第59話 Cairn①
鈴間翠は金剛大門の後を追い、部屋を移動していた。
翠「…なぜ。俺との決闘を飲んだ。」
金剛「クキキ。ただで飲んでやったつもりは無い。お前の運が良かったんだ。」
翠「そんなわけがない。お前は分かっていたはずだ。あの硬貨がエラーコインだって。」
金剛は小さく息を吐いて翠の方を振り返る。
金剛「そこがそんなに気になるか…」
金剛は翠の真剣な目を見ると再び前を向き、ゆっくりと歩き始めた。
金剛「大した理由ではない。わしからすれば、東院連合だとか御子柴亮だとかはどうでもいい。」
金剛は話しながら足を進める。
金剛「エラーコインを投げたのは、戦う理由付けが欲しかっただけだ。」
翠「戦う理由…」
金剛「わしが、エラーコインを投げた。しかし、それがわざとだという証明はやつらにはできまい。」
翠「…」
金剛は再び振り向いた。その顔は歪んでいた。
金剛「わしはな。強いと思い込んでいる若造を叩き潰すのに幸福を感じるんじゃ。」
翠「…」
金剛「さ、ついたぞ。この部屋だ。」
金剛が扉を開ける。大きなスクリーンと2つの机。その上にはカードが8枚ずつ計16枚置かれていた。
*
祐「御子柴さん。」
亮「…」
四十万祐は御子柴亮が縛られている部屋に来ていた。
亮の返事は無い。
祐「…今、鈴間さんが亮さんのために戦っています。」
亮の身体が少しだけ動いた気がした。
祐「すべてをかけた戦いです。御子柴さん。信じていてください。」
亮「…」
亮から返事は無かった。
*
金剛「さて、ゲームを始める前に、1つ言っておこう。いくら戦う権利を得たとはいえ、鈴間君がわがままを言っているという状況は変わらない。」
翠「大丈夫、十分理解しているよ。」
金剛と翠は席に着き向かい合っていた。
金剛「いいや。分かっていない。わしは翠君のわがままを飲んであげている立場…。」
翠「…」
金剛「つまり、君にはこれを飲んでもらわねばならん。」
金剛は伏せられていたカードを開く。
金剛「クキキ。鈴間君。君は賽の河原というのを知っているかな?」
翠「え?」
金剛「三途の川のほとりのことだ。そこでは親より先に死んだ子供が石を積み上げている。積み上げが完成することが出来ればその子は救われる。だが、地獄の鬼たちはそれを許さない。」
翠「…つまり、このカードはそう言うことか…」
翠は机の上のカードを見ていた。
金剛「そう。わしが鬼、鈴間くんが罪人だ。」
そのカードは7枚の「積み上げ」カードと「防御」カードだった。
【Cairn
■ 基本ルール
「鬼」と「罪人」に分かれて行う非対称カードゲーム。
各プレイヤーは配られた8枚の手札から、毎ターン1枚ずつカードを裏向きに伏せて同時に出し合う。
■ 手札(各8枚)
【鬼側】
・見過ごしカード × 7枚
・攻撃カード × 1枚
【罪人側】
・積み上げカード × 7枚
・防御カード × 1枚
■ 勝利条件
罪人側:鬼の攻撃をやり過ごし、7枚の「積み上げカード」を全て場に出し切ること。
鬼側:罪人が「積み上げカード」を出したターンに、「攻撃カード」をぶつけ積み上げを阻止すること。】
金剛「どうだ?楽しそうなゲームだろ?」
翠は黙ってカードを見つめていた。
金剛「そう不安がらなくても良い。鈴間君が罪人固定ではいくらんでも、かわいそうだ。そこで、だ。ここは賽の河原に忠実に行こうじゃないか。3回の戦いの内1度でも、7枚積み上げられれば。つまり、1度でもわしに勝つことができれば、鈴間君の勝ちとしようじゃないか。」
金剛はそう言って手札を1枚伏せた。
金剛「ほら。どうした。もう始まっておるぞ。」
翠は金剛の目を強くにらみつけた。
このゲームには鬼側に必勝法がある。なら、それを利用してやる。
翠もカードを1枚伏せた。
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