第47話 十層監獄①
『カラーン』
玉木硬は恐る恐るBarの扉を開けた。
何故か、申し訳なさで押し潰されそうだった。
翠「…亮ちゃん、お疲れ様。」
バーカウンターに座る翠の笑顔は暖かかった。
亮「おかえり、今飲み物を用意してやるから少し待ってろ。」
御子柴亮の目も優しかった。
硬「…ごめんなさい。ごめんなさい!翠さん!」
硬の目頭が熱くなった。
*
翠「大丈夫?落ち着いた?」
涙で崩れた硬が席について落ち着くまでに時間がかかった。目の前には亮の作ったドリンクが置かれている。
硬「…はい。大丈夫です。」
翠「そっか、良かった良かった。さて、硬ちゃんこれからどうしようか。」
亮「翠、お前が硬君にいくらか渡せばいいんじゃないか?」
翠「まぁ、それが一番妥当かな。流石に500円じゃいつ終わってもおかしくないしね。」
淡々と決めていく2人。硬は下唇を強く噛んだ。
硬「…そういうわけにはいきません。」
翠「…。というと?」
翠の顔は笑顔だった。
硬「これ以上、翠さんから何かを貰うことはできません…。」
膝に乗せた手を強く握りしめる。
翠「そっか。分かった。」
亮「な、おい、翠。」
亮は焦ったように目線を翠に向けた。
硬「500円も必ず返します。」
翠「わかった。待ってるよ。で、どうするの?」
硬「外部依頼に挑戦します。」
硬は携帯端末を取り出し、その画面を2人に見せた。
【外部依頼:ラピダリー所属ギャンブラー10名。賞金1000万、500万、100万、50万、10万円。参加希望者は以下のフォームから回答してください。】
*
予定の時間、集合場所の10階建てほどの廃ビル前に硬は来ていた。
硬「外部依頼に挑戦して、1人で戦おうと思っていたのに…。」
硬は隣に目を向ける。
硬「どうして翠さんがここにいるんですか!!」
翠「何言ってるの?硬ちゃんが外部依頼に出るなら俺も出るに決まってるでしょ。最近一緒にギャンブルやってないし。」
硬「そりゃ、翠さんがいた方が嬉しいですけど…でも、俺1人で勝てるようにならないといつまでも翠さんに依存することに…」
翠「硬ちゃんにはまだ早いよ。さ、行こう。俺らはバディなんだし。」
翠は廃ビルの中に足を進めていく。
硬「ま、待ってください!!」
二人の姿はビルに消えていった。
*
ビルの中は錆の匂いが鼻をくすぐった。
窓は所々割れていて、外の冷たい風が室内を通り抜けていく。
埃が積もった廊下は所々薄汚れている。壁にはいくつもカメラが取り付けられていて、まるで監視をしているかのようだった。
硬「…埃っぽいですね。」
翠「だね…とりあえず集合場所の5階に向かおうか。」
翠はエレベーターのボタンを押した。
しかし、ボタンは反応しない。
翠「…あれ?もしかしてエレベーター動かない?」
ボタンを何度押しても『カチッカチ』という乾いた音が響くだけだった。
硬「…階段使いますか。」
翠「えー。」
階段の扉には内鍵がついていた。
*
翠「はぁ…はぁ…階段はきついね…」
硬「あはは、翠さん体力ないですね。」
硬と翠は階段の扉を開けた。
廃ビルの5階。サビ臭いにおいが充満していた。
そこには数人の集まりと沢山のカメラが付けられ、正面にはプロジェクターで画面が表示されていた。
【しばらくお待ちください。】
翠「さて、どんなゲームをやらされるのかな。」
翠はそう呟くと壁を背もたれにし、床に座った。
硬は周囲を見回した。ゲームに使いそうなものは何もない。
様々な憶測が頭を駆け巡る。
1階ではなく、なぜ5階が集合場所なんだ?
硬の考えを他所に1人、また1人と部屋に入ってくる。
【参加者が全員集まりました。これより「十層監獄」を始めたいと思います。】
プロジェクターの画面が変わる。
翠は冷たい目でそれを見ていた。
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