第34話 Hundred Scale②
亮「これは…現状どうなってるんだ?」
硬「ええと…見たところ2対1で翠さんが負けていますね…」
玉木硬と御子柴亮の二人はBarカウンターを挟み、1つの画面を見つめていた。
亮「ということは、今翠はピンチってことか?」
硬「いえ、そうとも限りません。ルールを思い出してみてください。」
【~Hundred Scale~
・ 勝利条件 全5戦を行い、勝利数の多いプレイヤーの勝利。
(※同点の場合は玉をリセットして再試合)
基本ルール
分配フェイズ
・両プレイヤーは「100個の玉」を、手元の「5つの袋」に自由に分配する。
・一度袋に入れた玉は取り出せない。
勝負フェイズ
・お互いに袋を1つずつ選び、中央の天秤に置く。
・天秤が傾いた方(玉の数が多い方)が、そのターンの勝者となる。】
硬「玉の配分の仕方は無限大ですが、3勝するだけでいいのであれば「30、30,40、0、0」といった風に2敗前提の分配が多分最も有効。」
画面に表示された二人は次の袋を手に持っていた。
硬「さらに言えば、より均等に分けて「33、33、34、0、0」。そして、多分だけど天秤の動きを見るに柘榴はすでに数字を出し終えている。」
亮「つまり柘榴の残りは「0、0」翠が2勝して3対2で逆転勝利ということか。」
硬「いや、翠さんが1ターン目に出した手は0で、その後の天秤を見るに翠さんの残りは「33、0」。つまりこのゲームは同点になると思います。」
亮「な、なるほど、となるとリセットしてもう一度ということか…」
硬「はい。大切なのは次のゲームです。お互いの分配の癖からより裏を取りに行くことが大切になって来ると思います。」
画面には天秤に袋を置く翠が映っていた。
『ジャララ』
携帯端末から響く玉の音がBarに響いた。
*
『ジャララ』
鈴間翠はわざとらしく音を立てて天秤に袋を置いた。
万番柘榴も呼応するように空の袋を天秤に乗せた。
4ターン目 勝者:翠
柘榴 2勝
翠 2勝
柘榴「さ、仕切り直しだ。」
『ファサ』
柘榴は空の袋を天秤に乗せた。
翠の癖は分かった。奴は天秤に先に乗せたがる。
音を聞いてから俺が判断すれば負けは無い。
天秤は袋の重さでわずかに柘榴に傾いていた。
翠「ねぇ、柘榴君。おかしいと思わない?」
翠が自身の席から袋を取り出す。ペラペラで重さを感じさせないその袋を手にゆっくりと語りだす。
翠「わざわざ音を立てて天秤に袋を置く意味ってあるかな?」
柘榴「あ?」
翠「今君は次からは俺が置いてから判断すればいいなんて考えたよね。」
柘榴「な…」
柘榴の額に冷汗が流れる。
大丈夫だ。今回は同点。次からが――
翠「次は無いよ。」
翠が天秤に袋を置く。
『コツン』
その音は小さかったが、確かに重さを感じる音だった。
天秤はわずかに翠に傾く。
翠「柘榴君の袋の中は0。俺の袋の中は1。俺の勝ちだね。」
柘榴「な、ばかな、なぜ!」
翠「柘榴君はまじめちゃんだね。」
そう言って翠はこれまでの袋に手を付ける。
翠「柘榴君は初めの時点で予想していたはずだ。俺の手が「33、33、34、0、0」だって。でも君はまじめだったから、その確証を得ようとした。それは2ターン目が物語っている。」
翠は柘榴が2ターン目に出した袋を手に持った。
翠「わざとらしく音を立てて天秤に置いたのに、柘榴君はわざわざ33で勝負に出た。これは相手の分配を確認するために他ならない。だめだよ、柘榴君。俺たちはギャンブラーなんだから。もっと自分を信じないと。」
柘榴「じ、じゃあ、お前は俺の手を予想してたっていうのか?」
翠「ああ。まじめな柘榴君のことだ。大佐のゲームなんて俺が呟けば、きっとその手は「33、33、34、0、0」になると思ってね。だから俺は手を少しだけ変えたんだ。」
翠は4ターン目に使った袋を柘榴に投げつけた。
『ジャララ』
柘榴が音を立ててその袋を受け取り震える指で中の玉を数える。
柘榴「1、2…30、31、32。」
翠「もうわかったでしょ。俺の分配は「32、33、34、1、0」だ。」
柘榴「な、なぜ?だって、この手だと32と1は0以外に勝てない雑魚手で…」
翠「だから、わざとらしく音を立てて天秤に置き、柘榴君を安心させたんだよ。俺の手が柘榴君と同じ「33、33、34、0、0」であるとね。そうすれば柘榴君は2ターン目の時点で同点以外の選択肢がなくなるからね。後は柘榴君の0にぶつけるだけ。」
『ジャララ』
柘榴の手から玉が零れ落ちていた。
5ターン 勝者:翠
柘榴 2勝
翠 3勝
勝者 翠。
*
柘榴「そうか…負けたんだな…俺は…」
柘榴はゆっくりと天を仰いだ。
翠「ああ。そうだよ。」
柘榴はゆっくりと立ち上がり翠に右手を差し出した。
柘榴「ありがとう。俺と戦ってくれて。あんたに負けるのなら後悔はないよ。」
翠「…意外とあっさりしてるんだね。」
柘榴「それだけ、後悔が無いということだ。」
翠「ッフ、そっか。」
翠は柘榴の手を取った。
*
『カラーン』
硬「翠さん!おかえりなさい!見てましたよ!」
亮「無事、宝石《Gem》クラスに飛び級だな。」
二人の顔は嬉しそうだった。
翠「ありがとう。硬ちゃん、今度また本部に行こうか。俺の昇格と硬ちゃんの練習のために。」
ハッキリと目標が見えてきた。あともう少しだ。
原典《Lapidary》クラスまでもう少し…
今更ですけど、ギャンブラーの名前は基本的に宝石から取っています。
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