第43話 Cupid・Lovers⑤
私の家は貧乏だった。
小学生の頃父親が借金を残して蒸発したあの日から私の人生は決まったと思う。
母親はほとんど家にはいなかった。偶に帰ってくる時は決まって知らない男と一緒だった。
中学生の頃、母が連れてくる男から値踏みされるような目で見られ、母親からは邪魔者を、ゴミを見る目で見られた。
学校では汚いと言われた。キモいと言われた。
ただお金が無いというだけで。
私は荒んでいた。全部がどうでもよくなった。
友達から逃げ、家族から逃げ、同じような境遇の人たちと出会い、非行の道に走った。
そこで知った。ギャンブルという世界。
まだ学生だった私はその希少性からお金を持っていなくても、ギャンブルに参加できた。
当然負ければ待っている仕打ちは恐ろしい物だろう。
でも私は負けなかった。才能があった。同じ非行仲間にも頼られた。初めてできた友達は心から笑えるものだった。友人のおかげで私は生きる意味を見つけられたそんな気がした。
「ラピダリーという会員制のギャンブルクラブがあるらしい。そこに入れれば今以上に多くの額が稼げる。この前戦った人が私たちを紹介してくれるらしい。」
そんな友人の勧めに乗って私はラピダリーへ足を踏み入れた。友人と一緒なら私はどこまでも行ける。友人と一緒にラピダリーで荒稼ぎしようと思った。
でも、結果は私の想像していたものではなかった。
「なんで!なんで!あんただけラピダリーに入れるの!!私はダメだったのに…」
入会試験ミドル・キングダム。私が3位で、目の前で泣く友人は4位。
「あんたが、あんたがあそこで3ptなんて選ばなければ!!!!」
猫芽「ご、ごめん。でも私も…勝つためには…」
友人の目は今でも覚えている。怒りに満ちていた。
猫芽「ご、ごめんね。そうだ!次の入会試験に挑もう。私が紹介するから、お金も私が出すから!」
だが、友人が入会試験に挑むことはなかった。それどころか私がラピダリーで手に入れたお金を全て持って私の前から姿をくらました。
「石川猫芽様。あなたは全財産を失ってしまったため、ラピダリーからは退会となります。」
猫芽「そ、そんな。私は負けてない!友達が全て持って行っちゃって…」
「申し訳ございませんが、退会条件はいかなる理由であれ全財産を失うことです。」
猫芽「そんな…」
「しかし、もしあなたが望むなら、あなたの体の一部、まだお金になる部分が残っているはずです。どうしますか?」
視界が歪んでいた。私は忘れていたのだ。この世界は金が全てであるということを。
猫芽「…お願いします。」
私は残った身体を担保にラピダリーへ残った。
そして必死に勝ち続けた。
負ければ全てを失う。
だから勝つしかなかった。
私にはギャンブルの才能があった。勝った。勝って今日まで生き残った。
盗まれた額以上のお金をギャンブルで手に入れた。
気がつけば原石《rough》クラスから研磨石《cut》クラスに上がっていた。
生活も夢見ていた普通の暮らしができるようになった。
だから、手元のお金が増えれば増えるほど私は恐ろしくなった。
もしこれを失ったら…
またあそこに戻ることになるかもしれない。
嫌だ。
嫌だ。嫌だ。
戦いたくない。失いたくない。
私はギャンブルでお金を稼ぐのをやめた。昔の母がやっていたように、男を騙してお金を稼ぐ道を選んだ。
全ては失わないために…。
そんな自分を目の前にいる男に、硬とかいう雑魚に見抜かれた。
それが無性に腹立たしかった。
硬:0pt 猫芽:1pt
「3pt」「恋人」「1pt」
↑
猫芽は「1pt」のカードに手を重ねた。
私を見抜かれた。
猫芽は「1pt」のカードを持ちあげた。
“昔の私”を見抜かれた。
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