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第39話 Cupid・Lovers①

【黒服「では、これより「Cupid・Lovers」のルール説明を行います。」】


翠《あきら》「Cupid・Lovers…。聞いたことないゲームだな…。」


亮《りょう》「最近できたやつじゃないか?」


翠「かもね。運の要素が少ないと良いんだけど。硬ちゃん、運はあんまり強くないから。」


鈴間翠《すずまあきら》と御子柴亮《みこしばりょう》はBar琥珀のバックヤードで玉木硬《たまきこう》と石川猫芽《いしかわねこめ》の決闘を見ていた。


Barにはルール説明を行う黒服の声が響いていた。


*


黒服「今からお二人には恋のキューピッドになっていただきます。ロマンチックでしょう?」


猫芽「ッハ、くだらな。」


黒服に目線を取られていたせいで机の上の小道具に目がいっていなかった。


硬はあらためて机の上を見る。そこには3本の矢と3枚のカードが置かれていた。机の上にはカードと同じ大きさの枠線と、その外側に「3pt」「2pt」「1pt」の文字。


黒服「キューピッドの仕事は何だとお考えですか?玉木様?」


硬「え?ええと、神様に仕える…とかですかね?」


黒服は不服そうに眉をひそめた。


黒服「はぁ、残念。もっとロマンチックに行きましょう。キューピッドと言えば恋、LOVEですよ。人の恋路を成就させること、それがキューピッドです。お二人にはこれから恋路を応援してもらいます。」


猫芽「は?」


きつい目をした猫芽を無視し、黒服は話を続ける。


黒服「では、まず手元のカードをご覧ください。」


カードは3枚、表面には男の絵が描かれていた。


黒服「このカードの表面には自身と同じ性別が描かれていると思いますが、肝心なのは裏になります。」


カードをめくると後ろに女の絵が描かれたカードが2枚、そして何も書かれていないカードが1枚あった。


硬「これって、どういう…」


黒服「キューピッドは人の恋路を手助けする。でも、すでに恋人がいる人物の手助けをしても意味がありません。」


『パチンッ』


黒服は指を鳴らし、反対の手でモニターを操作した。モニターにはルールが表示されている。


硬「その指パッチン必要だったかな…」


【Cupid・Lovers

■ 勝利条件

•全3ターンのポイント制。最終的な獲得ポイントが多いプレイヤーの勝利。

■ セットフェイズ

•各プレイヤーは「白紙」1枚と「恋人持ち」2枚の計3枚のカードを使用する。

•カードを伏せた状態で、机に用意された「3pt」「2pt」「1pt」の3つの枠に1枚ずつ配置する。

■ ターンの流れ

① 【選択】 プレイヤーは、相手の配置した3枚のカードから1枚を選び、矢を立てる。

② 【恋人持ちの公開】 選ばれなかった残りの2枚のうち、必ず「恋人持ち」のカードが1枚オープンされる。

③ 【変更の選択】 プレイヤーは、矢を立てるカードを「最初のまま」にするか、「残ったもう1枚の伏せカードに変更」するかを選ぶことができる。


■ ポイント計算(正解発表)

•「白紙」を射抜いた場合 = その枠のポイントを獲得。

•「恋人持ち」を射抜いた場合 = その枠のポイントを減点。】


黒服「いかがですか?楽しそうなゲームでしょう?」


硬はルールを理解することに頭を必死に動かした。


黒服「このゲームの重要なポイントはここ。」


『パチン』


黒服が再び指を鳴らしながらリモコンでモニターを操作する。


猫芽「そのダサい指パッチンいるの…?」


【② 【恋人持ちの公開】 選ばれなかった残りの2枚のうち、必ず「恋人持ち」のカードが1枚オープンされる。

③ 【変更の選択】 プレイヤーは、矢を立てるカードを「最初のまま」にするか、「残ったもう1枚の伏せカードに変更」するかを選ぶことができる。】


モニターには②と③のルールがアップで表示される。


黒服「このカードの変更。ここがこのゲームの肝なんです。」


硬「何かどこかで聞いたことがあるような…」


猫芽「要するにモンティホール問題ってことね。」


黒服「…面白みのないギャンブラー達ですね…」


黒服は寂しそうな顔でうつむいた。


猫芽「つまり白紙カードを射抜ければ得点、恋人持ちを射抜けば失点ってことね。いちいち世界観の説明とかいらないから。」


黒服はうつむいたまま、机の上の矢を手に取った。


黒服「悲しいですね…私の楽しみなのに…」


そしてその矢を机に突き立て、


黒服「まぁいいでしょう…それでは1ターン目の先攻キューピッドを決めたいと思います。」


手を離した。突き立てられた矢はバランスを崩し、倒れる。


黒服「では、矢の倒れた玉木様が先攻といたしましょうか。」


*


翠「モンティホール問題。有名な確率の問題だね。選択を変更したほうがあたりを引く確率が高くなるっていう。」


亮「…なぜ?」


翠「ううん。まぁ簡単に言うと3択の状態から選んだはじめの確率より、1枚公開されてからの方が確率が高くなるってこと。」


亮「…?」


亮は眉間にしわを寄せながら顔を傾けた。


翠「分かってなさそうだね…じゃあこのカードが100枚で当たりが1枚で考えてみてよ。1枚選んで、外れが98枚公開される。残った1枚と自分が最初に選んだ1枚どっちがあたりだと思う?」


亮「それは残った1枚だろ。」


翠「そういう話。」


亮「じゃあ硬君は矢を刺す場所を変更すればいいんだな。」


翠「まぁ、ポイントもあるんだ。そう単純にはいかないよ…心理戦がメインだ。硬ちゃんにとっては有利なゲームかもね…。」


二人は画面を見つめていた。

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