第53話 琥珀色の過去③
御子柴琥珀が王石《crown》クラスに上がってから1週間ほどが過ぎた。
琥珀「やっぱり本部のカジノでは稼げる額はたかが知れてるな…」
琥珀は家で口座の残高を確認していた。
30億にはまだまだ届かない。カジノにある運否天賦のギャンブルでは波があり、上手く稼げない。
琥珀は頭を抱えていた。
王石《crown》クラスという地位が琥珀の決闘相手を減らしていた。
そしてそれは琥珀だけではない、鈴間翠と非張羽も同様だった。
琥珀「今がチャンスなんだ。決闘が得意なあの2人より先に行かないといけないのに、今のままだと追いつけない…」
『ブブブ』
携帯が震え通知が響く。
【外部依頼 ラピダリー所属ギャンブラー10名 賞金:最高3000万】
それは、初めてのサーカスの依頼だった。
*
琥珀「じゃあ、兄ちゃん行ってくるよ。」
亮「おう、琥珀なら心配いらないが、一応気をつけろよ。今回の依頼はラピダリーでも初めてのことで、何があるかわからないんだ。」
琥珀「あはは、大丈夫だよ。俺が負けると思う?」
亮「まさか。」
奇妙な依頼だった。誰でもいいからラピダリー所属ギャンブラーを10人寄越してくれ。
依頼元は東院連合。
有名な暴力団組織。
これまでも暴力団組織がらみの依頼はあった。だが、たいていは麻雀やポーカーといったギャンブルの代打ちで1人、多くて2人を依頼される程度だった。
何かおかしなことが起こり始めている。
いや、琥珀は大丈夫だ。あいつは強い。
溢れそうな嫌な予感を押さえつけ、亮は琥珀を見送った。
*
帰ってきた琥珀は嬉しそうな顔をしていた。
亮「おかえり、その様子だと勝ったようだな。」
琥珀「もちろん。余裕だったよ。」
亮「ッフ。流石だな。」
やはり杞憂だったようだ。亮は胸をなでおろした。
亮「ちなみにどういった内容の依頼だったんだ?」
琥珀「あー。なんかね、ラピダリーのギャンブラーを集めて競わせてそれを観客が見て楽しむみたいな感じだったよ。」
亮「なんだそれ?」
琥珀「イメージ的にはサーカスみたいな感じかなぁ。」
亮「サーカスねぇ…」
亮は無理やり納得したように声を出した。
それから数か月、琥珀は外部依頼をこなしていった。
そんなある日の出来事だった。
*
琥珀「ねぇ、兄ちゃん。」
外部依頼を終え、帰ってきた琥珀の顔は険しかった。
亮「ん?どうかしたのか?」
琥珀「外部依頼の報酬、ラピダリーが中抜きしてるって本当なの?」
亮「中抜き?依頼料のことか?」
琥珀「それ!どういう割合になってるの?」
琥珀が顔を亮に近づける。目には疑いが混じっていた。
亮「え?ど、どうしたんだよ。」
琥珀「いいから。答えてよ。」
亮「確か、依頼側の提示した報酬の半分とかだったと思うが。俺の専門は荒事の解決だから、詳しいことは分かんないんだ。」
琥珀「半分…やっぱり…じゃあ…」
琥珀はぶつぶつ呟いた。
亮「どうしたんだ?なんかあったのか?」
琥珀「実は今日、いつもの外部依頼の運営って名乗る男と話したんだ。」
亮「いつものって、例のサーカスか?」
琥珀「うん。その人が、ラピダリーに払う仲介料が高いうえに、狙ったギャンブラーが必ず来るとも限らないから個人的に俺に依頼したいって。」
亮「運営って東院連合か?」
琥珀「うん。」
亮「おお、そうか!良かったじゃないか!琥珀は認められたんだな。」
亮は嬉しかった。琥珀の成長が外部の人間にも認められたような気がして。
琥珀「え?いいの?だって、ラピダリーを通さないと兄ちゃん的には損だったりしない?」
亮「別にいいんじゃないか?むしろ、琥珀が多く稼げるんだろ?翠と羽に大きく差をつけるチャンスじゃないか。」
琥珀「兄ちゃん…ありがとう。」
亮は琥珀の強さを信じていた。
外部依頼程度で負けるわけがないと思っていた。
そんな自分を許した日など1日も無かった。
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