第42話 Cupid・Lovers④
硬:0pt 猫芽:1pt
黒服「それでは最後、3ターン目と行きましょうか。順番は再び変更し、先攻玉木様。矢をどうぞ?」
黒服に促されるように玉木硬は矢を持った。手が震えているせいか矢の先が2重に見えた。
3ターン目 先攻:硬
石川猫芽はカードを見つめ、ゆっくりと伏せた。
どこだ。どこに置く…【「1pt」「2pt」「3pt」】
今の点差は1pt差。2pt以上を取りたい…。
でも彼女がそこに置くとは思えない。【モンティホール問題】
でもそれすら読んでいたら…【臆病者】
まずい、分からない…どこまで彼女は読んでいるんだ…。【男をだまして金を稼ぐ】
俺はどこまで読まれているんだ…【豪快な人間】
思い出せ…きっとヒントはあったはずだ…【500万】
彼女の性格を読むんだ…【安全に立ち回るタイプ】
硬の脳が熱を帯びる。
彼女は強い。1ターン目に外したのもきっとわざとだ。
俺に彼女が臆病者であるという意識を埋め込ませようとしていたに違いない。
つまり彼女は完全に読み切っている…俺の性格を…。
たった数日のデートやメールや俺と小林との対戦を見て彼女は俺を知り尽くしている。
…
だが、それは俺も同じだ。
彼女はギャンブルではなく、本心を隠してかわいそうな女性となってお金を稼いでいる。
今まで引っかかった男は何人もいただろう。
彼女はギャンブラーじゃない。たまたまギャンブルが得意なだけのただの1人の女性だ。
安全に立ち回り、失うのを恐れている女性だ。
だって、彼女はオールイン決闘に乗らなかった。
2ターン目だってこちらを読み切ったようなことを言っていたが「3pt」に置く勇気が無かっただけだ。
初めから彼女は臆病なんだ。
硬「あなたは、臆病者です…」
猫芽「…は?」
硬は矢を突き立てた。
「3pt」「2pt」「1pt」
↑
*
臆病者?私が?
猫芽は突き立てられた矢を見つめることしかできなかった。
猫芽「どういう意味?」
硬「そのままの意味です。あなたは初めからずっと臆病者だった。」
黒服「石川様。カードの公開を――」
猫芽「ちょっと黙ってて。」
鋭い目つきで黒服を睨みつける。
猫芽「どこが、臆病者だっていうの?」
硬「…あなたはギャンブルで勝負せず、かわいそうな自分を演じることでお金を稼いできた。あなたはギャンブラーじゃない。あなたは戦いを恐れている。」
猫芽「じゃあ、今は何だっていうの?戦ってるじゃん。」
硬「いいえ。あなたがはじめに賭けたのは500万円。俺があげた500万円。本来この勝負はあなたにとって負けてもデメリットの無い勝負でした。」
硬の目は熱く燃えていた。
猫芽「…」
硬「結果として額は700万近くまで膨らみました。でも、そのうち500万は元々俺のお金だ。あなた自身が失うのは実質200万程度でしょう。宝石《Gem》クラスの人間からしたら安い額だ。」
猫芽「…だから?私が大きい金額の勝負に出ないから臆病者だっていうの?」
猫芽の目は怒りで震えているようだった。
硬「それだけじゃない。あなたは1ターン目に「1pt」、2ターン目に「2pt」に白紙を置いた。「3pt」には置かなかった。置けなかった。そんな勇気はあなたには無い。」
猫芽「…ずいぶんと自信気に言い切るんだね。なら、当ててみなよ!!!」
猫芽は力強くカードをめくった。
「3pt」「恋人」「1pt」
↑
開かれたのは「2pt」。
猫芽「豪快なあなたが好きな「3pt」か、安全な私が好きな「1pt」か。」
硬の目は熱く燃えている。矢には触れずただ猫芽の目を見ている。
硬「変えません。俺が選ぶのは臆病なあなたが好きな「1pt」です。」
猫芽「…こいつ!」
どうしてだろうか。臆病者と言われると無性に腹が立った。
まるで私の本性がバレているようで。
猫芽「私は臆病者じゃない…その私はもう捨てた、私の脳を焼いた戦いを見てから…」
猫芽は小さく呟いた。
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