第41話 Cupid・Lovers③
硬:1pt 猫芽:-1pt
黒服「では2ターン目は順番を入れ替えましょうか。先攻キューピッドは石川様。」
石川猫芽は机の上の矢を手に取った。
・2ターン目 先攻:猫芽
玉木硬はどこに白紙をセットするか考えていた。
彼女は今追い詰められている。どのptを選んでも外せば負けになる状況…
つまり、このターンに限り彼女の臆病は関係がなくなる。
硬は数秒考えこみ、「2pt」に白紙を伏せた。
「3pt」「2pt(白紙)」「1pt」
今の彼女はいわば自棄になっている状況と一緒。そう言った状況下では、ここが心理の隙間。
選びたくなる。最も大きい3の数字を。
硬「どうぞ。」
硬の声を聞くと猫芽は迷いもせず矢を突き立てた。
猫芽「ここ。」
「3pt」「2pt(白紙)」「1pt」
↑
硬「…え?」
この状況で「1pt」?いや、おかしい話ではないが、彼女はどこまで臆病なんだ…
黒服「では、玉木様1枚恋人を公開してください。」
硬「は、はい。」
「恋人」「2pt(白紙)」「1pt」
↑
猫芽「迷ってたのよね~。」
硬「え?」
彼女の口元はハッキリと歪み切っていた。
猫芽「私って安全に立ち回るタイプでしょ?だからここは絶対に3ptか2ptのどっちかをいただきたかったの。」
硬「な、何を言ってるんだ?」
猫芽「だからあなたに答えを聞くことにしたの。正解は2ptの方だったんだね。」
彼女の顔はデートの時に見せた綺麗な笑顔だった。
造られた笑顔だった。
硬「な、何言ってるんだよ…1ptの可能性だって――」
猫芽「あなたってそういうタイプじゃないでしょ。一気に500万くれたり、調子乗ってオールインするような豪快なタイプ。私がカモにする、分かりやすくて単純なタイプ。そんなちまちましたことはしないでしょ。」
猫芽は矢を手に取り、「2pt」に突き立てた。
「恋人」「2pt(白紙)」「1pt」
↑
猫芽「変更。私の選択はこっち。」
「恋人」「 」「1pt」
↑
黒服「お見事!無事キューピッド成功です!!」
猫芽「アハハハハ!」
猫芽は楽しくて仕方なさそうな笑顔で天を仰いだ。
舐めていた。目の前にいるのは今まで戦ってきたギャンブラーじゃない。
翠さんや柘榴と同じ宝石《Gem》クラスなのだ。
デートを通じて彼女を読み切った気になっていたが、それは彼女も同じ。
硬は額に汗をかいた。
硬:1pt 猫芽:1pt
2ターン目 後攻:硬
「3pt」「2pt」「1pt」
どこだ、彼女はどこに白紙をセットする。
彼女は言った。俺が豪快な人間であると。つまり彼女は俺が「3pt」を選ぶと読んでいるのか?いや、逆にあえて「1pt」に配置している?
どこだ…どこにある…
猫芽「ほら、早く選んでよ。たかだか1回言い当てられただけで怖気づいちゃうの?」
猫芽は頬杖をついて硬を見つめている。
猫芽「かっこいい硬君がみたいなぁ~」
わざとらしい猫なで声は硬に苛立ちを覚えさせた。
硬「…ここだ。」
「3pt」「2pt」「1pt」
↑
硬が選んだのは「2pt」。
冷静に考えればこれでいいんだ。今俺と猫芽は1pointで並んでいる。となると臆病なあいつは差が開くようなことはしない。
つまり、「3pt」はありえない。
黒服「では、石川様。恋人の――」
猫芽「はいはい、公開でしょ。」
猫芽は黒服の声を遮りカードをめくった。
「恋人」「2pt」「1pt」
↑
開かれたのは「3pt」。
予想通りだ。問題は「1pt」か「2pt」どっちかだ…
待てよ…なぜ彼女は今3ptのカードを公開したんだ?
彼女は言った。俺が豪快な人間であると。となると、「1pt」と「3pt」が恋人カードだった場合、残すべきは「3pt」の方じゃないか?
それなのに開かれたのは「3pt」だった。
つまり、「3pt」を開かざるを得なかった。なぜなら「1pt」は白紙だから。
硬「変更します。」
「恋人」「2pt」「1pt」
↑
硬は「1pt」に矢を突き立てた。猫芽の歪んだ笑顔が崩れることはなかった。
「恋人」「2pt」「恋人」
↑
猫芽「残念でした~。ごめんね。」
わざとらしい猫なで声の彼女は「1pt」に伏せられていた恋人カードをひらひらとつまんでいた。
硬「ック」
黒服「残念。硬様は恋人持ちにキューピッドの矢を刺してしまったため、減点となります。」
硬:0pt 猫芽:1pt
猫芽「あなたは今、自棄になってる。だから「2pt」は心理の隙間ってこと。あなたがやったのと同じことだよ。」
*
亮「逆転されてしまった…」
翠「…まずいな。明らかに彼女の方が1枚上手だ。」
鈴間翠は拳を握り込んだ。彼女の強さを甘く見ていた。
御子柴亮は口元に手を当て眉間にしわを寄せている。
翠「次が勝負だ。もし次硬ちゃんが外せば、もう勝ちは無い…」
亮「…硬君は全財産をかけていたはずだ。負けたらラピダリーにいられない。」
翠「それで済めばいいよ。彼の場合、ラピダリーに残るために内臓の1部を売るとか言いかねない。何より、ラピダリーはそうした残留は容認している…」
亮「硬君は危ういところがある…。もし、黒服に提案されたら…。」
2人の間に重たい空気が流れた。
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