第55話 琥珀色の過去⑤
『ブブブ…ブブブ…』
ポケットに入れた携帯が震える。
祐「出ていいですよ。」
運転席に座る四十万祐は御子柴亮の方をちらりと見た。
亮「あぁ、悪いな。」
携帯を取り出し電話に出る。
翠「ちょっと亮ちゃ~ん!!」
電話の相手は鈴間翠だった。
亮「なんだ。どうかしたのか。」
翠「どうかしたのかじゃないよ!どうなってんのさ!王石《crown》クラスになってから全然稼げてないの!!」
亮「仕方ないだろ。お前らが強すぎて誰も戦いたがらないんだ。」
翠「そうかもだけどさ~。最近外部依頼も琥珀ちゃんの言ってたサーカスばっかりだし。どうなってんの?大丈夫なの?ラピダリーは?」
翠の声は大きく、隣の祐にも聞こえるほどだった。
亮「そう心配するな。大丈夫だ。それに、琥珀はそのサーカスをこなして稼いでいるんだ。稼げないのはお前の怠慢じゃないのか?」
翠「そうかもだけどさぁ。なんか気乗りしないんだよな。」
亮「そうやってうだうだしてると、王石《crown》クラスに昇格して1年の琥珀に抜かされるぞ。」
翠「え。もうそんな経つ?」
亮「ああ。」
亮は少し間を開けニヤニヤしながら話した。
亮「まあ仕方ないか。翠はえり好みするような“3流ギャンブラー”だもんな。」
翠「!!!!!なんだと!!!!亮ちゃん!!!」
『プツ』
亮はニヤニヤしながら電話を切った。
祐「楽しそうですね。」
亮「ッフ。そんなことないさ。」
車は高速道路を走っている。
この仕事をこなしたら、琥珀の王石《crown》クラス1年祝いでまた4人で飲みに行くのもいいかもしれない。
そんなことを考えていた。
*
亮「ただいま~…あ?」
部屋の電気は消えていた。家の何処にも御子柴琥珀の姿が無かった。
亮「どこ行ったんだ?」
亮は携帯を確認する。特に連絡は入っていない。
亮「?買い物でも行ってんのか?」
亮は深く考えず、シャワーを浴びた。立て続けの仕事のせいか、疲労感から睡魔に襲われる。
まぁ。起きれば帰ってきているだろう。そんなことを考えながら、亮は眠りについた。
*
目を覚ましても、琥珀の姿はどこにもなかった。
亮は嫌な予感がし、電話を掛ける。
『プルルル』
出ない。琥珀の身に何かがあったんじゃないか。そんな焦りから体が震える。
亮は急いで祐に電話を掛ける。
祐「御子柴さん?どうかしましたか?」
亮「祐。聞いてくれ。琥珀の姿が見えないんだ。もしかしたらあいつの身に何か――」
祐「ちょ、ちょっと落ちついてくださいよ。琥珀さんがどっか行ったってことですか?」
電話越しの祐は寝起きのような声だった。
祐「別に琥珀さんももう大人ですし、全然あり得ると思いますけど。心配なら携帯端末の位置情報辿ればわかるんじゃないですか?ちょっと待っててください。」
亮「え、ああ。そうか。」
携帯の先の祐はそう言って、パソコンを取り出し何やら作業を始めた。
祐「それより、亮さん。今日締め切りですけど。大丈夫ですか?昨日までの外部依頼報告書。」
亮「え、ああ。そうだった。まずい。急いで本部に向かう。」
祐「琥珀さんのことは任せてください。それに琥珀さんは強いんですから、そこまで心配する必要も無いと思いますよ。」
亮は納得してしまった。琥珀がギャンブルで負けたとは考えにくい。
可能性としてあるのは、長時間かけて行うタイプのギャンブルに挑んでいるということだ。
それなら電話がつながらなくても仕方がない。
亮「まぁ。確かにそうだな。」
その言葉は自分に言い聞かせるものだった。
*
祐「…落ち着いて聞いてください。」
亮「お、おう。」
額に冷汗が流れる。
祐「御子柴琥珀さんの死体が見つかりました。」
亮「…。」
世界が、壊れた。
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