第46話 琥珀色の過去①
~2年前~
エレベーターが開くのを今か今かと待っていた。
御子柴亮は車の運転席でそわそわとしながらハンドルを握っていた。
翠「亮ちゃんそんなにそわそわしないでもすぐに来るって。」
羽「まぁそわそわする気持ちは理解できるけどね。」
後部座席から体を乗り出す鈴間翠と非張羽はニヤニヤしながら亮の表情を窺っていた。
亮「そわそわしてないさ。いいから座って待ってろ。」
亮の上がった口角を見て満足そうに二人は後部座席に腰掛けた。
翠「いや~でもこれで俺ら3人全員が王石《crown》クラスになったね。」
羽「まぁ俺らなら絶対に行けると思っていたがな。」
翠「まぁね。」
二人の天才は軽い口調で話し合っている。
そんな二人の話を聞いていると、ピントが合っていたエレベーターが開いた。
亮はたまらなくなり、窓を開け、手を振った。
亮「おい!こっちだ!」
琥珀「あ!兄ちゃん!!」
*
翠「琥珀ちゃん!王石《crown》クラス到達おめでとう!!」
羽「おめでとう。」
琥珀「あれ?翠さんと羽さんまで来てたんですか?」
御子柴琥珀は後部座席に座る2人を見て驚いた。
亮「お前は助手席だ。早く座れ。」
琥珀「うん。わかった。」
助手席に座りシートベルトを着ける。
亮「琥珀、よくやったな。」
琥珀「…!ありがとう。」
亮はただただ嬉しかった。実の弟が王石《crown》クラスに昇格したことが。
翠「なんか、俺らが昇格した時より嬉しそうじゃない?」
ハンドルを握りアクセルをゆっくり踏む。
羽「弟だから特別なのは当然でしょう。」
亮「ッフ。別に翡翠の2人が昇格したときも喜んださ。」
地下駐車場から眩しい地上へと進んでいく。
亮「お前ら、一応ギャンブラー側なんだ。アイマスク、忘れるなよ。」
晴れ渡った空は今の亮の心を表しているようだった。
*
~1年前~
黒服「御子柴さん…今少しいいですか…」
険しい顔つきの黒服が亮に耳打ちする。
亮「!どうだ?何かわかったか!?」
黒服「…落ち着いて聞いてください。」
亮「お、おう。」
額に冷汗が流れる。
黒服「御子柴琥珀さんの…死体が見つかりました。」
亮「…」
世界が、壊れた。
黒服「見つかったのは山奥でした。埋まった状態で発見されて、腕には注射の跡があり――」
手が止まる。瞬きすら忘れていた。なんで、どうして、どうして琥珀が…
手が震え、目が泳ぎ、胃が熱くなる。酸っぱいものが逆流してくる。それを必死に抑えて。息をする。
亮「…誰だ。誰が犯人なんだ。」
誰が犯人なのかはわかっていた。
黒服「…多分。東院連合かと…」
『ガタッ』
亮は立ち上がりふらふらと歩きだした。
黒服「御子柴さん?どこに――」
亮「今日。サーカスやってたよな。確か依頼主は東院連合だったはずだ。」
黒服「!まさか!」
扉に手を掛ける。
黒服「待ってください!そんなことして許されるわけがありません!気持ちは分かりますがいったん冷静になって下さい!」
亮の頭はぐちゃぐちゃだった。ただ頭に1つだけ確かなものがあった。
【殺す】
外は雨が降っていた。とても強い雨だった。
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