第54話 琥珀色の過去④
御子柴琥珀が個人的な依頼を受けるようになったのと同時期、御子柴亮の仕事は忙しさを増していた。
新たにラピダリーに入ってきた外部依頼、サーカスを巡るトラブルが発生し亮は各地に回ってそれを収める仕事をしていた。
祐「御子柴さん。最近多いですね。こう言った内容の仕事。」
亮「仕方ないことだ。新しい依頼なんだ。上が予想していないことも起こる。」
亮は後輩の黒服である四十万祐の運転に揺らされていた。
祐「とはいえ、わざわざ自分たちが対応する必要ってあるんですかね。」
亮「なに。面倒ごとの解決にはこれが一番効果的だろ?」
亮は自身の拳を突き出した。
祐「自分も同じ部署にいるのにこんなこと言うのも変なんですけど、それって解決になってるんですかね?」
亮「まぁ、手っ取り早くはあるだろう?」
ニヤリと笑いながら亮は拳を元に戻す。
握っていた拳の手汗をズボンで拭った。
*
亮「あんたらがウチのギャンブラーにずいぶん危険なまねをさせたようですね。」
そこは小さなヤクザ事務所だった。複数人居る構成員に囲まれながら、亮はソファに座り、祐はその後ろに立っていた。
ヤクザ「いやいや、危険も何も。わしらがやったのは了承ありきでっせ。」
向かいに座るヤクザは偉そうにふんぞり返っていた。
亮は資料を手に話し出す。
亮「面白いゲームですね。お互いに好きな武器を1つ持って殴り合い、最後まで立っていた奴が勝ち。」
亮はゆっくりと立ち上がった。それを見て周りの構成員が重心を低くし構える。祐も身構える。
亮「でも、これをギャンブルというのは少々無理があるかと。あくまでラピダリーはギャンブラーの派遣会社。何をしてもいい便利な人をあてがうサービスじゃないんですよ。」
資料を向かいに座る男に投げつける。
亮「もしこのゲームがしたいなら、俺たちが相手になってやるよ!」
その声を聞くと同時に周りを取り囲んでいた構成員が一斉にとびかかって来る。
*
周りでボロボロに倒れる構成員たちの上にわざとらしく亮は座り込んだ。
「っう」
という鈍い声を上げる構成員を無視し、先ほどまでふんぞり返って座っていた男に視線を向ける。
祐は手に着いた血を白いハンカチで拭いていた。
亮「んで、どうします?」
ヤクザ「ひぃぃ、す、すみませんでした!お金は、お金は払いますんで。」
ふんぞり返っていた男は頭を床にこすりつけていた。
亮「二度と、こうした依頼はウチに頼まないでくださいね。次はありませんよ。」
そう言うと亮は立ち上がり、男に背を向けた。
亮「祐。いくぞ。」
祐「はい。御子柴さん。」
ラピダリーにおける亮の仕事はこういった荒事担当だった。
*
祐「にしても、本当にどうにかならないんですかね。こんな依頼ばっかだと俺らの仕事も増えて困っちゃいますよ。」
二人は車に揺らされていた。
亮「まぁ仕方ないさ。刺激を求めてギャンブラーを集めた連中だ。次第に求める刺激はエスカレートする。解決するには上がもっと依頼を丁寧に精査するしかない。」
祐「それっていつになるんですかね…」
亮「さあな。」
走る車の中、亮はあることを考えていた。
エスカレートする刺激。もしその矛先が琥珀に向いたら…。
祐「それと、亮さん。眼鏡に血ついてますよ。」
亮「え?おお。マジだ。全然気が付かなかった。ありがとな。」
眼鏡を拭きながら考える。
大丈夫だ。琥珀は強い。きっと大丈夫だ。
*
亮「ふぅ…ただいま。」
亮が家に帰宅した時間は遅かった。
琥珀「あ、おかえり、兄ちゃん。」
御子柴琥珀は亮の顔を見ると心配そうに駆け寄った。
琥珀「どうしたの?なんかあった?」
亮「いや、最近仕事が多くてな。疲れてるだけだよ。風呂、先に入るな。」
琥珀「うん。」
琥珀の表情が少し硬い。そんな気がした。
*
琥珀「今日の仕事はどうだったの?」
食卓を2人で囲みながら話していた。
亮「いつも通りさ。明日以降も同じような仕事が入ってる。それも少し遠い場所でな。数日帰って来ないことになるが、大丈夫か?」
琥珀「う、うん。大丈夫だよ。兄ちゃん気を付けてね。」
亮「悪いな。ごちそうさま。俺は明日も早いから今日はもう寝るぞ。」
琥珀「え、あ。おやすみなさい。」
食器を台所まで持っていく。
琥珀「あのさ、兄ちゃん…」
亮「んぁ?どうかしたか?」
眠たそうな瞼を無理やりこじ開け琥珀に視線を向ける。
琥珀「あ、いや。皿は俺が洗っとくからさ。もう寝ていいよ。」
亮「おう、そうか。ありがとうな。」
亮はそう言って寝室に向かう。
琥珀は何かを言いかけていた。何を言おうとしていたんだ。重要な話か?
亮の思考は、睡魔に遮られ次第に意識は離れていった。
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