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第37話 キャッツアイ②

硬「ご、ごめん遅くなって!」


都内の駅に彼女は待っていた。


猫芽「あ、硬さん!大丈夫です。私も今来たところですから。」


綺麗な洋服を身にまとった彼女は優しく微笑んでいた。


硬「本当ですか?」


猫芽「本当です。さ、行きましょう?」


硬は彼女に連れられチェーン店のファミレスに入店した。


猫芽「ごめんなさい。本当はもっと高いお店でお礼をしたかったんですけど…」


硬「いやいや、全然大丈夫ですよ!俺このファミレス好きですし!」


猫芽「本当ですか?良かったです。」


店員に連れられ席に着くと猫芽は深々と頭を下げた。


猫芽「昨日は本当にありがとうございました。おかげで今月分はどうにかなりました。」


硬「いやいや、本当に大丈夫だから。お礼も別に良かったのに…。」


猫芽「いえ、そういうわけにもいきません!せめてこのお店だけでも奢らせてください!」


硬「別に大丈夫なのに…猫芽さんって、まじめで優しい人なんだね。」


けなげな彼女に硬はほおが緩んだ。猫芽の口元も歪んでいた。


*


食事を終えた二人は何となく周辺のデパートに入っていた。


猫芽「うわ~。」


彼女の前には宝石のアクセサリーがずらりと並んでいた。


硬「どうしたの?欲しいのでもあった?」


猫芽「あ、ええとこの『キャッツアイ』の指輪が綺麗だなって思って。」


猫芽が指さした先にはキャッツアイという宝石が施された20万円の指輪があった。


猫芽「私、今までこういった物とは無縁で…」


硬「…この指輪でいいんだね。すいません。これください。」


猫芽「え?」


店員「はい。こちらの宝石ですね。」


猫芽「ちょ、ちょっと硬さん!」


硬「いいのいいの。それより指のサイズ。教えてよ。」


硬は猫芽にその指輪を買ってあげた。


貧乏だという彼女に情が移ったから。それ以外の理由に硬は何となく気が付いていた。


*


猫芽「うう…本当は私がお礼するはずだったのに…」


硬「良いの良いの。俺が好きでやったことなんだから。」


猫芽「硬さん…優しすぎますよ…!」


猫芽は目を両手で覆いその場にうずくまった。


硬「ちょ、ちょっと泣かないでよ。これくらい普通だよ。」


猫芽の口元は歪んでいた。でも硬からはそれが見えなかった。


*


いつの間にか時間は夜になっていた。


玉木硬《たまきこう》と石川猫芽《いしかわねこめ》はデパートを後にしていた。


猫芽「この後ってどうします?」


硬「あのさ、もしよかったら俺の行きつけのBarがあるんだけど、そこ行かない?」


猫芽「硬さん行きつけのBarがあるんですか!かっこいいですね!行きましょう!」


硬の向かう先はBar琥珀だった。


*


『カラーン』


亮「おう、いらっしゃ――」


猫芽「…!」


そう言って御子柴亮《みこしばりょう》は硬とその隣にいる女性を凝視していた。


猫芽は亮を見て、体をピクッと動かし顔を伏せた。


硬「亮さん。奥のテーブル席、借りますね。」


亮「え、お、おう。いいぞ、好きにつかってくれ。」


硬「さ、行こ。」


硬は彼女をエスコートするように席まで案内した。


亮はそんな二人にとっておきのカクテルを作り、振る舞った。


硬「亮さん、ありがとうございます。」


猫芽「…美味しそうですね。」


亮「え、ええ。当店自慢のカクテルになります。」


硬「そういえば、翠さんは?」


硬はBarの室内をキョロキョロと見回した。いつもいるはずの鈴間翠《すずまあきら》の姿が見えない。


亮「あぁ。なんか本部に行って知りたいことがあるとか言ってたな。」


硬「え?」


亮「何か気になることがあるらしい。まぁ、そういうわけだ。ゆっくり待ってればそのうち戻って来るさ。」


硬は額に汗を流した。翠さんに全て見透かされている。そんな気がした。


亮「ところで、君は硬君の彼女さん?」


亮は猫芽に視線を向ける。


猫芽「いえ、その、友人です。」


亮「ハハハ、そうか。硬君はいい子だからな。見る目があるよ。」


硬「ちょっと亮さん!」


和やかな空気が流れた。


亮「それじゃあ、ゆっくりしていってくれ。俺はできるだけ邪魔しないよう見ているからな。」


亮はバーカウンターへと帰っていく。


硬「ハハハ、面白い人でしょ。ここのマスターで実は元――」


猫芽「元ラピダリーの黒服…だよね、あの人。」


硬は猫芽の表情に驚いた。目に光が一切なかったからだ。


硬「え、うん。知ってるの?」


猫芽「…2年前からラピダリーにいる人は多分みんな知ってると思うよ。」


猫芽は目の前に置かれたカクテルを飲み干した。


猫芽「ごめん。予定思い出しちゃった。もう帰るね。また連絡するから会おう?」


そう言って彼女はそそくさとBarを出ていった。


亮「あ、あれ?なんだ?硬君喧嘩か?何か変なことでも言ったか?」


硬「…いや、予定思い出したみたいで。」


亮「まぁ、なんだ。そう落ち込むな。きっといい人がいるさ。」


亮の慰めは的外れだった。


*


翠「なるほど、ありがとうございます。」


翠は本部のカジノで聞き込みをしていた。


知りたい情報はただ1つ。昨日硬の身に何が起こったのか。


なんとなく情報が集まってきたな。


翠「はぁ。硬ちゃん。いくらなんでもチョロすぎるって…」


翠は頭をポリポリとかきながら昨日硬が座っていた場所に座っていた。


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