろもろを眺める内出屋君。
こんな事態なのに…。
ちょっと乗り気になって鼓動が上がっている。
あいてが、ここにきて態度で挑発しながら無言で来るのが…。
ずるい。
ちょっとだけだが、手が伸びてしまいそうになる…。
「あんまり、そんな冗談するのはちょっと…」
言いかけた。
そこに、生徒会の側が、ぐいと手を引っ張る。
もうこれは…!
さらに、生徒会はその引っ張った腕を、上着の中にするりと、そのまま入れようと。
まさか…。
思ったより本気で、何か、好きなことをさせようとして?
そんな期待に、完全に呑み込まれそうになる。
「じゃあ、今好きにしていいって言ったら…探検部はどっちになるかなぁ?」
その時、その、いままで知らない声がした。




