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Lapidary 500円から億万長者!階級制ギャンブル倶楽部【Lapidary】天才2人の快進撃!  作者: 春間 来善


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第36話 キャッツアイ①

猫芽《ネコメ》「えー!負けちゃったんですか?信じられない… Blind Sumであんな賭け方する人がそんな簡単に負けるなんて…」


硬《こう》「いや…厳密には負けてはないんだ。30万から始まったし。ただ1億が見えていたのに、手元には1000万しか残ってなくて…」


猫芽「ええ!?全然負けてないじゃないですか!!むしろ大勝ちじゃないですか!」


いつの間にか玉木硬《たまきこう》は石川猫芽《いしかわねこめ》に今日のルーレットについて話していた。


硬「いや、そうなんだけどさ…でももしかしたら手元に1億あったかもって考えると…」


猫芽「ううん…気持ちはわかります…でも手に入ったかどうかわからないお金より手元に残った物の方が大切だと思いますよ」


硬「そう…だよね。」


硬は自身の頬を『パチン』と叩いた。


硬「ありがとう!色々話聞いてもらって。」


猫芽「切り替えられたようなら何よりです。」


にっこりと笑う彼女の美しさに目を奪われる。


硬「…ていうか、猫芽さん、ここにいるって事は猫芽さんもラピダリーの?」


猫芽「はい。私は今研磨石(cut)クラスです。でも全然勝ててなくて…お金も全然ないんです…」


彼女は顔を伏せながらポツポツと話し始めた。


猫芽「私…家が貧乏で…ただ昔から運だけは良くて。それで昔友人に誘われて家族の借金を返すためにこの世界に入ったんですけど…凄い怖い世界じゃないですか…ここって…私、全然上手くいかなくて…」


彼女の目には涙が溜まっていた。


硬「あ、ごめんね。話したくなかったら話さなくても大丈夫だよ。」


硬は慌てて手を前に出し制止させる。


猫芽「フフ…ありがとうございます。優しいんですね、硬さんは。」


彼女の微笑みは温かかった。でも湿ったその目は笑っていなかった。


硬「そ、そうだ良かったらコレ。」


硬はそんな彼女が放っておけなくて500万チップを1枚握り彼女に向けた。


猫芽「え!?いや、頂けないですよ!」


硬「いや、いいんだ。さっき言ったけど30万から始まってるんだ。500万猫芽ちゃんにあげても、俺は大勝ちだよ。」


猫芽「ええ?でも…」


硬「話を聞いてくれたお礼だよ。」


猫芽「硬さん…。本当に優しすぎますよ。」


硬「家族のためにも、受け取ってよ。」


猫芽「…じゃあ。」


そう言って彼女は震える手で硬からチップを受け取った。


猫芽「ありがとうございます。本当になんでお礼を言えばいいのか…」


硬「良いの良いの。それより頑張ってね。」


硬は席を立った。


猫芽「あ、待ってください!」


硬「ん?どうかしたの?」


猫芽「ええと…良かったら連絡先とか…交換しませんか?」


彼女の顔が赤く染まっていた。硬もつられて顔に熱がこもった。


硬「う、うん!ぜひ交換しよう!」


猫芽「あ、ありがとうございます!」


彼女の口角がほんの少しだけ歪んでいた。


*


『カラ~ン』


翠「あ、帰ってきた。どうだった?硬ちゃん?」


亮「聞いたよ、3000万も大勝ちしたってね。で、手元にはいくら残っているんだ?」


鈴間翠《すずまあきら》と御子柴亮《みこしばりょう》はニヤニヤとした顔を硬に向けた。


硬「…」


翠「ん?硬ちゃん?もしかして、あれからさらに勝ったの!?」


硬「え?あぁいや、ええといろいろあって。結局残ったのは500万だけでした…」


亮「ハハハ、まぁ手元に残っただけ上等じゃないか。」


翠「…」


楽しそうに笑いながら眼鏡のレンズを拭いている亮とは対照的に翠の目は冷たかった。


翠「…ねぇ、硬ちゃん。」


硬「はい?」


翠「何で500万円だけ残ったの?硬ちゃんってそんなタイプじゃ無くない?」


硬「え?ええとそれは――」


硬は翠がいなくなってから3000万が6000万になったこと、そして1億の大勝負に出たことを話した。ただし、1つだけ嘘をついた。保険で残したのは500万だけだと。


翠「うん。そこまでは分かった。でも手元に500万だけ残すかな?何となくだけど1000万残さない?そっちの方が5000万の倍で1億というキリのいい勝負になる。」


硬「え、ええと…チップ1枚残した方が、キリがいいかな~なんて。」


彼女のことは話さなかった。なんとなく話す気にならなかった。


亮「?翠は何に引っかかってるんだ?別におかしな話じゃないと思うが。」


翠「ふーん。俺の考えすぎかな。」


硬は額に嫌な汗をかいた。


翠「でも残念だったね、あと1回勝てば1億だったのにね。」


硬「確かにそうですね。でも、たらればを話したって仕方ありません。今は手元に残った500万の勝ちを噛み締めようと思います。」


翠「…へー、硬ちゃんも言うようになったね。」


亮「いいぞ、ギャンブラーらしくなってきたじゃないか。その調子だ!」


亮はカクテルを作りはじめ硬に振る舞った。


『ブブブ…』


携帯が震え硬はすぐに画面を開いた。


【猫芽:明日のお昼空いていますか?お礼がしたいです。】


硬は顔のニヤつきを抑えながら携帯の画面をなぞった。


翠はその様子をただ見つめていた。

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